【画像】高度2,400メートル超の空で、時速225キロで旋回するセスナ機に飛び乗るトム・クルーズ
約30年にわたるシリーズの歴史を振り返るかのように、1作目『ミッション:インポッシブル』(1996)のキャラクターたちをフッテージ映像で深掘りし、懐かしさで観客の涙腺を刺激する演出もあり、集大成を意識した作りであることは間違いない。しかし実際には、どのようにも続けられる構成となっており、トム自身もカンヌ国際映画祭でのインタビューにおいて完結についての明言を避けたことから、忘れた頃に新作が公開される可能性も十分にある。
SAG-AFTRA(映画俳優組合・米テレビ・ラジオ芸術家連盟)のストライキによって制作が遅れたり、潜水艦の故障などのトラブルもあったが、無事に完成にこぎつけたことは素直に喜びたい。
『ミッション:インポッシブル』シリーズといえば、ストーリー構成の特殊さで知られており、特に近年の作品ではアクションを先に決めてからストーリーを組み立てるという、格闘映画に近い手法で制作されている。そのため、科学的な根拠やリアリティには乏しく、SF要素を匂わせるような“スパイアクション”的展開が、綱渡りのように連なっていくのが特徴だ。脚本としては破綻している場面もあり、過去作の伏線を回収するような描写もあるが、何を語っているのか判然としないことも多い。
それでもこのシリーズが超大作として成立している理由は、命がけのスタントをこなすトム・クルーズの存在に尽きる。今作では、高度2,400メートル超の空で、時速225キロで縦横無尽に旋回するセスナ機に飛び乗るシーンがあり、呼吸も困難で失神を繰り返したという。つまり、トム・クルーズという唯一無二の俳優なしでは成立しないシリーズになっているのだ。
あまりにもスタントの印象が強いため、「結局、どんな話だったっけ?」と思ってしまうのはお決まりの展開。続編の有無は、最終的にトムがスタントを続けるかどうかにかかっている気がしてならない。
一方で、今作で非常に評価できるのは、無理にラブシーンを挿入しなかった点だ。
そんな関係性もこのシリーズの魅力の一つだったが、前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)でイルサがシリーズを離脱。代わって登場したグレース(ヘイリー・アトウェル)がヒロインの立ち位置を担うことになる。何度か危うい場面はあったが、恋愛に逃げることなく、短い時間の中で“絆”の芽生えを丁寧に描いた点は見事だった。制作陣、そしてトム自身もその点をしっかり理解していたことが、今後への希望につながる。
そしてトムといえば、もうひとつの代表作『トップガン』第3作の脚本がすでに完成しており、さらには『デイズ・オブ・サンダー』(1990)の続編企画も進行中。『ミッション:インポッシブル』がひと区切りを迎えたとしても、トムをスクリーンで見る機会は当面減りそうにない。どうぞご安心を。
▽『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』
すべての“ミッション“はここにつながるー。映画の常識を変え、不可能を可能にし続けてきた『ミッション:インポッシブル』シリーズの集大成―『ファイナル・レコニング』。
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、ヴァネッサ・カービー、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフほか
配給:東和ピクチャーズ
5月23日(金)より公開中
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