【写真】強烈なFinally(かかと落とし)を魅せた荒井優希【4点】
長いことアイドルの取材を続けていると、卒業後のセカンドキャリアの現場でまた取材をするケースも多いのだが、ここまでシームレスに取材を続行できたケースはちょっと記憶にない。これこそが二刀流のなせる業でもあるのだが、非常に取材意欲を沸きたてられる存在である。
この日、荒井はメインイベントに出場。試合形式は『ラスト・ワン・スタンディング・8人タッグイリミネーションマッチ』。通常の8人タッグマッチとしてはじまり、その後、敗れた選手は退場。勝ち残った選手が多いチームの勝利、となるのだが、わざわざ『ラスト・ワン・スタンディング』と銘打ってあるところがミソ。1人だけ勝ち残れば、それで勝利が確定するが、勝者チームに複数人、生き残りがいた場合、最後の1人になるまで、味方同士で闘う、という過酷なサバイバルルールなのだ。
なぜ、わざわざそんなことをするのか、というと、この試合は団体最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス王座への挑戦権を賭けての闘いだから。いささかゲーム性が高いルールではあるが、試合後にリングに上がってマイクアピールをした者が挑戦権を得る、というパターンが多い昨今、さまざまな形で挑戦権を賭けた闘いを見せてくれる東京女子プロレスの姿勢は素晴らしいと思う。
まずは8人タッグマッチで荒井組が勝利。
8人タッグの終盤でかなり厳しい闘いを強いられていた遠藤有栖のほうにやや疲れが見られる。ここは長期戦を誘って遠藤のスタミナを削りまくるという戦法も考えられたが、荒井は一瞬の勝機を見切ると、必殺のFinallyでバシッと完勝してみせた。
これにより、7.21大田区総合体育館で開催される真夏のビッグマッチ『SUMMER SUN PRINCESS‘25』にて瑞希が保持するプリンセス・オブ・プリンセス王座に荒井優希が初挑戦することが決定した。
本人はまったく意識していなかったようだが、すでにタッグ王座とインターナショナル王座を戴冠している荒井は、ここで勝利すればすべてのベルトを獲得するグランドスラムを達成する。プロレスに専念することを決断した荒井にとって、これ以上の勲章はない。もちろん容易な話ではない。現王者の瑞希自身、このベルトをはじめて巻くまで、何度となくチャンスを逃してきているから、その難しさを誰よりもわかっているし、だからこそ挑戦表明をした荒井に「ベルトの重みを教える」と言い放った。
ただ、荒井にもチャンピオンの経験がある。赤井沙希とタッグ王座を巻いていたときはチャンピオンとしての重責を感じ、ベルトを奪われたときの絶望感もしっかりと味わった。昨年1年間に渡ってインターナショナル王座を守り抜いたことで、タイトルマッチの厳しさもたっぷりと痛感してきた。
歴代のチャンピオンと比べると、体格的に小さい瑞希はパワーや肉体の壁に圧されまくることがない分、突破口を見い出しやすそうにも思えるが、これでもまだ倒されないのか?という驚異の粘り腰と、とんでもなくえげつない角度から打撃を突き刺してくる意外性は、そう易々とは攻略できない。シングルではこれが初対決。荒井優希も知らない瑞希の怖さ、したたかさが現出したら、試合の流れは一気に変わる。
それ以上に興味深いのがタイトルマッチまでの1か月半だ。二刀流時代は新曲のリリースと重なると1か月以上、試合の間隔が空いてしまうこともあった。前哨戦なしでいきなり本番というケースも多く、それはそれでとてつもないことをやっているな、と感心していたが、やっぱり毎週、闘いを重ねながらタイトルマッチまでのロードマップを描いていくことこそプロレスラーの醍醐味であり、それを追いかけることがプロレスファンの愉しみである、と思う。
6.7品川大会から東京女子プロレスの試合はほぼ毎週末、組まれており、荒井優希も当然、全戦に参加する、特筆すべきは7月10日(現地時間)からスタートするアメリカ遠征にも参戦すること。ニューヨークでもロスでもなくテキサスに飛ぶ、というところがプロレスラーらしくて、またいいのだが、世界を股にかけてタイトルマッチへのカウントダウンが進んでいく、というはじめての経験をプロレスラー・荒井優希がどう闘い、なにを魅せてくれるのか? 7.21大田区決戦を待たずして、もうタイトルマッチははじまっている!
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