【関連写真】JAPAN JAM 2025で圧巻のステージを披露する平手友梨奈【3点】
観客の男女比は「3:7」ほどで相変わらずの女性人気ぶりだが、親子連れもおり老若男女にファンがいるという印象だ。フェス同様、熱心な海外ファンも見受けられた。
ライブ1曲目には、聞き馴染みのあるセリフが流れ、場内がいっせいにどよめく。平手がグループを離れた後、欅坂46のラストシングルとしてリリースされた『誰がその鐘を鳴らすのか?』だ。歌い出しで姿を現した平手は欅坂46のエンブレムが付いた同曲の衣装らしき制服を身に纏い、オリジナルダンスで華麗に舞った。
続いて白い椅子に腰を掛けると、欅坂46のデビュー曲『サイレントマジョリティー』をアコースティックバージョンで披露。10年経ち24歳になった彼女の低音はより深く、歌詞に説得力を持たせていた。
一転して、乃木坂46の名曲『きっかけ』のカバーでは、美しい高音のファルセットで魅了した。欅坂46デビュー年に音楽特番で本家とコラボしたこともある同曲では、前に踏み出す決心を歌っている。
序盤の坂道楽曲で観客は嗚咽交じりに号泣したり、周囲と歓喜し合うなど、場内には様々な感情が入り乱れた。
長い幕間を挟み、現事務所でのソロ曲パートに移ると、ステージのセットである大きな時計の針が進んでいた。抱えてきたグループやアイドルへの想いを彼女なりに昇華させたようにも見える。
4曲目『bleeding love』では同曲衣装にサングラスをかけ登場。曲間で腰に手を置きステージを左右に練り歩く様は完全にモデル然としていたが、バンドメンバーに絡みに行くと優しい笑顔を見せた。
サングラスをはずし、ラップ調の柔らかいミディアムバラード『shooting star』では、甘く囁くような歌声で幻想的な世界にいざなう。続くラブバラード『ALL I WANT』では、あぐらスタイルで曲に没入し切なさを響かせた。
短い幕間を挟んで、真紅のノースリブドレスで現れた平手は、山口百恵の『ひと夏の経験』をカバー。こちらもデビュー年に音楽特番で歌唱したことがあるが、大人になった彼女はより一層本家に近い色気と妖艶さを醸し出していた。
雰囲気がガラリと変わり、平手の切れ味鋭いハイキックから始まる少年隊の『仮面舞踏会』カバーに突入。グループ時代なら「オーハイ!」のコールが飛ぶリズムのBメロでは、「パン、パパン」と手でクラップし「フー!」と拳を突き上げるいわゆる“PPPH”を観客に先導してやってみせるなど、オリジナルへのリスペクトを感じさせる。山口百恵カバーでは極めて女性的な佇まいだったが、『仮面舞踏会』を始めライブの随所で旧ジャニーズ的なイケメンぶりを炸裂させるあたりが、「性別:平手友梨奈」と呼ばれる所以だ。
ロック調の『俺らの未来』からは赤いジャケットを羽織り、マフラータオルで汗を拭き飛び跳ねながらそれを高くかざすと、観客も応えるようにタオルを振り回す。原曲よりアップテンポにアレンジした中島美嘉の『GLAMOROUS SKY』カバーでは、「オイ!オイ!」の掛け声に合わせヘドバンを見せるなど会場をヒートアップさせていく。
締めはフェスでも大盛り上がりだった『イニミニマイニモ』。
アンコールを挟んだ後、暗く濃いアイシャドウを目元に付し、椅子にしばられたような姿勢で拘束着を纏った彼女が「僕がいなけりゃ それでいんでしょ」とダークに歌いかける。この5日後にリリースされた新曲『I’m human』だ。歌詞には他にも悲痛なワードが散りばめられているが、24歳の彼女自身が作詞したという事実に胸を締め付けられる。
曲が進むにつれ歌唱は感情がむき出しになり、激しいコンテンポラリーダンスに乗せ、むせび泣き苦しむような叫び声も漏れてくる。本編最後に笑顔だった彼女からは考えられない変貌ぶりだ。
欅坂46時代の最後のブログはポエム的で、いつか平手は作詞をするのだろうと感じていたが、当時の文章の終わりは「僕は自分に正直に生きたい。」だった。だが、同曲は「誰も知らないとこで落ちるから」で結ばれており対極的だ。一つの劇のような圧巻のパフォーマンスの後、そのまま幕が降り、万雷の拍手の中でライブは終演となった。
後日公開された『I’m human』のMVでは、「社会問題への問題提起」として、男女の仲間で掘った穴の中、ターゲットが入れ替わって平手扮する女性が土をかけられるという描写がある。集団心理の恐ろしさに加え、誹謗中傷への恐怖を視覚的に、残酷に訴えかけているように見える。
アイドル、モデル、俳優といった全ての活動を糧に進化を続けるアーティスト・平手友梨奈が、今後どんな表現で魅せてくれるのか、ますます目が離せない。
【あわせて読む】6年ぶりの帰還…平手友梨奈が『JAPAN JAM』で見せた現在地と、“投げ銭”初ソロワンマンへの展望