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同作は、『半沢直樹』や『下町ロケット』などの大ヒットドラマを手掛けてきた福澤克雄氏によるオリジナルストーリー。伏線が徐々に回収されていく仕掛けが大きな反響を呼び、ネット上で繰り広げられていたファンによる考察も盛り上がるきっかけの一つとなっていた。しかし魅力はそれだけでなく、劇中でたびたび披露されていた“胸キュンシーン”も大きなポイントだったのではないだろうか。
いい例なのが、阿部寛が演じる公安の刑事・野崎守による“壁ドン”。第2話では野崎が主人公の乃木憂助(堺雅人)に勢い良く迫り、壁に手をついて「この中にお前をはめて罪をなすりつけた奴がいる」と言いながら熱い視線を送っていた。
もっとも野崎は乃木を一旦黙らせるつもりで壁ドンをしたのだろうが、彼が見せた行動は乃木の別人格・F(エフ)から「お前に気があるんじゃないか」とあらぬ疑いをかけられたほどだ。
その後も乃木へ意味深な視線を送り続けていたものの、野崎の真意は殉職した後輩に似ていたから……という理由だった。いずれにせよ野崎のワイルドな壁ドンは、乃木の反応も含めてドキッとさせられたに違いない。
ちなみに野崎は壁ドンに留まらず、作中でバックハグも披露している。もちろんお相手は乃木だ。第5話の会食シーンで携帯を取り上げるために乃木を拘束したのだが、後ろから腕をまわした構図がまるでバックハグさながらだった。
そういった意味でいうと、『VIVANT』はバックハグの宝庫だったように感じる。
もちろん作中には、本物のバックハグも存在する。第7話では恋人の柚木薫(二階堂ふみ)が乃木と口づけを交わしたのち、後ろからそっと抱きしめるというキュン死必至のコンボを披露していた。『VIVANT』は恋愛要素が少ないだけに、この時ばかりは視聴者の誰もが胸をときめかせたことだろう。
同作の胸キュンポイントは、それだけではない。第9話の終盤で乃木が拘束された際、「テント」の一員であるピヨ(吉原光夫)が行った“顎クイ”のような行為も、視聴者を興奮させたシーンの一つだ。ちなみにその後は、別の意味でドキドキさせられる展開になったが……。
さらに「別班」コンビによる絡みも忘れてはならない。最終話で乃木が組織を裏切っていなかったことが判明した場面では、仲間の黒須駿(松坂桃李)が彼を壁のほうへ押し込み、そのまま胸にそっと頭を押し当てて安堵感を示していた。
そして和解のハグをしたのちに、黒須が正面から“肩ズン”してみせたのだ。これにより2人の間に構築されている信頼関係が改めて示され、女性ファンのハートを撃ち抜く決定打となったのは言うまでもない。
壁ドン、バックハグ、顎クイ、肩ズン……。
『VIVANT』が女性視聴者をターゲットとして、こうした要素を盛り込んでいたのかは定かではない。ただ、2016年に放送されて一世を風靡した『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)をきっかけに、男性同士のちょっとした絡みがドラマ作品で頻繁に見られるようになった印象だ。
それは必ずしもボーイズラブではなく、登場人物たちの関係性を際立たせるための画期的な手法として使われている。そして女性視聴者のみならず、男性視聴者をも虜にしてきた。『VIVANT』の大ヒットは、そんな時代の最先端をいく演出の功績だったのではないだろうか。
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