乃木坂46・遠藤さくら主演のドラマ『トラックガール』(FODで配信中)が話題だ。ドラマのモデルになったのは、飲みっぷりのよさからSNSで大人気の女性トラック運転手“トラックめいめい”。
そもそもなぜ彼女はトラックドライバーを志し、SNSで発信するようになったのか? 訴えたかったメッセージとは? “運送業界のマドンナ”に洗いざらい語ってもらった。

【写真】トラックを運転する“トラックめいめい”ほか撮り下ろしカットも【8点】

「別に最初からトラックドライバーを目指していたわけではないんですよ。なりたかったのはファッションデザイナー。小学校の頃から、ものを作るのが好きでしたから。高校は定時制だったんですけど、それもファッションデザイナーになる前提で入りました。金髪もOKだしネイルも自由だったので、ファッション業界に近づけるかなと考えたんです。でも……高校3年生で本格的に進路を考えるとき、その夢は破れましたね。競争率の高さとか給料の安さとか理由はいろいろあるんですけど、結局は適性の問題かな。たしかに私は洋服を着るのが好きだったけど、実際に洋服を作って商品化するのが向いているかといえば、そこは自信がなかったので」

 では、改めて自分の進路はどうするのか? 頭に浮かんだのは「もし1個だけわがままを言えるなら、他人と関わらないで済む仕事がいい」という考えだった。トラックめいめいは、人間関係を築くのが苦手だったのである。

「小学生のときは自分に自信が持てなくて、とにかく話すことが苦手でしたね。その反動で中学に入るとキャラ変して、クラスで一番うるさい生徒になったんです。
だけど同時に成績も急下降したうえ、悪目立ちしていじめの標的になってしまった。それまで『どうにかして気の合う友達を作らなくちゃいけない』という強迫観念みたいなものがあったんですけど、高校くらいからは『自分の世界で完結していても、それで幸せならいいじゃん』って考え方が変わったんですよ。お昼ごはんも公園に行って1人で食べていたし、むしろそっちのほうが気楽でよかった」

 1人でできる職業は具体的にどんなものがあるのか、トラックめいめいはネットで調べてみた。検索に引っかかったのはウェブデザイナー、社長、アフィリエイトで稼ぐ方法など……。たしかに自分次第でどうにでもなるビジネスではあるが、社会経験のない18歳の少女には現実的に思えなかった。

「でも、その候補の中にトラック運転手というのがあって、それなら自分でもできるかもしれないと思ったんです。それで実際に面接に行ってみたら、雰囲気がすごくよくて。向こうからは『ぜひ来てください』って言われたし、学校の先生も『向いていると思うよ』後押ししてくれましてね。私の通っていた定時制は普通4年で卒業するんですけど、そこから必死で勉強して、なんとか3年で卒業。そのまま就職しました」

 トラックめいめいは北海道出身である。だが若いうちから東京に出て、広い世界を見てみたいという希望を持っていた。入社した運送会社は、札幌にも支社を持つ東京の企業。
トラックめいめいも面接こそ札幌で受けたものの、東京の社宅に住みながら仕事の基本を覚えていく。

「ドライバーは100人くらいいたけど、女は私1人だけだったんですよ。というか、会社にとっても初めての女性ドライバーが私でした。業界全体でも女性ドライバーの比率は3%くらいと言われているから、まだまだ男社会なんです。でもそれで苦労したということはあまりなくて、むしろ先輩たちからお菓子をもらえたり、ちょっとしたアイドル扱いでした(笑)。ボロ雑巾みたいになることも覚悟していたので、そこはうれしい誤算だったかもしれない。

 そこからずっと運送業でやっているわけだから、結局、自分に向いていたんでしょうね。もともと握力とかは他の女の子よりも強かったですし。あとは与えられたミッションを最短で終わらせるときの達成感が気持ちよくて、汗をかいたあとの食事も最高に美味しい。朝が早いことも含め、人間本来の姿だなという気がしたんです」

 トラックめいめいの業務は長距離ドライバーというより、近場で数多くの荷物を届ける内容だった。佐川急便やヤマト運輸など、宅配業者のイメージに近いのかもしれない。秋葉原を中心として、1日60件ばかりの業務を粛々とこなしていくうちに、汗が滝のように流れてくる。
顧客のマンションにエレベーターがついていないことも日常茶飯事。荷物には重いものも多く、ときには工場現場宛ての一斗缶やドラム缶なども含まれている。トラックめいめいの上腕二頭筋は、みるみる太くなっていった。

「入社するまでは普通免許も持っていなかったから、最初の段階で準中型免許を取ったんですよ。2トン車を運転できるやつですね。18歳で取れるのは準中型までなので(※当時)。会社の紹介によって山形で4ヶ月くらい研修して、そこで運転の基本からトラックの点検方法まで全部学びました。山形ではついでにフォークリフトの資格もゲットしましたね」

 その後も20歳になると、4トン車を運転できる中型免許と牽引免許を取得。21歳で大型免許を取得した。現在、大型免許は19歳から取得できるが、その当時は21歳からだった。ちなみに大型免許を取ると、バス、トラック、ダンプカー、タンクローリーなどが運転できるようになる。

「最初に入った会社は育成に力を入れていたから、そこは今でも感謝しています。
ただコロナに入ると、急激に仕事がなくなってしまったんですよ。それまで1日60件こなしていた配達が、10件とか20件に減りましたから。コロナのときは多くの人が出勤を控えていたので、その影響がモロに直撃したんですよね。それに伴って歩合制だった給料も10万円とかに減っちゃって、もうこれじゃ生活できないということになっていきまして……。免許を持っていたから転職も有利に働くかなと思ったし、もうこの時点で運送業以外の仕事は考えていませんでした」

 SNSを始めた当初は、現在のようなコンセプトは固まっていなかった。「土曜日って渋滞が多いですね」など、思いついたことをアップするだけの毎日。しかし、その中でビールを飲んでいる写真に多くの「いいね」がついたことで手応えを感じるようになる。

「とにかく面白く見てもらえるアカウントにしたかったんですよ。『疲れた』とか『もう嫌だ』とかネガティブなことはツイートしたくなかったですし。前から変なTシャツはたくさん持っていたので、それを着て1人でお酒を飲んだり、スーパーのセール品を食べたりしていたら、反響がどんどん大きくなっていきまして。学生時代、他人が自分に興味を持ってもらえるなんて想像すらつかなかったんです。ずっと感情も凍っていました。
だからSNSでバズったときは、その場で泣き崩れるくらいうれしかったですね」

 間違いなく、彼女の出現によって運送業界のイメージは向上した。ドラマを機に、ドライバーを目指す女性は今後も増えるかもしれない。「トラック運転手なら女性同士の煩わしい人間関係もないし、仕事でいろんなところに行ける楽しさもある」と目を輝かせるトラックめいめい。時代を切り拓くアクティブな姿勢から目が離せそうにない。

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