我々視聴者をあっと言わせるバラエティ番組は世の中に決して多くない。同じような企画に似たような演者など、どこかでもうすでに見たことがあるものの焼き直しなのではと感じてしまうこともしばしばだ。


【写真】音楽番組で初めてMCを務めた有吉弘行

その点で一線を画しているのがテレビ朝日放送の『有吉クイズ』。言わずとしれたテレビの“覇者”である有吉弘行の冠番組で、名前の通りクイズを主軸として展開される。しかし、これまでの企画を見ていると、クイズはあくまでも副次的な要素に過ぎないのだとわかる。

何よりうなってしまうのはその発想力だ。まだどこでも見たことがないような企画を次々と新たなフォーマットにして見せており、一深夜番組の企画力としては頭一つもふたつも抜けているのではないか。

最近になって一般化されたものを企画にしており、中でもしばしば活用されているのがLINE。メッセージアプリとして多くの人が利用しているが、本番組では「動いてないLINEグループ既読に出来るかQ」という企画になった。

その名の通り一度は作ったものの、動くことのなくなったLINEグループをターゲットとし、対象者になりきってグループLINEを操る。大人が本気でふざけて文言を考え、LINEグループを“荒らしていく”様子はヒヤヒヤするような面白さがあり、思わず興奮してしまう。

そこからさらに発展したのが「匿名だったら答えます 芸能人グループLINEビンゴ」。匿名でしか聞けないような質問をLINEグループで行い、芸能人同士のリアルな裏事情を探るというもの。過激な発言などはテレビでは伏せ字となってしまうが、LINE上で匿名とすることでその問題を解決。
最後まで視聴者にも、そして当事者にも実際に誰の発言かはわからない代わりに、芸能界のホントを垣間見ることができるようになっている。

他にも生成AIを活用した企画が行われたり、直近では有吉ら芸人たちが目的地までドライブしながら、気になった発言や行動をメモするという新企画も開始。その場では言わなかった小言がVTRでは表示され、見たことのないようなロケ映像に。とりわけさながら姑かのような有吉の小言の連打にはにやけずにはいられない。

ただ面白いを追求しているかと思えば、そうではない。2025年4月に放送された「ハチミツ二郎と電動車椅子さんぽ」は含蓄に富んだものに。有吉が一緒に電動車いすで街ブラすることで普段は気づかなかったことにも気づき、あらゆる人にとって学びのあるものとなり、「ギャラクシー賞」2025年4月度の月間賞に選出されている。

すでに司会者としての印象も強い有吉がロケに出て、スタジオではパネラーとして奮闘する。そこにVTRを見ながら一言で落とせるせいや(霜降り明星)も加わり、見やすく笑いやすい構造も完璧に出来上がっている。

現在、TVerでのお気に入り数は43.5万(執筆現在)。他番組と比較すると、決して大きくはない数字だけに、もっと多くの人に広まってほしいバラエティ番組だ。

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