出産を機に一度は離れたオタク趣味。だが、地元イベントで出会った一人の“ママさんレイヤー”が、彼女の世界を変えた。
徳島在住・クロスケさんは、家事・育児・仕事をこなしながらコスプレ活動を続ける現役ママレイヤー。今は高校生の娘・ててのさんと二人三脚でイベントに参加し、親子の時間を輝かせている。彼女が見つけた「自分らしく生きるための選択」とは。(前中後編の前編)

【写真】メインは男装!現役ママレイヤー・クロスケのコスプレカット【9点】

――ご自身の“オタク歴”について教えて下さい。

クロスケ 学生の頃まではアニメやゲームが大好きでした。でも、私生活が忙しくなって、一旦オタク的なものからは離れていました。でも下の子を産んだ後、家にいる時間が増えた時に、またアニメを見始めて“帰ってきた”っていう感じです(笑)。

――そこからコスプレを始めるには、何かキッカケがあったのでしょうか?

クロスケ 私の妹が「コスプレイベントを見に行ってみたいから、ついてきてほしい」って誘ってくれて。私もアニメ熱が再燃していた時期だったので、「行く行く!」と軽い気持ちでついて行ったんです。

その会場には地元のママさんレイヤーがいらっしゃったんですよね。旦那さんとお子さんを連れて来ながら、ご自身はコスプレをされていて。それを見た時に「え、できるんじゃないんかな?」って思いました。
同時にすごくかっこいいなと思って、ものすごく勇気をもらったのが一番のキッカケです。

――まさにロールモデルとの出会いだったんですね。

クロスケ 本当にそうですね。その方とはすぐに交流させてもらって、色々優しく教えていただいたり、うちの子もまだ小さかったので、その方のお子さんと一緒に遊んでもらったりしていました。その出会いがなかったら、始めていなかったと思います。

――その出会いから、実際にコスプレデビューするまでは早かったですか?

クロスケ 多分イベントを見てから2~3ヶ月後には、地元のイベントで初コスプレをしました。『刀剣乱舞』の三日月宗近のコスプレに挑戦したのですが、今見返したら本当にひどくて(笑)。ウィッグをただかぶっただけ、衣装を着ただけ、みたいな感じで、完全に“黒歴史”。

――誰にでもある「黒歴史」ですね(笑)。実際にやってみていかがでしたか?

クロスケ 見ず知らずの私にも、「写真撮らせてください」って声をかけてくれる人がいたり、他のレイヤーさんと交流できたりして、とにかく楽しかったのはすごく覚えていますね。

子育てをしていると、どうしても世界が狭まりがちですけど、コスプレを通じて友達もできたし、視野も広がり「コスプレで人生が変わった」って本気で思います。もしやっていなかったら、どんな生活を送っていたか想像できないくらい。


――お子さんが小さい頃は、イベントに連れて行くのも大変だったんじゃないですか?

クロスケ 地元のイベントでは着替えているときは横で動画を観ながら待ってもらっていました。あとコスプレ仲間ができてからは、友達にかまってもらったり。徳島は「マチ★アソビ」という大きなイベントがあって、街全体がオタク文化に温かい雰囲気なので、周りの方々にもすごく助けてもらいました。

――趣味と子育ての両立、という点では、ご家族の協力も大きかったのでは。

クロスケ そうですね。特に旦那の理解は大きいですね。旦那もサーフィンという自分の趣味があって、「お互い趣味を大事にするから、任せる時は任せよう」っていうスタンスなんです。「家のことちゃんとしてよ!」ではなく、「こっちが遊ぶからよろしく!」「そっちが遊ぶ時はこっちが一人で面倒見るよ任せて!」みたいな。

――素敵な関係性ですね。

クロスケ だから、私がアニメにハマったり、コスプレを始めたりした時も、特にぶつかることはなかったです。もちろん、趣味以外のことで喧嘩することはありますけど(笑)、お互いの時間については尊重しあう、という暗黙のルールがありますね。

――とはいえ、お子さんが小さい頃は、衣装の準備をする時間を捻出するのも大変だったのでは。


クロスケ 旦那や実家に頼める時は頼んで、あとは、子どもたちが寝てから夜な夜な作業する、みたいな。いわゆる“修羅場”ってやつですね(笑)。本当に大変でしたけど、今は子どもたちも大きくなったので、全然楽になりました。

――仕事、家事、子育て。その中で、趣味のコスプレには月々どれくらい費用をかけているのでしょう。

クロスケ 遠征費を抜いたら、だいたい3万円ぐらいですかね。

――パートとして働きながら、月3万円を趣味に使うというのは、やりくりも大変そうです。

クロスケ 意外と無理なくやれていますよ。一番散財しちゃうのは、やっぱり“推し”のライブイベントですね(笑)。

――現在は娘さんと一緒に活動されていますが、一人でやっていた時と比べて変化はありましたか?

クロスケ 正直に言うと、大変にはなりました(笑)。ぶっちゃけ、一人の方が楽だったんですよ。準備とか片付けとか、「早くしなさい!」って言いながらやるので。


――準備が遅いのは、ててのさんの方…?

クロスケ (隣のててのさんをじろっと見て)……ですね(笑)。でも一緒にやるのはすごく楽しいですし、何より、親バカなんですけど、コスプレした娘を見ると普通に「え、可愛い!」って思うので幸せですよ(笑)。一緒にやれて良かったなって心から思います。

――では、クロスケさん個人の、コスプレ活動における目標を教えて下さい。

クロスケ 私は“推しをやりたい”タイプのレイヤーなので、許される限り、自分の推しキャラをやりきりたい、っていうのが目標です。やっぱり年齢のこともあるので、「今年いっぱいかな」なんて言いながら、毎年ズルズル続けてるんですよね。新しい作品を見て好きなキャラクターが増えちゃうと、「あ、これもやりたいな」ってなっちゃうんです(笑)。

▽クロスケ
徳島県在住。家事に子育て、パートに趣味と充実した生活を送っている。16歳の娘・ててのさんと小学6年生の長男を持つ4人家族。イケメンキャラが大好きな、男装レイヤーで娘の友人に「お母さんかっこいいね」と言われるほど。コスプレイベントは親子2人で参加し、各々楽しんでいる。


【娘のインタビューはこちらから】「お母さんイケメン!」親子でコスプレに挑む現役JKレイヤー・ててのの青春
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