──さてさて、始まりましたよ。大好評連載服飾ペレストロイカの第2回目! どうですか、上坂さん。良い波乗ってますか?
上坂 今日の朝、すごい嵐みたいな大雨が降ったじゃないですか。あれって今日の私の心象風景を現していたのかなって……。
──またまた、そんなこと言って、スポーティーなトラックスーツがお似合いですよ。まずは着てみての感想を伺えますか?
上坂 えっと、まず大前提としてこれはジャージじゃなくてトラックスーツなんですよね。
──そうです。トラックスーツといえばブルース・リーの黄色いつなぎを思い出す方も多いかもしれませんが……。
上坂 ああ、そう聞くとパッと絵が浮かびます。この上下トラックスーツ姿の私、アジアから観光に来た富裕層の登山客みたいだなって。
──今日もエッジの効いた感想、ありがとうございます! サグいポージングも決まってましたよ。
上坂 サグ……? サグチキンカレー? よくわからないのですが、想像の中のラッパーの人をイメージして、あまり表情が出ない方がいいのかなと思ったので無表情を心がけつつ、運動神経がないので良い塩梅にしゃがんだり、手を広げたり閉じたりするのが難しくて。とりあえず両手を広げたら、某有名和食チェーンの社長ポーズっぽいって言われるしで、なかなか困ってしまいました。
──たしかに一瞬、スタジオに社長が降臨した瞬間ありましたよね(笑)。

──でもカメラマンさんに海外ラッパーのMVを見せてもらいつつ果敢に挑む上坂さん、素敵でしたよ。
上坂 海外のラッパーの方々は指にたくさんの指輪をつけて、首にもジャラジャラとネックレスをして、歯にもキンキラキンの入れ歯のようなものを装着していらっしゃるのに、無表情ですよね。でも手はめちゃめちゃ動いていて。ラッパーの方の、あの動きってなんなんですかね? パッション?
──おそらくパッションです。何かを伝えたいという気持ちが、出ちゃってるのかな、と。上坂さんも歌っているとき、よく手が動いてますけど、あれもパッションですか?
上坂 あれは、頑張りです。
──あくまで想像でしかないですけど、もしかしたらラッパーの方々も頑張りを表現しているかもしれないですよね。
上坂 たしかに『フリースタイルダンジョン』を観ていると、みなさん地元を背負っていたり、家族の大切さとか、メイクマネーしたいとか、ものすごい主張をしていらっしゃるじゃないですか。よく考えたら、どれもすごく頑張らないと手に入らないものばかりですもんね。韻を踏むにもたくさんの言葉を知ってないといけないでしょうし。タトゥーを入れるのだって生涯をかけた覚悟が必要でしょうし。
──上坂さんの身近なところで言うと、ロリータファッションも頑張りの上に成り立っているスタイルですよね。
上坂 確かに、ロリータはマインド的な頑張りが必要なファッションではありますね。ロリータを着て山手線に乗るのは恥である、ならばハイヤーを捕まえなさい、みたいな意識ですし。体力的にも夏でもコルセットを締めて、パニエを3枚履いたり、見えないところは汗だくでも顔にだけは汗かかないのがロリータの心得的な部分がありますからね。
──意外なところでラッパーとロリータの共通点が? ちなみに絶対に無いと思いますが、タトゥーを入れたいと思ったことは?
上坂 ありませんねえ。気兼ねなく温泉に行きたい派なので……。

──上坂さんが愛するロシアの方はタトゥー入れている人も多そうなイメージがあります。
上坂 ロシアに限らず、大陸の方って気軽に入れるイメージがありますね。それにロシアって温泉があまり無いんですよ。あるにはあるんですけど、ロシアの温泉って医療施設みたいなもので、ラジウム温泉のハイパー濃度がすごいバージョンみたいなお湯を棺のような容器に入れて、その中に入るんです。それで血流を良くしましょう、的な。だから日本でいう酸素カプセルみたいなもので、1人ずつ個室に入る感じなんですよ。
──思いかけずロシアの温泉事情を伺えて得した気分です! ロシアのヒップホップ事情も気になりますね。
上坂 ロシアは詩が発達していますからね。プーシキンという詩人はロシアで一番有名なんですけど、ロシア人はプーシキンの詩を暗唱できると聞いてます。
──ほえ~! どうですか、上坂さんも次のアルバムでラップに挑戦してみるというのは。
上坂 いえいえ、私、何のレペゼンもしていないですし、ラッパーさんのガワだけ真似たところで“友蔵 心の俳句”みたいになってしまいますし。
──上坂さんにもレペゼン・キングレコード(所属レコード会社)とか、レペゼン・スペースクラフト(所属事務所)とか、いっぱいあるじゃないですか。
上坂 わ、私は何もレペゼンしたくありません。勝手に背負わされても大変困惑してしまいますし、1人でひっそりと生きていきたいです……。
──あっ……すみません。ついついヒップホップの話題になってしまいましたが、気を取り直してファッションの話に戻りましょう。2ポーズ目はちょっとガーリーなトラックスーツの着こなしでしたね。
上坂 この世界では、これがガーリーなんですね……。勉強になります。私のこれまで歩んできたガーリーファッションの中には出てこないパターンだったので、頑張りました。「釣り人その2」といったイメージでしたが大丈夫でしょうか?
──大変お似合いです。今回はトラックスーツに挑戦してみたことから自然とヒップホップの話題になりましたが、いかがでしたか?
上坂 えーと、ヒップホップは頑張りなのかなと解釈したので、私なりに頑張らせていただきました。
──ありがとうございます! いつか上坂さんにマイメンだと思ってもらえるようOVERTURE編集部も頑張ります!
上坂 マイメン……? 要はマイミクみたいな感じですかね。了解です!
▽上坂すみれ
公式サイト(http://king-cr.jp/artist/uesakasumire/)
公式Twitter(@uesaka_official)

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上坂すみれの連載が掲載