南雲家を離れて、いよいよ夏(目黒蓮)のアパートで一緒に住むことになった海(泉谷星奈)。
【関連写真】ドラマ『海のはじまり』より夏(目黒蓮)&海(泉谷星奈)
これまでは、好きなときに好きなだけ“大好きな夏くん”に会えれば良かった海だったが、一緒に住むことになったことで、微妙な心の隔たりが露わになっていく。それは、亡くなってしまった人との距離感だ。水季(古川琴音)が死んでしまったあとも、母親が働いていた図書館に出かけたり、母親からもらった絵本に触れることで、海は常にその存在を感じ続けていた。
だが夏は、「思い出して寂しくなるなら、無理に水季の話をしなくてもいいからね」と海に語りかける。それは彼なりの気遣いだったのだが、「ママがいない人になっている」と海はショックを受けてしまう。ママがいた実感、ママがいた手触りを感じていたい海と、二人だけの新生活を頑張っていきたい夏。その心の隔たりが、黙って水季が働いていた図書館に行ってしまうという、海の“家出”へと繋がってしまう。
慌てて海を迎えにいく夏。そこで彼は、「ママも寂しそうだった。
これまでも弥生(有村架純)や朱音(大竹しのぶ)や津野(池松壮亮)から辛辣な言葉をかけられていた夏だったが(津野からは、今回のエピソードで“お前!”と言われてしまっている)、海からも強烈なパンチを受けてしまった。
気がつけば、このドラマも次回が最終回。その鍵を握るのは、間違いなく水季が夏に宛てた手紙になるだろう。前回のエピソードで、その手紙を発見した海に、「俺もまだ読んでないから、今度一緒に読もう。(中略)海ちゃんとの生活は一人で頑張りたいから。それまで水季の言葉には頼らない」と夏は語っていた。つまり彼がこの手紙を読むのは、「子育てはたった一人でするものではない」という境地に立ったとき。そこには、どんな言葉が綴られているのだろうか。
思えば『海のはじまり』というドラマは、単なる理想を追いかけるでも、目の前の現実にふりまわされるでもなく、そのバランスをどうとっていくかを丹念に描いてきた作品だった。おそらく最後のエピソードも、今を必死に生きている私たちに真摯に向き合った、作り手の想いが凝縮されたフィナーレが待っていることだろう。
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