元自衛官コスプレイヤー・かざり、金髪の美大生が自衛隊を目指した理由「愛があればいける！」

陸上自衛官だった経験を生かし、元自衛官タレントとして自衛隊の広報活動を行っているかざりさん。2023年には「防衛省広報アドバイザー」に就任しており、自身のYouTubeチャンネル「かざりぷろじぇくと」では、戦車や戦闘機、航空機などに乗る姿を配信している。日本大学芸術学部にてデザインについて学んでいたかざりさんが、なぜ陸上自衛官を目指すことになったのか。入隊を決めた理由から入隊後の苦悩、現在の広報活動に至るまでの軌跡を語ってもらった。（前後編の後編）【写真】武器✕女子高生、コスプレ姿のかざりさん、ほか撮り下ろしカット【10点】――まず、自衛官を目指したきっかけを教えてください。かざりさん 学生時代、『ガールズ＆パンツァー』というアニメにハマり「実際に戦車を見てみたい！」と思い、陸上自衛隊の駐屯地に行ったことがきっかけでした。自衛官になりたいと思ったのは大学2、3年の時だったんですけど、就職活動は大学3年生くらいから始まりますよね。美大ということもあって、髪を虹色に染めている人、変わった格好している人がすごく多かったです。でも、いざ就活となった途端、みんな黒髪になってスーツを着ていて「何でみんな個性的だったのにスーツになっちゃうの？」と思いました。そういう自分も1、2年生の頃は金髪でロリータファッションだったのですが、自衛隊の試験の際は黒髪スーツで行きました（笑）。――富士の樹海を歩くような厳しい訓練もあると聞きます。そういった面で悩まれたりしなかったんですか？かざりさん 教育隊では最初苦労しましたが、オタクだったので「愛があればいけるやろ！」と思っていました（笑）。今思えば本当に謎の自信ですね（笑）。行軍（行進訓練）は女性ももちろんやります。背のうを背負って25キロ歩きました。かなり疲れたことを覚えています……。好きだった訓練はないですが、強いて言うならモールス信号を覚えるのは好きでした。――過酷ですね…。その他の訓練内容についても教えていただけますか。かざりさん 陸上自衛隊には前期教育と後期教育があって、前期教育では敬礼や銃の取り扱い、匍匐前進（ほふくぜんしん）など自衛官になるための基礎的な訓練を3カ月間受けます。その後の後期教育では、所属する職種の勉強をします。私は通信科の隊員だったので、通信の勉強をしました。朝は6時起床で、6時に起床ラッパで飛び起きます（笑）。私がいた女性自衛官教育隊では起きてすぐ点呼。起きたらすぐに靴を履いて舎前（隊舎の前にあるグラウンド）に集合して点呼していました。その後は朝食、身辺整理、掃除、課業の準備といった形です。陸上自衛隊では、約6か月間教育を受けた後、隊員として部隊に着隊するという流れですね。――日芸時代と真逆の生活ですね。抵抗なく過ごせましたか？かざりさん 最初はギャップがありました。当時は18歳から満26歳（現在は満32歳）まで入隊ができたので、年齢はバラバラでしたし、中には結婚している人もいました。やっぱり18歳の人とは運動能力に差があって、インターハイに出ていた人とも同期になるので、運動面では負けてるなとずっと思っていましたね。ただ、自衛隊は伸びてる人だけを伸ばしていくのではなくて、全員に教育が行き渡るようにしているので、運動が苦手な人は教官や運動が得意な同期が助けてくれる。それに対して、私は座学が得意だったので、運動はできるけど座学が苦手という人に教えていました。同期同士「助け合って教育を乗り越えなさい」と教官に指導されましたね。――現在はさまざまな場で自衛隊の広報活動をされています。YouTubeでは戦車や戦闘機、航空機などに乗られていますが、どのように許可を取っているのでしょう？かざりさん 2023年に防衛省の広報アドバイザーに就任したんですけど、その力が大きいと思います。ただ、昔から自衛隊の広報活動がしたい想いをSNSで発信していました。芸能活動を始めてから1年くらいはコスプレやモデルの仕事をしていたんですけど、コミケでやった武装JKのコスプレがバズって、その投稿を見た自衛官の方から「一緒に広報をやりましょう」とお声がけいただいて、地道に広報活動のお手伝いをしたことで、少しずつ活動の幅が広がっていきました。こうしてYouTubeで自衛隊のことを発信できるようになるまでには3、4年以上かかりましたね。――地道な活動があってこその今なんですね。F-15に乗っているYouTube動画は400万再生を越えています。かざりさん うれしいです。でも、私がすごいのではなくて、すごいのは自衛隊です。自衛隊の動画を作る時は「私が私が！」とならないように心がけていて、あくまで自衛隊の広報として動画を作っています。でも、現場で頑張っている自衛官の方たちに焦点が当たることってあまりないですよね。ブルーインパルスがテレビで取り上げられることは多いですが、例えば戦闘機を1機飛ばすだけでも整備や管制をする人、戦闘機自体を修理する人たちなどたくさんの人が動いています。YouTubeでは、そういった部分まで発信できればなと思っています。――広報の鏡のような発言ですね。ちなみに、F-15以外に好きな戦闘機、戦車などはありますか？かざりさん F-2という戦闘機や、F-4戦闘機が好きですね！戦闘機はもちろん好きなのですが、個人的に1番好きなのはC-2という輸送機です。大きくて雄大に飛んでいる姿やエンジン音、見た目が丸くてクジラみたいなところなど好きなところがたくさんあります。戦車では、74式戦車と10式戦車が好きです。74式戦車はもう退役してしまったんですけど、今の戦車と違って油圧式でギュラギュラした昔ながらなところが気に入っています。10式はスラローム射撃と言って、蛇行しながら照準して撃つことができるんですよ。それがめちゃめちゃ好きで！昔は富士総合火力演習で、戦車が射撃している姿を目の前で見ることができました。戦車が実際に射撃する姿に感動した記憶があります。初めて生で見た時は、想像の100倍の音の大きさと、衝撃波に痺れました。――好きな武器もあれば教えてください。かざりさん 人生で初めて持った89式小銃という武器が好きです。自衛隊で最初に銃を渡される際、「銃を大切に扱いなさい」と言われます。その時に「この武器はすごく大切な物で、国からお借りしてる物だから、大事に扱わないといけない。おもちゃじゃないんだ」と思ったんですよね。その衝撃もあって好きなんだと思います。――自衛隊を目指したきっかけはアニメということでしたが、自衛隊に関する作品では何が1番好きですか？かざりさん 『シン・ゴジラ』です。自衛隊協力のもと、本物の自衛隊車両を使って撮影しているのですごくリアルなんですよね。私が自衛官だった頃に、たまたま勤務していた駐屯地にロケに来たことがありました。「映画の撮影がある！」と聞き、楽しみだったのを思い出します。ただ、私がいた駐屯地で撮っていたシーンは、一瞬しか出てきていなかったような気がしますね（笑）。いつか、自衛官役として映画に出演したいと思っています！▽かざりさん公式Xhttps://twitter.com/kazariri▽かざりさん公式Instagramhttps://www.instagram.com/kazariri▽かざりさん公式YouTubehttps://www.youtube.com/@kazariproject/featured【前編】元自衛官コスプレイヤー・かざり、自衛官でもコミケ参加は自由「趣味の世界ですので（笑）」