日本が世界に誇るメタルダンスユニット・BABYMETALが快挙を成し遂げた。日本のアーティストとして初めて、アメリカの音楽チャート・ビルボードの総合アルバムチャート(Billboard 200)でベスト10入りを果たしたのだ。


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8月8日に世界同時発売された彼女たちの4枚目のオリジナルアルバム『METAL FORTH』(2023年発売のコンセプトアルバム『THE OTHER ONE』を含めると5枚目のスタジオアルバム)が、8月23日付同チャート初登場9位を記録。メンバー全員が日本人のグループが同チャートでベスト10内にランクインしたのは、史上初の出来事だ。

BABYMETALは2010年、アイドルグループ・さくら学院の部活動ユニット「重音部」として結成。ミュージックビデオが国内だけでなく海外でも話題となり、次第に活動の場を広げていく。ボーカルのSU-METALこと中元すず香がさくら学院を卒業すると、海外でのライブも開始。2014年に初めてヨーロッパ、アメリカでツアーを行うと人気が爆発。以降、毎年のように海外ツアーやフェスへの出演を重ね、レディー・ガガやジューダス・プリーストなどメタルシーン内外のビッグネームとの共演を通して人気と認知度を高めていった。

2016年に発表された彼女たちの2ndアルバム『Metal Resistance』はビルボード・アルバムチャートで39位と初めて100位以内を記録。すると2019年の3rdアルバム『Metal Galaxy』は13位となり、坂本九の持つ日本人アーティストの同チャート最高記録を56年ぶりに更新した。その間にはメンバーのYUIMETAL(水野由結)が脱退するなどの危機もあったが、コロナ禍を経て2023年4月には、さくら学院出身でお笑いコンビ博多華丸・大吉の華丸の娘である岡崎百々子がMOMOMETALとして正式加入。再び3人体制での活動を再開した。

そして今年も5月からヨーロッパツアー、6月から北米ツアーを開始し、8月8日にニューアルバムを発売すると日本に凱旋。
13・14日には横浜で公演、16・17日は「SUMMER SONIC 2025」に出演している。

そんな中で届いた、日本人アーティスト初の全米アルバムチャート・ベストテン入りという吉報。BABYMETALは、なぜ快挙を成し遂げられたのか。

理由の一つは、過去10年にわたり続けてきた世界ツアーにある。世界中のメタルファンをはじめとする音楽ファンの前でパフォーマンスを重ね、認知度を上げてきたことが大きい。今年のツアーでは、ニューアルバム収録曲を複数プレイし、新譜への期待度を高めることに成功したと言えそうだ。

さらには、今回からレコード会社が米大手のキャピトルに変わったことも大きい。同レーベルは数多くのビッグネームが名を連ね、メタルはもちろんロックからR&B、ジャズまで幅広いジャンルのアーティストが所属している。そうした関係から今回のアルバムには多数のアーティストがコラボ参加。全10曲中7曲がコラボ作品で、その面々はレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのギタリストであるトム・モレロら多岐にわたる。こうしたバラエティに富んだ楽曲が多方面の音楽ファンの興味を引いたのだろう。

BABYMETALは9位の報を受け、以下のようにコメントしている。


〈BABYMETALの新しいアルバム『METAL FORTH』を世界中で応援してくれてありがとうございます!! 私たちは皆さんと共に「メタルのその先へ」と進み、どんどんとキャリアが更新されています。あなたの国へ、あなたの街へ、とBABYMETALは旅を続けていきますので、ぜひBABYMETALのshowでお会いしましょう!!〉

ビルボード誌がアルバムチャートを毎週発表するようになったのは1956年3月。そして同チャートにおける日本人アーティストの歴史は、1963年の坂本九から始まった。ビルボードのシングルチャート(Hot 100)で1位に輝いた『上を向いて歩こう(SUKIYAKI)』を含むベストアルバム『Sukiyaki and Other Japanese Hits』が最高位14位を記録した。その後、冨田勲やYMOのアルバムも100位以内に入っている。

日本のメタルバンドとして初めて100位以内に入ったのがラウドネス。1985年の『Thunder in the East』が74位、86年の『Lightning Strikes』が64位。その後日本人アーティストのランクインはしばらく途絶えるが、2009年には宇多田ヒカルが「Utada」名義で出した『This Is the One』が69位に登場している。

BABYMETALは、これまで3枚のアルバムを100位以内に送り出し、この度ついに9位を獲得。日本の、そして世界の音楽史を書き換えることに成功したのだ。

しかし『METAL FORTH』のアルバムタイトル通り、彼女たちはこれからも“前へ”進んで行く。次の目標は全米1位か、それとも――。
BABYMETALはまだまだ世界を驚かせ続けるだろう。

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