──原田さんのツイッターの投稿で最近印象的だったのが、「前に、自分の曲とか弾き語りよりも自撮りが伸びてしまって悩んでたときがあったけどなんか今は逆転しつつあってとてもうれしいな……」ってやつなんですよ。
原田 そうですね。今まではアイドルからシンガーソングライターになったことで、自分でも葛藤があって、「やっぱり自分の曲を広めてもらうためには、ビジュアルも力入れなきゃいけない」と思ってたところもあったんです。それで原型が分からないような自撮りを載せてみたり(笑)。ただ、そこから興味を持ってくださる方もいるんですけど、正直その方たちがライブに来てくれることってなかなか難しいなと。
──拡散は大事だけど、自撮りじゃなくてやっぱり曲で広がりがないと、ということですね。
原田 SNSでも、最近は歌詞を載せたときや、曲の作り方とかをつぶやいたとき、ちゃんとそこに反応がついてきてて、これは一歩ずつやってきたことの結果が徐々に出てるのかな、って思いますね。うれしいです。
──アイドルネッサンス解散後、アイドルではなくシンガーソングライターという道へ進むと決めた理由は何だったんですか?
原田 アイドルネッサンスの解散で、アイドルの持つ“はかなさ”って、ちゃんと終わりがあるからこそ感じられるのであって、アイドル本人たちが生きて輝いてる時間をアイドルに充ててるからこそ、これだけキラキラして素敵なんだってことを学んだんです。アイドルを続けたい気持ちもあったんですけど、「もう終わりたくないな」(もう1回アイドルになって、もう1回終わりたくない)って気持ちも湧いてたんです。
──アイドルの魅力をそこまで理解したんですね。
原田 そこで自分がアイドルネッサンス時代、SNSで弾き語りをあげると、けっこう反応をもらっていたことがうれしくて。知らない人に聞いてもらってるのは私の良い所でもあるんじゃない? って言ってくれる人もいて、そこでシンガーソングライターアイドルみたいな新しい道を作っていけるんじゃないかなと思ったんです。
──とはいえ自分で曲を作るのは簡単じゃないですよね。
原田 私も自分に曲が作れるのか? と思ったんです。他の方に頼んだりできるのかなとも考えたんですけど、最初に曲を作ってみて、その反応をもらってくうちに「これを誰かにやらせたくない!」って思うようになったんです(笑)。
──自分の作ったものが評価されるのがこんなに楽しいとは! と。
原田 SNSのいいねをもらえる感覚っていうか、他人のRTにいいねもらっても……って感じじゃないですか?
──あははは! 言いたいことはよく分かります。
原田 自分が生み出したものに反応もらえるってことに快感を覚えてしまって(笑)。いずれ誰かと一緒に作ったりもしてみたいんですけど、今は自分でやりたいです。
──とはいえ、最初は曲を作るのは大変だったでしょう。自分の頭の中をさらけ出さなきゃいけないわけで。
原田 めちゃくちゃ大変でした! 歌詞を書いてみても少女漫画みたいなのばかりできてしまって、自分でも「自分が作りたいのはこういう感じではない気がする」って思うんだけど、ほかに引き出しもないんです。それで「歌詞を書くのは自分しかいないし、裸になる感覚だから、勇気がいるけどありのままの自分を飾らないで書いてみて」ってスタッフさんに言われて、そこから『Fifteen』(デビュー曲)とか、自分の中身を出せるようになってきて。
──原田さんの歌詞って過去と現在と未来をバランスよく描いてて、それが今の原田さんをみずみずしく表現してると思うんです。それと前に所属していたアイドルネッサンスがいろんな時代の青春の曲をカバーしていたことが、「2019年の青春」を表現することに自覚的なことに繋がってるのかなと。
原田 そうですね。10代っていう年齢でこういう活動をしてるってことは、自分が自分の年齢に向きあわなきゃいけない。それが一番誰かに届くことだと思ってるんです。周りの10代の子以上に10代っていうものに価値を見出してるっていうか、「今」を描くことはめちゃめちゃ意識してます。
──自分が10代の真っ只中にいながら、そう自覚的に思える人はなかなかいないですよ。
原田 この前作った新曲も、ちょっと経つと「今の自分にはこんな曲書けないな……」って思ったりするんです。日々、小っちゃな変化がある歳で、自分自身でもびっくりするくらい変わっちゃうんです。『Fifteen』とかも今じゃ書けないし、何であんなに素直なんだろうなあ、汚れてないなあって(笑)。
──1年でそんなに感想が変わっちゃう(笑)。作詞して自分の中身に気づくことってありますか?
