中学時代は学級委員長を務めるほどの真面目な優等生だったというコスプレイヤーの花宮いのりさん。高校では“ギャルデビュー”を目指してみたものの、思うようにはいかず、専門学校を経てOLとして働くことに。
そんな彼女の人生を変えたのは、1本のアニメとの出会いだった。花宮さんに人気コスプレイヤーになるまでを聞いた。(前後編の前編)

【写真】人気コスプレイヤー・花宮いのりさんの撮り下ろしカット【10枚】

――学生時代はどんな生活を送っていたのでしょうか。

花宮さん 中学生まではすごく真面目で、学級委員長もやっていましたし、勉強も部活も頑張っていました。だけど、高校で「可愛いギャルJKになってみたい!」と思って、お化粧を頑張ったり、髪の毛を染めたりしていました。完全に高校でデビューです(笑)。

――なぜデビューしたかったんですか。

花宮さん 真面目に頑張りすぎたギャップですかね。少女漫画が好きだったので、いっぱい恋愛したいし、とにかく可愛くなりたかったんですよね。その代わり勉強はあまりやらなくなってしまいました。

――中学までは自発的に勉強していたんですか。それとも親の影響?

花宮さん 母親が厳しかったので、言われるままに勉強していました。
父は普通の会社員なんですけど、母が中国出身なのでそれもあって、厳しかったのかもしれませんね。「頭のいい大学に行きなさい」「あなたのために言っているんだからね」と言われていました。私自身別に勉強が得意じゃないので、「ちょっと嫌だな~」なんて思いながら。でもそうやって言ってくれた母がいたおかげで成績は良かったです。今見返しても「頑張っていたな」って。体育が4で、あとはオール5でした。

――実際デビューしてみて世界が変わったなと思いましたか?

花宮さん いや、現実は厳しいなって感じですね(笑)。「想像通りにはいかないなあ」って思いながら、結局バイトばかりしていました。

――では恋愛の方は。

花宮さん やっぱり少女漫画みたいにはいかないです!(笑)高校3年間をバイト掛け持ちして働いて過ごして医療事務の専門学校に行きました。「将来は専業主婦だ!」と思いながらも、資格があればいつでも職につけるぞというモチベーションで資格をとり無事卒業して、病院にも勤めました。

――少女漫画だけでなく、アニメや少年誌も観ていたのでしょうか。


花宮さん アニメが大好きで、特に『黒子のバスケ』とか『FAIRY TAIL』あたりから入って、もうズブズブのオタクですよ。高校1年の時、『黒子のバスケ』の黄瀬君がすごく好きで、彼に憧れてピアスを開けたんですよ(笑)。絶対お揃いにしたいと思って、リングピアスを買いました。高校生だからお金はそんなになくて…だから、グッズ収集とかはできなかったんですけど、めちゃくちゃアニメを見て、できる範囲でオタ活していましたね。

――そこからコスプレを始めたキッカケは?

花宮さん 『ラブライブ!サンシャイン!!』のアニメを見ていて、津島善子っていう超絶可愛い厨二病ちっくな女の子がいるんですが、アニメを観てて「この子になりたい!」って急に思ったんです。高校時代のオタク友達にLINEしたら、「コスプレっていうのがあってね…」と教えてもらったのが始まりです。それが専門を卒業した翌年ぐらいで、社会人1年目とかでした。

――初コスプレはどこで?

花宮さん 最初は池袋でやっていた「アコスタ」というコスプレイベントです。その日がコスプレイヤーを見るのもカメラを向けらるのも初めてで、あのときの緊張感は今でも鮮明に覚えています。かなり震えていましたね。(笑)周りの子はみんな可愛いのに、私は大丈夫かなって思いながら、そわそわしながら参加していましたね。でも、すごく楽しかったんですよね。


――どういうところが楽しかったのでしょう。

花宮さん キャラになりきっていられることもなんですが、カメラマンさんが自分のことを撮るために並んでくれるんですよね。そうやって時間を作って待ってくれる人がいるんだということへの感謝と経験したことのない気持ちで嬉しかったんだと思います。

――とはいえ、初イベントでポージングなど大変ではなかったですか?

花宮さん それがめちゃくちゃ大変でしたよ(笑)。ポージング考えている時間で「カメラマンさんのこと待たせちゃいけない!次!次!」と勝手に焦っていました。ずっとアニメを思い返して「善子ちゃんは確かこんなことをやっていたな」みたいな感じで、頭の中ぐるぐるで、必死でした。

――当時から今も応援してくれる方もいるのでしょうか。

花宮さん そこにいた人の顔と名前は今でも覚えています。たまにイベントに会いに来てくれますよ。いい御縁ですよね。だってそれがもう8年前とかですよ。……って自分で言ってびっくりしました(笑)。


――この8年の活動の中で、人生が変わったなと思うキャラクターはいますか?

花宮さん それこそ『ラブライブ!』ですね。東條希のコスプレで『ラブライブ!』好きな人たちが私のことを知ってくれたんです。でもSNSで世間的にバズったので言うと、コスプレのお仕事で海外に行った時に、友達の衣装を借りてコスプレをした『Re:ゼロから始める異世界生活』のレムですね。そこからちょこちょこレムをやっていた時期がありました。その後はかっこいい系のお姉さんのキャラをお仕事でやる機会が多いのですが、すごく好評ですね。

――コスプレをしていて、喜びを感じたりとか、やりがいを感じる瞬間を教えて下さい。

花宮さん キャラに寄せたようなポージングや表情、動き方を褒めてもらえた時です。コスプレしているキャラに対して話しかけてくれた時などは本当に嬉しいです。「ちゃんとこの子になれているんだ私」って思えます。お仕事だと特に声を発さないとか、動きや仕草、目線の使い方だけで表現することが求められるので、事前に勉強しています。お客さんと私のキャラへの解釈一致したときが一番テンション上がりますね。

▽花宮いのりさん
神奈川県出身、1月18日生まれ、O型。

真面目な優等生だった中学時代から高校デビューで憧れのギャルに。その後専門学校を卒業して医療事務として勤務しながらコスプレイヤーとして活動を開始。7人組アイドルグループ「Couleur Clarity」のメンバーとしてもパフォーマンスを行いながら裏方業務も担当していた。なお同グループは2024年11月8日に活動を終了。現在は、月に1回撮影会を主催するほか、公式コスプレイヤーや同人グラビアモデルとして多岐にわたる表現活動を展開している。趣味はマシンピラティス。

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