『ウイニング競馬』(テレビ東京系)をはじめ、数々の競馬メディアで名前を見ない日はないほどの芸能界屈指の競馬好きとして知られる芸人・キャプテン渡辺。昨年、11年ぶりとなる単独公演『漫談スタイル』が大盛況を呼んだ彼が、今年も単独公演『漫談スタイル2』を12月4日(会場:野方区民ホール)に開催する。
今回もマイク一本、身一つで最大限の笑いを追い求めるキャプテン渡辺に、開催前の心境について、そして自身の笑いの源であるギャンブル、そして「大きな軸」と語る競馬について深く聞いた(前後編の前編)。

【写真】競馬芸人・キャプテン渡辺

昨年冬に開催された、単独公演『漫談スタイル』は約1時間半にわたり、ひたすら一人でしゃべくり倒すというストロングスタイル。まさに芸人・キャプテン渡辺、ここにあり!を見せつける一夜となった。

ネタ番組が減少傾向の中、近年は『ウイニング競馬』への出演を軸に、競馬の仕事が途切れない日々。ゆえに芸人としての彼の姿を見る機会も減った。昨年の単独では、「初めてキャプテン渡辺の芸を見た」という声も散見された。そうした反応に、意外にも冷静な視点で答える。

「完全に競馬が軸ですからね、そう思われても仕方ない。今の収入の軸は、『ウイニング競馬』を始め、僕のYouTube、競馬場でのイベントなど、本当に競馬関連の仕事なんです。それは非常にありがたいし嬉しいこと。けど、時折『この状況は何なんだ?』という気持ちになってくるんです。 “芸人”を名乗っておきながら、競馬の予想しかしていない。
もう、『俺は芸人をやっている!』と堂々と言えなくなってしまったんです。

競馬が軸なのは揺るぎないことですが、永遠に競馬の仕事に胡坐をかき続けられるわけでもない。僕のような立場の人間に自分の守るべき持ち場はありませんが、競馬に負けないよう、芸人としての軸を単独ライブを開催することで打ち立てられればという願いがあるんです。……まあ、単独を開いたところで芸人と名乗れるぐらいなら、苦労しないんですけどね(笑)」

そうした想いもあっての2年連続の単独。今年も昨年から引き継いだタイトルにあるように、ひたすら喋り倒す内容になりそうだ。

「今年は昨年以上に怖いですね。昨年はこれまでのストックを開放した形でした。もう同じようなことはできないから全く違うネタも用意しなければいけない。けど一人で喋り続けるには限界もあって。これまでやってきた、“クズ漫談”のエッセンスは入れつつ、今回は今まで以上にない面を少しでもいいから出せたらいいなと思っています」

今もなお、キャプテン渡辺の笑いと仕事の根幹となっている「ギャンブル」。彼が、ギャンブルをネタにした笑いを追い求めようとしたのは、おおよそ13年前にさかのぼる。

「僕が前に所属していたトリオが解散直前のころ、競輪小僧っていう芸人がいたんです。
彼は当時吉本所属で芸人としては全く売れていなかったものの、フリーなら食っていけるレベルの競輪の仕事をもらっていたんです。

そうしたらある日、当時の相方の松本りんす(現:だーりんず)が、『お前、海物語のサムの恰好でネタやってみれば?』と言ってきたんです。パチンコ打つ人間で、『海物語』を知らない人間は誰一人いない。サムのネタをやれば、パチンコの営業が来るんじゃないか?って。そうこうしていたら組んでいたトリオが解散しピンになったので、サムの格好で“ギャンブルクズあるある”をやるようになって。そこからすべてが始まりました。僕がネタにしてきたパチンコ話は、僕が見てきたものと実体験そのもの。一切脚色していません」

当時の自身のパチンコ事情について話が及ぶと、思わず目を細めた。

「昔は朝5時から並んで整理券をもらって、開店から閉店までいる生活が当たり前でした。設定の札が台に刺さっていたりモーニングがあったりと、楽しくなるようなことがたくさんあったんですよね。しかも当たれば、コインにせよ玉にせよ、お金の代わりが出てきて、それが目の前にドン!と積まれていく。若いときに、ああした経験すれば、それは沼にハマっていきますよ。
もう毎日、パチスロのことしか考えられない状況。完全に狂っていましたね」

特に全盛期に打っていた4号機への想い入れは相当に深い。

「4号機は何せスピード感が素晴らしかった。『北斗の拳』は死ぬほど打ちましたし、『吉宗』は短時間で儲けさせてもらった。どれもゲーム性が素晴らしく、KYORAKUさんのキュインキュインキュイン!という音は常に脳内を駆け巡っていて……もう毎日台に座るだけで、脳がしびれる日々でしたね。何よりこの頃は、並ぶという行為そのものが楽しかった、友だちと並んで、雑誌見て台の挙動を調べながら設定6を引く自分を夢見たりしてね。あの瞬間に集約されますね、僕にとってのパチンコ・パチスロは」

ある種、渡辺青年の青春であり、今のキャリアの礎を作り出したパチンコだが、今では「面白みを感じなくなった」と、完全に足が遠のいた。

「この前、久々にスマスロで復活した『北斗の拳』は懐かしくて、1回だけ打ちましたが、それ以降は全然。面白さもうま味もありませんからねえ……。とはいえ、仮に今も4号機が稼働していたら、今も打ち続け、仕事もせず借金しながら朝から晩までパチスロ漬けの完全な廃人だったはず。4号機がなくなって本当に良かった(笑)」

【後編はこちら】キャプテン渡辺の競馬人生、あの日あの馬券を買っていれば「借金全額返済どころか、人生も大きく変わっていた」
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