【写真】登美子(松嶋菜々子)が涙ながらに本音を吐露『あんぱん』第97回【5点】
そんな『あんぱん』には、これまで豪華俳優陣が数多く出演してきた。阿部サダヲや竹野内豊、二宮和也をはじめ、後半にはMrs.GREEN APPLEの大森元貴も登場。現在でも、主演クラスの俳優たちが出演し、ドラマを盛り上げている。
中でも異彩を放ち続けるのが、ベテラン女優の松嶋菜々子だ。松嶋は嵩の母親・登美子を演じ、初期から登場。この登美子が、物語をおもしろくする存在として人気を集めている。登場した当初は、父親を亡くした子どもたちを置いて再婚するなど、自由奔放な行動で「毒親」だとSNSで賛否を呼んだ。その後も重要な場面で登場してはかき回し、『あんぱん』に欠かせない存在となっている。
登美子が注目されたのは、嵩の幼少期を描いた序盤だ。父親を亡くし柳井家に居候するため御免与町に引っ越してきた嵩と同居していたが、突然再婚を決めてひとりで旅立ってしまう。母親の元を訪ねてきた幼い嵩を追い払うなど冷たい仕打ちも見せ、視聴者から反感を買った。
この時の登美子を松嶋は、空気を読まない雰囲気を表情やセリフ回しで見事に表現。嵩の叔母で育ての親である柳井千代子(戸田菜穂)とのバトルも見ごたえがあり、平和な展開が続いていた『あんぱん』を大いに引っ掻き回した。
さらに、出征が決まった嵩の前に突然現れ、「嵩!死んだらダメよ!」と大絶叫。周りから「非国民」と罵られながらも、「絶対に帰ってきなさい!」「逃げ回ってもいいから、卑怯だと思われてもいい!何をしてもいいから生きて帰ってきなさい!」と涙ながらに叫び、『あんぱん』の中でも1、2を争う名場面を生み出している。この時の登美子はそれまでと打って変わって、戦争に行く息子を心配する母性が全開。深い愛に満ちた母親の表情を見せている。毒親を演じていた松嶋が、それまでの雰囲気を残しながら、母としての悲哀を表現したのは見事だと言える。
その後もたびたび登場し、のぶと嵩が東京で結婚してからは、姑の顔も見せ始めている。これまで自分の期待を裏切ってきた嵩が、老舗の三星百貨店へ就職が決まると大喜び。
登美子は『あんぱん』で序盤から登場し続ける数少ないキャラクターの1人だが、その時々で異なる魅力を放つ奇想天外なキャラクターを、松嶋は丁寧に演じている。数々の名作ドラマや映画で主演を務め、近年は母親役も多く演じてきた松嶋だからこそ作り上げることができたのだろう。
現在も登美子は、のぶと嵩とともに物語を盛り上げ続けている。クライマックスに向け、今度はどんな魅力的なかたちで感動を届けてくれるのか。松島の名演技を最後まで見届けたい。
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