【関連写真】『櫻坂46 5th TOUR 2025 "Addiction"』の様子【44点】
4月26日の愛知公演での初日から約4ヶ月間にわたり、5都市の全11公演で26万人を動員した櫻坂46の5度目の全国ツアー『5th TOUR 2025 “Addiction”』。とりわけ7月24日から26日の東京ドーム公演と、8月23日・24日の京セラドーム大阪公演という二大ドーム公演は、演出もさらに進化。大きなインパクトを与えたこのドームライブの見どころや意義を振りかえってみたい。
欅坂46時代からエッジの効いたライブ演出を用いてきた櫻坂46。そこに、日ごろ鍛えてきたメンバーのダンスやフォーメーションの一体感でもってBuddies(櫻坂46のファンネーム)を沸かせてきたが、東西の二大ドームでのライブは、もはやアイドルとしての限界も破ろうとしている、そんな印象すら与えた。
まず、アイドルやアーティストのライブにはつきもののMCをほぼなくし、序盤と最終盤でのメンバーからの煽りや挨拶だけにとどめた。MCはメンバーの裏話やご当地の話題で楽しめる時間でもあるし、また衣装替えなどの場をつなぐ面もあるが、それらをなくしてパフォーマンス力だけでおよそ3時間、観客を魅了させ続けようという気概を見せた。
実際に、まず目立ったのはダンストラックが増えたことだ。例えば『自業自得』のパフォーマンスの前には田村保乃と守屋麗奈がソロで踊るシーンをつくり、2人が一旦ハケるとムービー映像が流れて電話ボックスから山下瞳月が登場、そして山下・田村・守屋の3人でのダンスという、『自業自得』の1列目フォーメーションを活かした仕掛けで3人のダンススキルを見せつける。日ごろはキュートな笑顔で愛嬌を振りまいている田村や守屋にも、こんな風に格好よく踊れるシーンがあるとそのギャップでよりBuddiesを魅了してしまう。
それ以後も、3期生と2期生の期ごとによるダンストラックが、まるでダンス対決のように連続するシーンもあり、『港区パセリ』のBACKSメンバーによるダンストラックも各メンバーのキレを見せつける。
ドーム公演は2期生・3期生全員参加しての『Addiction』で開幕したが、ダブルセンターの山﨑天と藤吉夏鈴のしなやかで情感豊かなパフォーマンス力に引っ張られるように、どのメンバーも気迫や実力でもってファンを魅了する瞬間があった。そう思わせるほど、場内の万単位の観衆を陶酔させる時間が流れていた。
そして東京ドーム公演から新演出となった『流れ弾』『UDAGAWA GENERATION』もさらに観る人の意表を突いた。『流れ弾』では曲の終盤に何の前触れもなく突然メインステージにアクロバットダンサーが登場し、曲センターの田村が放つ銃弾に撃たれて落下するような演出で、楽曲のコンセプトをさらに視覚化して伝えた。
『UDAGAWA GENERATION』においても、まずステージ上に現れたのは本物のサーカス団。
エアリアルや大車輪など人間離れした曲芸に続いて、ピエロが鞄を開けばそこから森田ひかるが登場し、『UDAGAWA GENERATION』の曲披露へとなだれ込む。櫻坂46以外のアクターたちを堂々とステージに登場させる挑戦をしつつ、曲の世界観とショーとしての完成度を同時に高めて、Buddiesに提示してみせる仕掛けだった。
もともとこの11枚目シングル『UDAGAWA GENERATION』は、今年2月のリリースの時点でファンクに寄せた曲調や、サーカスをイメージしたMVがそれまでの表題曲に比べると意外性に満ちていた。櫻坂らしさの一翼を担ってきたクールさよりもファンキーでにぎやかな路線を取り、振り付けも楽屋で楽しく騒いでいるかのようなコミカルさが込められた。そうしたコンセプトを、ドームという広い空間でいかにスペクタクルに見せるか、計算した上での一連の演出だったようだ。
そして“れなぁ砲”も生のライブで本当に再現してしまった。MVの中で守屋が大砲の発射に合わせて吹っ飛ぶシーンが『れなぁ砲』と呼ばれて話題になり、ドームではステージの上に映像同様の大砲まで設け、守屋がフライングでステージ上を飛んでいった。
もちろん、東京公演から新たに加わった4期生9人も見過ごせない。やはりMCやライブ中の予告めいた仕掛けも一切なく、ムービングステージに乗って登場すれば花道を真っ直ぐ歩いていき、メインステージで『死んだふり』を披露した。新メンバーをあたたかく見守るというよりは、大舞台で先輩に負けない堂々のパフォーマンスを見せた9人に圧倒されたような空気感に包まれていた。さらに『I want tomorrow to come』では、6月のFirst Showcaseでもチャレンジしたこの曲を先輩メンバーのフォーメーションの中に途中から加わり、一緒にステージを目一杯使って踊る演出でまたもBuddiesを沸かせた。
2025年の櫻坂46は、『UDAGAWA GENERATION』に『Make or Break』とシングル2作をリリース、アルバム『Addiction』をリリース、最後の1期生小池美波の卒業と4期生の加入、4月からの全国ツアー、さらにツアー期間と『Addiction』『Make or Break』のリリースが重なっただけでなく、忙しい合間をぬって米ロサンゼルスでの『Anime Expo 2025 』ステージに出演と、まだ8か月しか経っていないが極めて濃密な日々を過ごしてきた。そんな8か月の軌跡が二大ドーム公演に結実したかのようで、最高を更新し続けてほしい、というBuddiesの期待に十二分に応えたものだっただろう。
京セラドーム大阪での千秋楽でキャプテンの松田里奈は「こんなに熱くて最高なグループをもっと沢山の方に知ってほしい」「日本で知らない人がいないくらい大きなグループになりたい」と宣言した。このツアーでの斬新な演出や進化は、それが決して夢物語ではないと信じるに値するものであり、サプライズ発表された13枚目シングルや来年4月の5th YEAR ANNIVERSARY LIVEにも期待が高まる。この全国ツアーで見せつけたグループの力は一時の勢いやフェイクではない。2025年を駆け抜ける櫻坂46の33人は、これからもそれを証明してくれることだろう。
(※山崎天の「崎」は正式にはたつさき)
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