まずは、「豆柴の大群」についてざっくりとおさらい。『水曜日のダウンタウン』(TBS系列)で、クロちゃんをプロデューサーとするアイドルグループ結成プロジェクト「MONSTER IDOL」が始まったのは昨年11月のこと。BiSHなどが所属するWACKの全面協力のもと、クロちゃんはメンバーの純粋な気持ちを弄ぶように悪徳の限りを尽くしていく。メンバー決定後、「豆柴の大群」と名づけられたグループは1stシングル『りスタート』を緊急発売。しかも本作はクロちゃんプロデューサーを「続行ver.」「解任ver.」「解任&罰ver.」と3種類同時発売し、もっとも売れた形態で今後を決めることとなった。それまでスパイ活動や洗脳工作などによって視聴者の怒りを買っていたクロちゃんは、結果としてプロデューサーの座を追われて罰を受けるハメに。現在は落選したカエデフェニックスを含めた5人で活動を続けている。
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いや~、参りました。今回、豆柴の大群プロデューサーを外された件は率直に言ってア然としましたよ。起こってはいけないことが現実に起こってしまった。でも逆にもうプロデューサーでないということは、何を言っても自由という立場ですからね。
まず何といっても批判を浴びたのは、カエデ(フェニックス)を落とした件。でも、これには明確な理由があるんです。僕は1人の男としてカエデとつき合いたかったから、メンバーにはできないと伝えた。でも、それって変なことですか? むしろプロデューサーとして誠実な態度を貫いたんですけどね。逆に僕はみんなに聞きたい。自分が応援しているメンバーが、スタッフと男女関係になったらどう思います? 嫌でしょ、普通に。僕だってアイドル好きだから、そのへんのファン心理はよく分かっているつもりです。
それからカエデの歌とダンスがスキル的に足りていなかったのも事実。今回はお披露目まで時間がないことが最初から分かっていたから、時間をかけて育成するわけにはいかなかった。即戦力以外は外さざるをえなかったんです。現に彼女は年末年始に『カウントダウンTV』や『WACKなりの甲子園』に出演すると、ファンの一部からは実力不足だという声もあがったみたいです。
今、メンバーに思うことですか? それはやっぱり頑張ってほしいと思いますよ。実際にやってみて分かったけど、アイドルのプロデューサーとメンバーの関係というのは「上司と部下」ではなくて「親と子」なんです。番組の企画でプロデューサーをやることになり、メンバーという「子供」ができて、はからずも僕は「親」になってしまった。親と子がつき合うわけにはいかないから、カエデを落とそうとしたわけですしね。
親というのは、どんなに離れていても子供が可愛いもの。今までの僕だったら、振られた女に対しウジウジ愚痴るように「あいつら、不幸になればいい」と恨んでいることでしょう。だけど今回ばかりは100%の愛情を注いでいるから、そうは思えないんです。離れても可愛くて仕方ない。
だからメンバーには今でもLINEを送っています。たとえばテレビで歌詞のことを聞かれてしどろもどろになっていたら、「こういう風に答えた方がいいよ」ってアドバイスしたりとか。そのわりには「親の想い子知らず」で、返信が遅くてヤキモキさせられるんですけども(苦笑)。
親として子供5人を見た場合、今はまだハイハイから親の手を借りつつヨチヨチ歩きができるようになったくらいの段階ですね。自分1人では歩くこともままならないわけです。それなのに生き馬の目を抜く芸能の世界に飛び込むのだから、これはもう危機的状況と言っていい。僕は親として彼女たちの成長を支えていきたかった。見守りたかった。一緒に七五三の写真を撮りたかった。
今だから言いますけど、僕はこのグループの先の展開も考えていたんです。
はっきり言います。もう一度、僕に豆柴のプロデュースをやらせてほしい。僕には彼女たちを幸せにする責任と義務がありますから。
しかも今回は民意の後押しがありますしね。というのもMONSTER IDOL最終回オンエアからしばらく経って、僕に対してバッシング一辺倒だった世の中の風も変わってきたんです。「最初は不気味だったけど、この歌詞は癖になる」「今思えば、メンバーを落とした理由も納得できるものだったな」「あいつ、意外にプロデューサーとしてはやるんじゃねぇの?」「クロちゃんがいない豆柴なんて結局ダメじゃん」……叩かれるだけの今までのパターンと違って、“クロちゃんP待望論”が巻き起こっているんですよ。
この展開、WACKもTBSも内心では頭を抱えているんじゃないですか!? 僕がプロデューサーじゃなくなったら、速攻で渡辺(淳之介)さんはメンバーをWACK流儀に改名して、アー写真も一新した。渡辺さんがやったことは正しいんですよ。僕がいなくなった以上、一刻も早く次のイメージを作るべきですから。ただ急激に変わったことで、ライト層からアレルギー反応が出ているのも事実なんです。渡辺さんも難しい舵取りをさせられていると思いますよ。
最後にもう一度言わせてください。
(『月刊エンタメ』2020年3月号掲載/取材・文 小野田衛)
▽クロちゃん
1976年12月10日生まれ、広島県出身。お笑いトリオ安田大サーカスの一員。大のアイドル好きで、忙しい合間をぬって アイドルライブへと足を運ぶ。ドッキリ、炎上などのイメージが強いが、アイドルへの思いはピュア。
Twitter:@kurochan96wawa
▽クロちゃんがプロデュースする初のアイドルフェス開催決定
クロフェス 2020 春のアイドル祭だしん!
日時:3月21日(土)/22日(日)
場所:新木場STUDIO COAST