いよいよ中盤から終盤に差し掛かってきた今年の春ドラマ。今回はその中で、演技が際立つ女優ベスト5を筆者の独断で挙げていく。
そして、春ドラマMVP女優を決定したい。

【関連写真】『夫よ、死んでくれないか』で圧巻の演技を魅せる安達祐実

◆第5位
多部未華子:『対岸の家事~これが、私の生きる道!~』(TBS系)主演

専業主婦として、子育て、家事に奮闘しつつ、夫や“対岸”にいる人々との関係に悩んだり、気づきを得ながら成長する村上詩穂役を好演。作品全体としてコミカルさもありながら、専業主婦、ワーキングマザー、育休中の男性、認知症や不妊症の女性など、詩穂とその周囲にいる人々の苦悩がリアルで切実すぎるとして、大きな話題を呼んできた。その一つ一つに丁寧に向き合い、最善の策を見出そうとする詩穂は、ともすると“いい子ぶりっ子”に見えてしまいそうなところだが、多部の真摯な演技がそう感じさせない。

◆第4位
河合優実:連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)出演

主人公のぶの妹・朝田蘭子を、今旬女優の河合が演じている。“愛国の鑑”として突き進むのぶに視聴者が感情移入しづらい中で、結婚を約束した原豪(細田佳央太)の帰りを待つ蘭子の健気さと強さに、心を揺さぶられた人も多いはずだ。豪の戦死を知らされ、のぶから豪は立派だったと言ってあげなさいと迫られた際、徐々に感情を震わせ、最後は「そんなの嘘っぱちや!」と号泣した蘭子。河合が怒りと悲しみを圧巻の表現で見せたこのシーンは、ここまでの『あんぱん』のハイライトの一つだろう。他にも随所で芯の通った蘭子の魅力が光っている。

◆第3位
小泉今日子:『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)主演

2012年と2014年に放送された人気シリーズの11年ぶり最新作で、アラフィフからアラ還となった吉野千明を、小泉が白髪を隠さず自然体で演じている。W主演の中井貴一演じる長倉和平とのつかず離れずの距離感と、軽妙な掛け合いは変わっていないが、確実に老いは迫っており、自身の内面や立場、周囲との関係性は変化している。それを抗うことなく受け止め、その時々の齢で前を向いていこうとする千明の“強さ”と“弱さ”両面に、世代を問わず共感する視聴者も多いだろう。


◆第2位
安達祐実:『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京系)主演

親友役の相武紗季、磯山さやかとトリプル主演を務める甲本麻矢役の安達。昨今では幅広い役柄をこなす彼女だが、昨年放送の『3000万』(NHK総合・BSP4K)同様、“追い詰められた主婦”の演技も超一級品だ。麻矢は、夫の裏切りと失踪に戸惑いながらも、自身の栄転と親友達の夫の殺害計画も同時進行で狙うしたたかさを持ち合わせる。今作は麻矢の絶望、焦燥、失望、驚愕といった様々な感情を、度々ドアップで表現してきたが、安達は瞳の動きと彩度で繊細に演じ分けてきた。髪型を変えただけで、大学時代の麻矢も違和感なく見られる安達の変わらぬ美貌にも脱帽。

◆第1位
芳根京子:『波うららかに、めおと日和』(フジ系)主演

放送前は注目度がさほど高くなかった今作だが、主人公・江端なつ美演じる芳根の奮闘で『対岸の家事』、『続・続・最後から二番目の恋』と並び、今期3本しかないTVerお気に入り数100万台の一角に押し上げた。帝国海軍中尉の夫・江端瀧昌(本田響矢)と、その妻・なつ美の瑞々しすぎる新婚生活を丁寧に紡ぎ上げ、甘酸っぱくもじれったい二人の関係に“むずキュン”する視聴者が続出。ダークな役柄も務めてきた芳根だが、そんなことを一切忘れさせるほど、純粋無垢で一途ななつ美の愛らしさが際立っている。本田の今作でのブレイクも、芳根とのシナジーあってこそだろう。

奇をてらわない作品ながら、前評判を覆しムーブメントを巻き起こした『波うららかに、めおと日和』主演の芳根を、春ドラマMVP女優に認定したい。

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