現在放送中のNHKの2025年度前期連続テレビ小説『あんぱん』。その魅力は、今田美桜演じる主人公・朝田のぶと北村匠海演じる柳井嵩が織りなす心温まる物語はもちろんだが、彼らを取り巻く個性豊かな登場人物たちの存在と、それを演じる俳優陣の確かな演技力にもある。
オーディションでの出会いからキャラクター造形の裏側など、本作の人間ドラマを豊かにするキャストたちの魅力を、制作統括を務めるチーフ・プロデューサー、倉崎憲氏に聞いた。(全4回の3回)

【写真】「彼女の観察眼や空間把握能力にも驚かされた」と話す河合優実【4点】

ヒロイン・のぶの姉妹である次女・蘭子役の河合優実と三女・メイコ役の原菜乃華は、共にヒロインオーディションの参加者だったという。倉崎氏は、オーディションで出会った河合の佇まいに強く惹かれたことを明かす。

「芝居だけじゃなく、自己紹介や、他の人の芝居を見ている時の立ち姿まで、とにかく“ずっと見ていたくなる人だ”と思ったんですよね。言語化するのは本当に難しいんですけど『この人をずっと見ていたい』と惹きつけられました」

カメラテストで目撃した彼女の観察眼や空間把握能力にも驚かされたと話す倉崎氏は「次女、三女はどうしようという時に、『次女は河合さんでしょ!』と。絶対に河合さんで行きたいという話をさせていただきました」と明かす。冷静で俯瞰的ながら、内に情熱を秘めた蘭子のキャラクターと、河合自身の持つ奥深い魅力が見事に重なった瞬間だった。

一方、メイコ役の原については、オーディションでのユニークな自己紹介が印象的だったと振り返る。

「『周りの人からなんと言われますか』という質問に対して、彼女は『サムライです』って言ったんです。意味が分からないですよね(笑)。理由を聞いたら『ストイックと思われているのかなと』と言っていて、面白い子だなと」

「例年の“ザ・朝ドラヒロイン”みたいな、明るく天真爛漫な観点で言えば原菜乃華さんは圧倒的でした。世の中の人が朝ドラで見たい人なんじゃないかなと思ったんです。
現場の空気も明るくしてくれるし、芝居も達者」

そんな原の持つ、周囲を惹きつけ、愛される明るさが、天真爛漫な末っ子・メイコのキャラクターにぴったりだと確信したそうだ。

物語に深みを与える若手男性キャストの起用にも、倉崎氏の確かな目利きが光る。のぶの弟・千尋役の中沢元紀と、「朝田石材店」の若き石工・原豪役の細田佳央太は、二人とも千尋役のオーディションで出会ったそうだ。

中沢について倉崎氏は、「本当にピュアで誠実な人柄。オーディションの中では色々と雑談もしたんですが、彼はそこで自分の弱みをさらけ出してくれたんです」と、その飾らない人間性に感銘を受けたことを語る。

「オーディションの場って、自分をよく見せようとすると思うんですけど、彼はつぶらな瞳で『自分はこういうところが弱いんです』と何も包み隠さず話してくれました。人として、中沢元紀という人間に惚れた」と熱く振り返り、そのまっすぐな眼差しと、心優しく純粋な千尋の役柄が強くリンクしたことを明かした。

また、細田については、千尋役のオーディションを通して別の可能性を感じていた。

「千尋役のオーディションの時点で、豪というキャラクターは台本に出てきていました。いわゆる職人気質というか、釜じい(釜次=吉田鋼太郎)をリスペクトしている、真面目な男。細田さんの芝居や佇まいを見て、寡黙な男が似合うなと思ったんです」

オリジナルキャラクターである豪役に彼の雰囲気が見事に重なった。セリフが少ない難しい役どころながら、出演を快諾した細田への感謝も口にした。


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