【写真】20㎝ばっさり、8年ぶりのショートヘアを披露した内田有紀
『最後から二番目の恋』の多くのファンが千明(小泉今日子)と和平(中井貴一)と同じくらい、長倉家をあたたかく見守っていると思う。長倉家の人たちはそれぞれ個性ゆたかであるが、その中でも視聴者を惹きつけている人物は、次女、真平(坂口健二)の双子の姉・万理子(内田有紀)であろう。
万理子は極度の人見知り、かつ自閉的であり、千明と出会うまでは自宅に引きこもっていた。過去に、万理子は“深海の貝のように生きることが自分の幸せ”と千明や和平らに胸の内を打ち明けていたが、彼女の幸せは自分の世界で静かに、穏やかに暮らすことであった。
深海に長らく潜んでいた万理子であるが、千明と出会い、心に変化が少しずつ生じる。万理子は“愛しの千明様”をスマートフォンの待ち受けにし、千明の写真を見ては「千明様...」とつぶやくほど、千明に一途だ。ある日、千明のチームに欠員が出て、万里子はテレビ局に駆り出されたが、この件をきっかけに万理子の人生は大きく変化した。千明を助けたいという万里子の思いが、自身の脚本家としての才能を発見するきっかけとなったのだ。
万理子の千明への恋心は精神的なものだが、本人はこの恋が実らないことも分かっている。それでも、千明を一途に愛し、彼女の幸せを願い続けている。
作中の人物たちはもちろん、多くの視聴者が万理子を愛さずにはいられないのは、彼女が純粋な心をもっていて、自分の感情に嘘偽りがないからだと思う。悲しいことがあれば猛スピードで自分の部屋に駆け込み、そのまま出てこなくなるし、嬉しいことがあれば目をキラキラ輝かせ、全身から喜びがあふれている。いつからか、自分の感情を抑えて生きることに慣れた私たち大人は、万理子の無邪気さや素直さに心洗われるのだ。
万理子が繊細な心をもちながらも真っすぐな大人に成長し、機が熟して社会人デビューできたのはきょうだい愛の賜物だ。長倉家は万理子の個性を尊重し、彼女のペースに合わせている。だからこそ、万理子は才能が評価される場所を見つけた今、これまで蓄えてきた気力と体力を発揮し、目を輝かせながら働けているのだと思う。
演者にとって万理子の魅力を引き出すのは至難の業だろう。自閉的で、内気な性格で、大人になっても家族に依存的なキャラクターは批判を浴びやすい。しかし、本作の万理子は多くの人が“守ってあげたい” “ぎゅっと抱きしめたい”と感じる、愛されキャラだ。
万理子を演じている内田について明るく、おおらかで知的なイメージを過去の役などから抱いている視聴者は多いと思う。例えば、「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズ(テレビ朝日)では敏腕の麻酔科医・ 博美をクールに演じている。
私たちは内田の数々の演技を見てきたからこそ、本作で万理子を演じる内田にはおどろかされている。ここであえていうと、演者とはその役になりきることであるが、内田は見事になりきっている。万理子の動作や話し方は特徴的であり、(万理子には失礼だが)挙動不審で、コミカルだ。内田は、万理子の個性や感情を、腰を曲げたり、手を大きく動かしたり、目をきょろきょろさせたり、頭を揺さぶったり、不自然なほどハキハキした口調で話したりすることで表現している。内田の細部にまでこだわった演技によって、万理子は唯一無二のキャラになった。
また、筆者は内田の澄んだ大きな瞳が万理子のチャームポイントになっていると思っている。万理子は純粋で、心がまっすぐで、愛くるしい女性であるが、彼女の内面の清さが瞳に表れているように感じるからだ。
内田は本作において人を愛する喜びも、恋する切なさも透明感のある演技で清らかに表現しているが、過去にも同性に恋心を抱く女性の役を演じている。2015年に放送された「偽装の夫婦」(日本テレビ系)ではヒロ(天海祐希)に恋心を抱くしおりを好演した。しおりがヒロに注ぐ愛情は万理子のように精神的なものである。
筆者は「続・続・最後から二番目の恋」では万理子のかわいらしさに癒されたいと思いつつ、内田の今後の活躍も楽しみにしている。
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