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市郎(阿部サダヲ)と渚(仲里依紗)の2人が何やらいい感じになり、その流れでキスしようとすると、強力な静電気のようなビリビリが発生。
どうやらこの世界は、タイムパラドックスの原因となりそうなものは、見えざる力によって阻害されるシステムであるらしい。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように、過去への介入によって“未来は変えられる”系ドラマなのではなく、“決められた未来は変えられない”系ドラマなのだ。この設定は、終盤にかけて大きな意味を持ってくるだろう。
第1話から謎だった、「喫茶店のトイレにあった空洞を使って、1986年と2024年を行き来できるのはなぜか?」という件についても、タイムマシン開発者の井上教授(三宅弘城)と一緒に議論するが、これについては分からずじまい。時空の裂け目が、ピンポイントでここに発生したのだろうか。ひょっとしたら今後は、喫茶&バー すきゃんだるのマスター(袴田吉彦)が大きな役割を担っていくのかも。
今回の第4話は、再びEBSテレビのカウンセラーとして勤務することになった市郎の元に、様々な悩みが寄せられる…というのが本筋。プロデューサーの関根(池田鉄洋)からは、新しいドラマのタイトル『俺たちのチアリーダー』が、「ホモソーシャル的で、女性を排除している」というクレームがついた相談を受ける。
『おれは男だ!』、『男女7人夏物語』、『科捜研の女』というタイトルを引き合いに出して、何がコンプラ的にセーフで何がアウトなのか、というやりとりがコミカルに描かれるのだが(そして結局ドラマのタイトルは、『あの日、眩しかった君へ』に変更される)、このようなシーンを見ていると、宮藤官九郎は昭和/令和のギャップを炙り出すことが主眼なのではなく、「今の時代に面白いテレビ番組を作るにはどうすればいいのか」という想いをこの作品にぶつけているような印象を受ける。
インティマシーコーディネーターのケイティ池田(トリンドル玲奈)が、露出が多いと文句を言うマネージャーと俳優とのあいだで板挟みになるシーンも象徴的。インティマシーコーディネーターの役割は、俳優の精神的・肉体的不安を理解して、その尊厳を守ること。
今回のミュージカル・シーンでは、SNSという新しいコミュニケーション・ツールにおいて、昭和的マナー(もしくはリアルなコミュニケーションにおいてのマナー)は通用しないことが歌われる。「SNSは本気で向き合う場所じゃない/いちいち真に受けたら疲れちゃう/それがソーシャルネットワーキングサービス」。確かにその通りだ。そしてこの歌は、エンタメ業界で働く人々に対して、「SNSを気にしすぎることなく、まずは本当に面白いものを考えることから始めてみませんか?」という問いかけのようにも聞こえる。
すでにこのドラマは、SNSで大きな話題を呼んでいる。絶賛もあれば批判もある。特に第3話で、「セクハラのガイドラインはどこ?」という疑問に対して、市郎が「相手を自分の子供だと思えばいい」と結論づけたことに対しては、様々な意見が寄せられた。もちろん、作り手はその声に対して真摯に耳を傾けるべきだろう。同時に、SNSを気にするばかりに行き過ぎた自主規制を敷いてしまうことに対しても、クドカンは警鐘を鳴らす。
2024年にタイムスリップして、すっかりスマホ依存症・SNS依存症となってしまった市郎が表象するものとは、SNSの書き込みに一喜一憂するエンタメ業界の人々そのもの。SNSで話題のこのドラマが問いかけるものは、むしろ脱・SNS依存症なのである。
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