コントを主戦場に戦い、「キングオブコント」では5年連続決勝進出を果たしたニッポンの社長にとっては悲願のタイトルに。
一方で、大会について本当の意味で「二刀流」が持ち込まれていたのかというと大きな疑問が残った。
そもそもファイナリストに残った7組はいずれもコント師の印象が強い。前述のニッポンの社長はもちろん、かもめんたるはKOC王者であるし、コットンにしても2022年の準優勝者である。M-1グランプリで頭角を現したスタミナパンにしても元々はコントを中心に行っており、漫才とコントの両刀が同じくらいの切れ味を持つという印象があったのはロングコートダディくらいだったのではないだろうか。
2本を披露してその印象が杞憂に終わればよかったのだが、その実「コント(師)のための大会」となった思いは拭えない。
点数を見れば、ななまがり、かもめんたる、ロングコートダディの3組が2本目に見せた漫才が、1本目のコントの点数を上回っている。半数が漫才をより評価され、二刀流を裏付ける結果にもなったと見えるが、その内容が気にかかった。
7組のうち「演説」スタイルの漫才を行ったかもめんたるを除き、6組が漫才コントだった。漫才コント自体は古くからあるもので全く否定するものではないのだが、コント師による漫才に見えてしまうことが残念だった。サンパチマイクが真ん中にある意味、そもそもコントではなく漫才である必要があるという点が一視聴者にはなかなか見えてこなかったというのが正直な感想だ。
もっとも、漫才コントだから笑えないということはないし、演技力によって漫才が一段も二段も引き上げられたコンビもいた。
ただ、多くのコンビが見せた漫才がコントの延長線上に見えたのである。漫才だからこそ見られる掛け合いなどが希薄で、コントにはなりきれなかったネタが漫才となっているような印象に終始し、ダブルインパクトの「漫才とコント“二刀流”の頂点を決める」というコンセプトから少し外れてしまったのではないかと思う。
7組中6組が1本目にコントを選択したのも自信の裏返しに見え、あくまでも“コント勝負”だったことが伺い知れる。実際、1本目のコントで最高得点を出したニッポンの社長がロングコートダディを振り切って優勝している。
1本目に強いネタをやるというのは常套手段として容易に受け入れることができるが、その大半がコントを選ぶとなると話は変わってくる。「キングオブコントにおまけがついただけ」という意地悪な見方も可能にしてしまい、新たなフォーマットの大会にケチがつきやすくなった(だからこそスタミナパンが1本目に漫才を選んだことには大きな意味があるのだが……)。
とはいえ、ダブルインパクトは第1回を終えたばかりで、一歩を踏み出したに過ぎない。カメラワークを含め、いくつかの改善がなされていけば唯一無二の魅力を持つ大会になる可能性も秘められている。第2回を終えたときに改めてダブルインパクトと向き合いたい。
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