ドラマも後半に差し掛かり、ますます盛り上がりを見せるミステリーエンターテイメント「MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です」で、連続殺人事件を追う警視庁捜査一課刑事の梶谷美和を熱演する武田梨奈。日本を代表するアクション俳優として世界的な評価も高い彼女に、映画に目覚めたきっかけや空手を始めた経緯を聞いた。


【写真】映画デビューまで300本のオーディションに落ち続けた過去語る、武田梨奈の撮り下ろしカット【5点】

――映画に興味を持ったきっかけを教えてください。

武田 小さい頃から父の影響もあって、80~90年代のアメリカ映画が大好きで。翌日が休みの金曜日、土曜日は毎週、夜更かしして家族で映画を観る習慣があったんです。たとえば『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』『ダイハード』『ロッキー』などを観ていたんですが、その中で「私も映画に出たい」という気持ちが芽生えました。

――カンフー映画も早くから好きだったんですか?

武田 最初に観たカンフー映画は『酔拳2』で、弟と一緒にジャッキー・チェンさんにどっぷりハマって、まだ空手は始めていなかったのですが、姉弟で動きを真似していました。次にブルース・リーさんの作品に熱中して、そこからいろんなカンフー映画を追いかけて観ていました。

――ということはカンフー映画の黄金期を支えたサモ・ハンも出演している『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』は堪らなかったのでは?

武田 ベテランよりも若手が活躍する作品で、そこに継承を感じて、私自身もアクション作品への熱が再び高まりました! 一昨年、サモ・ハンさんとお会いする機会があって一緒に食事をさせていただいたんですが、ずっとスクリーンで観ていた方だったので感動しました。サービス精神旺盛で優しくて、北京ダックを一切れずつ皮に包んで私に渡してくれたんです。自分よりも周りの人を優先して、気にかけてくださる姿が印象的でした。

――空手を始めたきっかけも映画の影響ですか?

武田 もともと私は空手に興味があった訳ではないんですが、父と弟がジャッキー・チェンさんの影響で空手を始めたんです。

――お父様もですか!?

武田 まず弟がやりたいと言い出したんですが、そしたら父も「実は空手をやりたかった」と。ちょうど父は足を怪我していたこともあり、リハビリも兼ねて二人で始めて、どっぷりハマっていったんです。
それで二人が大会に出るということで応援に行ったのですが、父も弟も1回戦敗退で。あまりにも悔しくて、「私が仇を取る!」という気持ちで、私も空手を始めました。

――それ自体がカンフー映画みたいなエピソードですね。

武田 私は負けず嫌いなところがあるので、二人の仇を取るという一心で毎日稽古していました。1、2年は稽古に励んで、小学6年生で初めて出場した関東大会で、型と組手でW優勝しました。

――いきなり才能が開花したんですね! 空手の練習はつらくなかったですか。

武田 当時は悔しい気持ちを原動力にやっていたように思います。映画『ベスト・キッド』に「wax on, right hand, wax off, left hand」という有名なセリフがありますが、主人公のダニエル・ラルーソーは師匠にひたすら車のワックスがけをさせられて、「こんな地味なことやって何になるんだ、僕は強くなりたいんだ」と思います。空手の稽古は毎回ほぼ同じことをやるんですが、それこそが強くなるために大切なことで、私も基礎が大切だということを、年齢を重ねて学びました。とにかく強くなりたい気持ちで基礎練習を続けるうちに、それが日課になって、むしろ基礎練習がないと不安になるくらいになりました。「空手道」や「武道」など、「道」と付くものには終わりがない。生きている限り、ずっと鍛錬は続けなければいけないものです。
実際、空手の世界では70・80代の方もずっと基礎練習を続けられているので、年齢を重ねるにつれて、より深く鍛錬の大切さを感じられるものなのかなと思います。

――先ほど「私も映画に出たい」というお話がありましたが、俳優デビューするまで数えきれないほどのオーディションを受けたそうですね。

武田 初めて芸能界のオーディションを受けたのは5、6歳くらいのときです。それからデビューするまで300回以上はオーディションに落ち続けました。

――諦めたくなったことはありませんでしたか?

武田 そのときも悔しい気持ちが強くて、家族にも「夢を叶える」と宣言して協力してもらっていたので、今さら引き下がれませんでした。才能や実力がないだろうなというのは小学生ながらに分かっていましたが、「才能がない子が映画のスクリーンに出られたらすごいじゃん」という気持ちで夢を持ち続けていました。

――家族のサポートは大きかったのですか?

武田 両親なしでは続けられなかったと思います。初めてオーディションを受けたいと言ったときも、父は反対しなかったんですが、「途中で辞めるなら最初からやらないでほしい」と。最後までやり通すなら良いという条件でした。だから学校が終わって、オーディションに行くという日々の繰り返しで、送り迎えもしてもらっていたのでありがたかったですね。中学生のときは事務所の演技レッスンで夜遅くなることもありましたし、俳優になる夢が叶ってからも、朝5時から撮影ということも珍しくなかったので、ずっと母が送り迎えをしてくれて、たくさんサポートしてもらいました。

――デビュー前からアクション映画への思いは強かったのでしょうか。


武田 アクション映画をやりたいという気持ちはありましたが、アクションに限らず、良い作品に関わりたいという気持ちのほうが強かったですね。

「MADDER(マダー)その事件、ワタシが犯人です」
カンテレ:毎週木曜深夜0時15分~
フジテレビ:毎週木曜深夜2時15分~
五百城茉央(乃木坂46) 山村隆太(flumpool) 樋口幸平 山下永玖(ONE N’ ONLY)桑山隆太(WATWING) 吉名莉瑠 水野響心 花音 つぐみ ・ 利重剛 ・ なすび イワクラ おかやまはじめ 濱正悟 武田梨奈

脚本:伊達さん
音楽:今村左悶
主題歌:「CYM」Billyrrom(SPYGLASS AGENT)
監督:頃安祐良 高橋栄樹 畑山創

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