原田 私、男性アイドルより女性アイドルの方が好きになることが多いんです。だから、男の人を思う曲よりも女性の人を思う歌詞の方が書きやすいなっていうのがあって、男性脳なのかなって思います(笑)。歌詞で“ぼく”も多いし。
──ちなみにアイドル好きとしての推しは?
原田 乃木坂46の与田祐希ちゃんです。彼女に対してはオタクになっちゃいますね……。「守らなきゃ!」という気がしてます。
──そんなこんなで曲もできた原田さんのデビューは去年のTOKYO IDOL FESTIVALでした。それも注目のステージでいきなりトラックの音が止まる大ピンチに。冷や汗どころじゃないですよね。
原田 あの日は「絶対に(時間を)押せない」って聞いていたので、「やばい、誰かに怒られるんじゃないか」って思ってました(笑)。とにかく音が止まってる間、話で繋がなきゃ! って必死でした。
──アイドルからシンガーソングライターに転向して大変だったことって他にありますか?
原田 アイドル時代は、お客さんがノッてることが楽しんでもらえてる証拠だと、とにかく思ってたんです。でも弾き語りだと反応が分かりづらいから、その日のライブが良かったのか悪かったのか分からないんですよね。自分でどうかな? て思ったライブが、エゴサしたらめちゃめちゃ褒められてたり、その逆もあったり。
──ライブ後のエゴサは日課だったんですね(笑)。
原田 エゴサしないと反応が分からなくて不安だったんですよ(笑)。ただ、周りで音楽をやっている人全員に共通してるのが、ライブが終わった後自分で「楽しい」って言ってるのって、いいライブなんですよね。だから最近は自分が楽しかったならそれで良し、あとは成長するだけだって、ポジティブに考えられるようになりました。エゴサもあまりしなくなりました(笑)。
──自分が楽しいと思える評価と、お客さんの評価にはブレがないぞと自信を持っていいと。
原田 はい。あと『Sixteen』という曲を作って、「これがあれば自分はどんなステージでも挑戦できるな」って思ったんです。
──くるり出演イベントのオープニングアクト、あいちトリエンナーレ2019など幅広いライブに参加してますよね。その中で印象的なライブは?
原田 今年のイナズマロックフェスに出演させてもらったんですけど、メインステージに向かう人たちが見て、いいなって思ったら入ってくるような路上ライブみたいなステージだったんですね。歌い始めたときはぜんぜんお客さんがいなかったんですけど、歌っていくうちに人が入ってきてくれて、 それがうれしくって! 今年中にロックフェスに出るのが夢だったのでその達成感もありましたね。
──ちなみに練習って普段どんな感じでしてるんですか?
原田 アイドル時代は毎日スタジオでレッスンがあったんですけど、今はワンマン前以外はスタジオに入らないので、その辺は全く変わりましたね。練習って感覚じゃないっていうか、家にいるときはずっとギターを弾いてるか、歌ってるか、曲作ってるか。何時間弾いてるかもう分かんないです。
──家でギターは肌身離さずって感じなんですね。
原田 アイドル時代は練習しないと周りに迷惑かけちゃうから、ってところもあったんですけど、今自分にとってギターや歌は生活の一部で、“ただ好きなこと”なんですよね。自分を追い詰めてる感覚はないです。だから曲は自然に出て来る反面、「次もいい曲を作らなきゃ!」って思うから、作ろうとしてもぜんぜん出てこない……みたいなことはあります。
──曲は書けるようになったけど、やはり生みの苦しみはありますね。
原田 自分が求める技術や歌、世界観はどんどんレベルアップしていってるので、それに実力が追いつかなきゃ! って気持ちはありますね。
──ちなみに原田さんが好きなシンガーソングライターって誰ですか?
原田 自分の世界観を持ってる人がすごく好きで、こんな人になりたいと思うのは星野源さん。あとカネコアヤノさんはずっと好きです。カネコアヤノさんは弾き語りでもロックバンドみたいな熱量があって確立してるところが憧れてます。自分も1人でいながらバンドみたいな空気を持ちたいし、最近は若い男の子が見てもいいなって思ってくれるライブができるようになりたいなと思ってます。
▽原田珠々華(はらだ・すずか)
2002年神奈川県生まれ。幼少期よりモデル・タレントとしての活動をスタートし、2016年中学2年生のときにアイドルグループ、アイドルネッサンスに加入。現在は、アイドルもシンガーソングライターも網羅する活動を目指して活動中。原田珠々華 定期公演「“Wake Up!”Vol.3」が12月29日(日)渋谷gee-geにて開催。
(取材・文/大坪ケムタ)