現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。これまで主人公・スズ子を中心に、様々な家族の形が描かれてきた。
血のつながりはなくても、スズ子は周囲の人々に愛を持って接し、本当の家族のような関係を築いてきた。『ブギウギ』において“家族”とは、どんなものとして描かれてきたのか。制作統括・福岡利武チーフプロデューサーに話を聞いた。

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「スズ子は貰い子で生みの親ではない父と母に育てられています。血のつながりを超えても家族になれる、というところを意識していました」

スズ子は生後間もなく生みの親・キヌから離れ、ツヤと梅吉の元で育てられた。血のつながりこそなかったが、ツヤも梅吉もスズ子にたっぷりと愛情を注ぎ“家族”を作っていった。そのおかげかスズ子はこれまで、USKの仲間、小夜、山下マネージャー、羽鳥夫妻など、周囲の人たちと家族のような温かい関係を築いている。

「他人は他人と切り分けるのではなく、どんな人とも関係を深められる。そういう幸せの形を上手く描ければいいなと思っていました。ツヤさん、梅吉さんも近所の人と本当の家族のような付き合いをしていましたし、だからこそスズ子が人情深い子に育ったんだと思います」

スズ子の少しお節介なところや、どんな状況でも「聞いてくれる人のために」と歌い続ける姿は、義理と人情を持つツヤと梅吉の存在があったからだろう。大人になったスズ子の喋り方やしぐさから、ツヤに似た雰囲気を感じることもある。福岡チーフプロデューサーにスズ子の中の“ツヤっぽさ”について伺うと、趣里の女優魂を感じる話を聞かせてくれた。


「演出も台本も意識していたとは思うんですが、やっぱり一番は趣里さん自身だと思います。このセリフを明るく、ぱあっと言って笑う、みたいなところは自然に出てきたんじゃないかなと。深く計算したものではなく、明るく前向きなツヤさんがしっかり身体に入っていたからこそのお芝居だと思いました」

「水川さんと趣里さんは、実際は親子ほどの年齢は離れていないので難しいところもあったかもしれないですが、そこがお二人の素晴らしいところかなと思います」

また忘れてはならないのが、スズ子の生みの親・キヌの存在だろう。キヌは第5週「ほんまの家族や」から登場していないが、スズ子がキヌのことを忘れた日は一日たりともないはずだ。

「やっぱり複雑な思いはあると思います。スズ子自身も子どもを育てていく中で『この子を手放せないのは、自分が貰い子だったからかもしれません』と、ポロっと言ってしまっていますよね。自分でも沢山考えて、整理しようとして…何かを感じているんじゃないかなと思います。そこも踏まえて、いろんな世代の他人とも家族になっていっているというのがスズ子の魅力かなと思います」

「血のつながりがなくとも家族になれる」そんな力強いメッセージが込められた『ブギウギ』。自分の出生の秘密を知って涙した日を経て母親となったスズ子は、今キヌに対して何を思っているのか。いつかスズ子の胸の内が明かされる日が訪れるといいなと思う。

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