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今年1月19日、田中と道重の2人はそれぞれSNSとブログでデビュー20周年を迎えたことを報告した。加入記念日の1月19日には、2人は毎年このブログでの報告を欠かさない。2人は共にオーディションに合格した亀井絵里、既にソロアイドルだった藤本美貴と共にモーニング娘。に加わった。
選考時点から伸びやかで澄んだボーカルを持ち、歌唱力が抜きんでていた田中は早くからソロパートを多くもらうなど、グループのパフォーマンスの中核を担っていく。
一方、加入初期の道重はまだキャラ付けが定まっておらず、実力面でも目立つ場面は少なかった。歌はのちに自身で「歌に音程があることを知らなった」と自虐ネタにするほどで、加入後の初シングル『シャボン玉』で初めてもらったソロパートはワンフレーズのセリフ部分だった。
そんな6期も、黄金期メンバーの卒業によってポジションが上がっていき、00年代後半の『プラチナ期』と称される時期になると、田中は亀井や高橋愛らとともにエース級の活躍、そして歌・ダンスで磨きをかけていく。道重も2007年からラジオ『ヤングタウン土曜日』(MBS)のレギュラーになり、パーソナリティー明石家さんまの相方として、丁々発止のトーク力も鍛えられていった。
また当時、田中を含めて多くのメンバーが髪を染めていた中で卒業まで黒髪も貫いていた彼女は、バラエティでは毒舌キャラも買って出て、“可愛いぶりっ子”路線を開拓。全力のアイドルぶりに共感するファンが増えていき、12年5月のリーダー就任後は、彼女のアイドル像をカリスマ的に支持するファンや別グループのアイドルも少なくなかった。
同期の亀井や高橋愛、新垣里沙、光井愛佳といったプラチナ期を共にしたメンバーを見送ると、2012年には田中と道重がグループ最年長。しかも2人の他は全員が10代という若いメンバーを引っ張ることになる。
クールとキュート、メンバーカラーはライトブルーとピンク、動物に例えると猫とウサギ――正反対のアイドル性を持つ2人が先頭に立った時期のモーニング娘。は、ファンから「カラフル期」と呼ばれる新しい時代を作った。田中には天然キャラかつ表現力にたけた佐藤優樹、道重には当時まだ研修生だった牧野真莉愛と親しい後輩もでき、とりわけ佐藤は田中にとって、モーニング娘。メンバーでいる緊張感を和らげてくれる存在でもあった。
「モーニング娘。の環境って 自分の中では特殊な環境で、
弱みを見せたら終わる覚悟とゆーか 笑
誰にも甘えられんし、甘えたくないし
誰が味方か分からんし。みたいな感じで
本来のれーなは、その佐藤に見せたのが田中れいなっちゃけど
今まで そうやって気持ちを緩ませる?とゆーか
素になれるタイミングがなかったなぁって」
と、田中は21年12月18日のブログで、佐藤の卒業に寄せて当時のことを振り返っている。
田中は2013年5月21日に、在籍10年4か月でモーニング娘。
ステージ上ではプロのアーティストぶりが健在ながら、SNSではペットの愛猫『シルバ』と『ジャック』を溺愛する様子を頻繁にアップしたりするなど、飾らず気さくに日頃のルーティンを発信している。TikTokも開設してトレンドにも敏感と、マインドは10代・20代の若者に負けてはいない。
何より今でもティーンが着ても似合うファッションを愛用し、ギャル風の服装も格好よく着こなす様子を披露する度に、その若々しさが話題になる“奇跡の30代”でもある。
2014年11月26日に当時のモーニング娘。最長在籍記録を残してグループを卒業した道重は、約2年の休養期間を経て芸能活動を再開すると、音楽ライブとも演劇とも違う独自の舞台公演を始めた。『SAYUMINGLANDOLL』 (サユミンランドール)というこのシリーズは、東京・有楽町のCOTTON CLUBをメイン会場に毎年テーマを変えて開催、道重とダンサーだけという少人数でのステージで演じられてきた。
公演ごとにストーリーがあり、楽曲もそれにあわせた書き下ろしで歌と踊りだけで進む。ただしステージはシンプルで、道重によるこじんまりとしたステージショーという雰囲気で続けてきて、通算公演も200回を超えるまでに。パフォーマンススキルよりも道重自身の少女性を活かした舞台づくりで、客席との距離が近いCOTTON CLUBで、長年彼女を応援し続けてきたファンと道重の「同窓会」のように続いている。
他にもファッション誌でのモデル活動も続けていて、同世代の女性に向けてフェミニンなコーデを発信。年を重ねても可愛くありたいという乙女心を体現してきたのがモーニング娘。卒業後の道重でもあるようだ。
個別に活動を続けながら、21年には『ポップコーン グラノラ』(日本ケロッグ)のCMで高橋愛と田中・道重の3人で共演して『LOVEマシーン』の替え歌を披露。こうして時にはモーニング娘。のOGとして一緒になってくれるのもファンにはありがたく、「エモい」ことだろう。
アイドルを卒業しても歌や演技でパフォーマンスを続け、オフも含めて期待されるイメージを完璧に演じてみせる。1989年生まれで同い年の田中と道重の歩みを比較してみると、ルックスや性格は正反対でもこの生き方は共通していて、しかもデビューから20年にわたってノースキャンダルを貫いてきた。
モーニング娘。を卒業するタイミングで、田中は『Rockの定義』、道重は『シャバダバ ドゥ~』というソロ曲をそれぞれもらっている。いずれもオーディションから2人を見てきたつんく♂が作詞・作曲しただけに両人のアイドル性を的確に音楽にしてくれたが、2人とも2023年の今でも曲のイメージ通りでいてくれることも奇跡的だ。これからも世間に流されずに、ロックでキュートな生き方を貫いていってほしい。
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