これまで専用の道場を持っていなかったマリーゴールドに専用道場がようやく完成。道場開きと同時にマスコミにもお披露目された。
旗揚げから密着取材を続けている元・週刊プロレス記者の小島和宏は、この道場から飛躍する存在としてビクトリア弓月を名前を推した。真新しい道場で彼女が語ったこの夏の野望とは?

【写真】完成した専用道場で練習をするマリーゴールドの選手たち【3点】

 昨年5月に旗揚げした女子プロレス団体・マリーゴールド。創設以来の悲願だった専用道場が都内に完成し、7月22日に道場開きがおこなわれた。

 旗揚げから1年2カ月。本当はもっと早く道場を建てたかったが、物件探しに大苦戦。ただリングが置ければ、それでいいというものではなく、周囲への騒音問題などクリアする点が山ほどあるプロレス道場は、なかなか建てるのが難しい。そんなこんなでやっと完成に漕ぎつけた道場は綺麗にリフォームされ、冷暖房も完備。快適に練習に打ちこめるスペースが広がっていた。 

 道場開きに合わせて、現役選手でプロレスの達人として知られる近藤修司が専属コーチに就任したことも発表。「選手たちには血ヘドを吐くような練習をしてもらう」という挨拶に道場内の空気がピリリっと凍てついたが、厳しさあってこそのプロであり、修練の場でもある。

 リング周りのことに関してはエースの林下詩美がキビキビと指示を出し、ムードメーカーで実家が飲食店を営んでいる後藤智香がテキパキとちゃんこ鍋つくりを取り仕切る。合同練習のあと、全員でちゃんこを食べる光景を眺めながら、主力選手の青野未来は「やっと“家”ができましたね」と安堵の表情を浮かべた。
「こうやってみんなで食事をすることで結束力も絶対に高まるし、なんていうんですかね、本当の意味で“団体”になったんだなって、すごく感じています」

 いままではリングが常設されている場所を借りて、トレーニングしてきたし、もちろん試合前には開場ギリギリまでリング上で練習してきた。しかし、どうしても時間に限りがあった。これからは選手たちがその気になれば24時間365日、リングを使うことができるし、わからないことがあれば教えてくれるコーチだっている。「これだけの環境を整えてもらえたら、絶対にレベルアップしますよ」と現・スーパーフライ級王者の岩谷麻優。旗揚げから1年2カ月かかったけれども、やっと団体として陣容も設備もすべて揃ったように思える。

 今年に入って、なぜか道場にまつわる取材がいくつも入り、7月30日に発売される『逆説のプロレス』(双葉社・刊)では仙台に飛んでセンダイガールズプロレスリングの道場にもお邪魔してきた。いまの時代、本当に道場は必要なのか?という論争もあるが、選手たちにやる気が満ちているんだったら、絶対にあったほうがいいし、ちょっと時間はかかるかもしれないけれど、実際のリング上の景色も変わってくるはずだ。

 そういう視点から見ると、注目していただきたいのが伸びしろありまくりの若手選手たち。道場効果でいきなり急成長する存在がでてきても不思議ではない。すでにトップ選手の一角を占めているビクトリア弓月だ。

 現在20歳の彼女はプロデビューしてまだ1年8カ月。だが類まれなるレスリングセンスと新人離れしたリング度胸でマリーゴールドの旗揚げから常に最前線を突っ走ってきた。
そんな彼女は真新しい道場に足を踏み入れてから、ずっとニコニコしていた。いつでも練習できるようになったことがうれしくてうれしくて仕方ないようだ。

 ずっと取材してきてわかったのは、ビクトリア弓月という選手は起きている時間はほぼすべてプロレスについて考えている。そして、それをなんとかして形にしようと頭を悩ませている。まだキャリアが浅いんだから、そんなこと考えなくてもいい、というレベルのことまで真剣に考え、なんとかリングで表現できないか、と模索する。いままでは頭の中になにか浮かんでも、次の練習日までリングで試すことができなかったが、これからは閃いたら、いつでも道場で突き詰めることができる。もう、いつ大化けしても不思議ではないのだ。

「やっぱり5月に(岩谷)麻優さんが来てくださったことで、いろいろ変わりましたね。いままではとにかくがんばろう!って突っ走ってきましたけど、憧れの存在だった麻優さんがいてくれることで『私もこうなりたい!』という目標が明確になったので、どこに向かってがんばればいいのか、よくわかるようになりました。

 まぁ、麻優さんに負けてスーパーフライ級のベルトを落としたことで、いろんな意味でちょっと落ち着いちゃったかな、と自分で思うこともあるんですけど、ちょっと落ち着いたことで視野がものすごく広がりましたよね。同世代の選手たちもみんな伸びているので、みんなでマリーゴールドをもっともっと!盛りあげていきたいです」

 ゴールもわからずに爆走してきた時期と比べると、たしかに落ち着いたのかもしれないが、それはプロレスラーとして「大人」になった、ということもでもある。その反面、長与千種率いるマーベラスとの団体対抗戦では感情ムキ出しのファイトで観客を沸かせる。
「そりゃ、やっぱりね、団体の看板を背負って闘っていますから!」とマリーゴールド愛を誇示するビクトリア弓月には、やっぱり期待を抱かずにはいられない。

 8月2日からは真夏のシングル争覇戦『ドリームスターグランプリ2025』が開幕する。昨年は参加することに意義がある、というポジションだったが、今年はもうそういうわけにはいかない。

「優勝ですよ、優勝。もう優勝しか見えていないです!」

 トップ選手総出場のリーグ戦だけに優勝のハードルはとてつもなく高くなる。特に7.16後楽園でマーベラスの彩羽匠を相手になんと56分を超える超マラソンマッチを展開した林下詩美は、これから道場で練習漬けになったら、どれだけ強くなってしまうのか?と脅威をおぼえてしまうが、その最強王者といきなり開幕戦で弓月は当たる。たしかにここを突破すれば、優勝はけっして夢物語ではなくなるし、どうしても雪辱したい岩谷麻優との公式戦が組まれている8.30後楽園まで集中力は途切れないはず。ひょっとしたら「道場の魔法」でこの夏、ビクトリア弓月がとてつもないジャンプアップをとげるかもしれない。真夏の女子プロレスはますます暑い!

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