【写真】世界で最も有名な猫、『ねこのガーフィールド』【7点】
世界で最も知られている猫のキャラクターといえば、間違いなくガーフィールドである。
そもそもガーフィールドというキャラクターは、1978年にコミック作家のジム・デイビスによって生み出されたキャラクター。つまりこれもアメコミなのだ。
コミックは日本でも90年代までは翻訳版がいくつか出版されていたが、それ以降は全く翻訳されていない。しかしこれは日本に限ったこと。本国では定期的に新作が出版されており、今も不動の人気を誇っている。
アメコミというと、どうしてもマーベルやDCのイメージが強いが、こういったディフォルメされたものも、立派なアメコミ映画なのだから、いつもアメコミを話題にしているYouTuberやインフルエンサーたちは、こういった日本アウェーな作品こそ、もっと盛り上げるべきではないだろうか。
同じ猫のキャラクターでいうと、アメリカにおいてガーフィールドの映画というのは、「ドラえもん」の新作が公開されるような感覚で、一定数の集客は見込める。一方、日本はそもそも知名度がそれほどないため、なかなかの苦戦を強いられることは目に見えている。
南海キャンディーズの山里亮太を声優として起用するなど、日本独自のテコ入れが必要となるわだが、山里の愚痴感が上手くマッチしており、何なら英語版のクリス・プラットよりもガーフィールドのキャラクター性には合っているようにも思えるベストキャスティングだ。
そんなガーフィールドではあるが、これまでにも何度か長編映画化がされている。日本でも公開された作品はいくつかあり、有名なところでいうと、ビル・マーレイがガーフィールドの声優として参加した実写映画『ガーフィールド』(2004)などがある。
カートゥーン・ネットワークの放送やソフトスルー、もしくは一部劇場の期間限定公開などで長編アニメも定期的にリリースされており、いくつかは日本でも観ることができるが、とくに2010年代以降に制作されたものは、ガーフィールドの醍醐味でもある日常生活の延長にあるコメディというよりもファンタジーや冒険活劇要素が強くなっており、完全に迷走期に入ってしまった。
そこでリブートというべきだろうか、改めて「ガーフィールド」の映画を真正面から制作しようというプロジェクトのもとに完成したのが今作であるのだが……若干、迷走期の余韻を引きずっている感はある。
ただ、海外アニメファンにとって(ちょっと微妙だけど、愛着のある90年~00年代初期のディズニーアニメファン)は、いくつか朗報もある。ディズニーの『チキン・リトル』(2005)以降、目だった活躍がなかったマーク・ディンダルが監督を務め、さらに『ファインディング・ニモ』(2003)などの脚本家として知られながらも長らく表舞台からは姿を消していたデヴィッド・レイノルズがまさかの電撃復帰したのだ。
あくまでメインの脚本を務めているのはポール・A・カプランとマーク・トーコブではあるのだが、この脚本家コンビは、もともとマイケル・J・フォックスの「スピン・シティ」などの王道コメディドラマの脚本を手掛けており、アニメの脚本経験は今回が初めて。その助け舟としてマークの盟友であるデヴィッドが参加したといったところだろう。
ガーフィールドの過去が描かれる「エピソード0」的内容ではあるが、アドベンチャー感を強くしたことで、完全に子どもファーストな作品となってしまっていることには違和感がある。しかし考えれば、子ども向けの作品なのだから、大人が勝手に楽しめないと言っているだけで、子どもが楽しめれば成功なのだ。
今やディズニーもポリコレの影響で新しいもの、新しいもの……と追及するあまり迷走してしまっており、いつしか子どもではなく、大人を意識してしまって、深刻なネタ不足状態のアニメ映画業界ではあるが、シンプルにファミリー映画としての安定感があることは間違いない。
それはそれとして、今作を日本のソニー・ピクチャーズが劇場公開したことには脱帽である。『恋するプリテンダー』(2023)のときもそうだが、普通に日本の需要を考えれば未公開スルー組の映画である。
【ストーリー】
飼い主のジョンに愛されて、“幸せ太り”な毎日を送ってきた家ねこのガーフィールド。親友の犬オーディと一緒に冷蔵庫の中身を空っぽにするまで大食いして、ほしいものは全部ジョンのお金でネットショッピング。食べることが大好きで、月曜日とお風呂が大嫌い!そんな平和な毎日だったのに…ある日突然、生き別れた父さんねこのヴィックが現れた!「悪いねこに追われているんだ。助けてくれ!!」そんなヴィックを救うために、ついにガーフィールドはしぶしぶながら家を飛び出すことに…!
【クレジット】
監督:マーク・ディンダル
キャスト:クリス・プラット、サミュエル・L・ジャクソン、ハンナ・ワディンガムほか
日本語吹替版キャスト:山里亮太、MEGUMI、花江夏樹ほか
2024年/アメリカ映画/1時間41分/レイティング:G
公式サイト:https://www.garfield-movie.jp/
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