元戦隊ヒーロー俳優中心の3人組ムード歌謡コーラスグループ「純烈」。現在、2024年11月25日に開催した初の武道館公演『純烈魂』までの道のりを、さまざまな過去を抱えたファンと共に描き出す異色の映画『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』が公開中だ。
本作では売れない時代やメンバーの脱退加入など、数々の苦難を乗り越えて華やかな大舞台に辿り着いたメンバーたちの姿を描いている。映画では詳細に描かれなかったリーダー酒井一圭が純烈を結成した経緯や、ブレイクしたきっかけに肉薄した。(前後編の後編)

【写真】ドキュメンタリー映画場面カット&純烈リーダー・酒井一圭の撮り下ろしカット【9点】

――純烈が売れない期間、メンバーの給料はどうしていたんですか。

酒井 白川と小田井さんは給料制だったんです。毎月、僕が嫁に渡していたお金を、「すいませんけど今月から収入はゼロです」と引き取って渡していました。白川はリードボーカル、小田井さんは最年長だから、「このお金を二人で分配してください」と。それによって二人も「酒井がそこまでやってくれるんだ」と意気に感じてくれた。それで残りのメンバーには「あいつら二人は給料制やから、俺らは給料ゼロや。その代わり全てのおひねりは4人で分配するよ」と。そしたら若いメンバー3人も「リーダーが身銭を切って腹を括ってやってんねやから、ついていってみようか」とついてきてくれたんです。

――結束感が強くなったんですね。

酒井 今の会社に入った2014年に、全員一律15万という状況が整って、そこからみんなバイトじゃなくて、純烈だけの活動になりました。


――どん底の時期でも、売れる自信はあったんですか?

酒井 あったあった。だってムード歌謡のマーケットは確実にあるし、そこに芸能界は見向きもしていないことが分かっていたので、完全にブルーオーシャン。売れるまでコツコツ信用と信頼をつかんでいくしかない。まあコツコツのテンポは速くしましたけどね。人生でそこまで自分を追い込んだことは初めてでした。

――そうした積み重ねが実を結び、2018年に9枚目のシングル「プロポーズ」がオリコン演歌・歌謡曲ウィークリーチャート1位を獲得するなどのブレイクに繋がり、その年に念願だった紅白初出場を果たします。

酒井 僕としては順当な道のりでしたが、2018年しか紅白出場のチャンスはなかったと思いますし、全てがええ方向に行ったなと思います。

――ターニングポイントとなる出来事はありますか。

酒井 常にターニングポイントですよ。今のレコード会社に拾ってもらったのもデカいし、当時のマネージャーが山本(浩光)さんになったのもデカい。山本さんにマネージャーやってくれへんかってお願いしたのも僕でした。

――山本マネージャーに白羽の矢を立てた理由は何でしょうか。


酒井 芸能界で演歌・歌謡曲を支えている重鎮の人たちと仲良くなりたいけど、普通だったら相手にされませんよね。でも山本さんみたいに2メートル近くあるデカいおっさんがおったら、「なんだ君は」ってなる。ちっちゃい人は、デカい人を連れて歩きたがりますしね。お相撲さんのタニマチさんがそうじゃないですか。自分はそんなに食べられないけど、たくさん食べる人を見て楽しむ。そういう意味で山本さんはうってつけだった。純烈のスタッフにイケメンはいらないんですよ。コワモテで奇面組みたいにインパクトのある人のほうが、純烈のことも覚えてくれるんです。メンバーもそうですけど、スタッフも自分で精鋭を集めて、桃太郎やドラゴンクエストみたいなもんです。

――初めて紅白歌合戦に出場されたときのお気持ちはいかがでしたか?

酒井 そのときは連続出場なんて全く考えていなくて、素直に「なんて素晴らしい舞台なんだろう」と。ところがサブちゃん(北島三郎)やサザンオールスターズと一緒のステージに立って、最高の気分を味わった矢先に友井のスキャンダルですわ。でもめげずに、負けてたまるかという気持ちでしたね。


スキャンダル後にビートたけしさん、とんねるずダウンタウンといった人たちが純烈を番組に呼んでくれて、「頑張れ!」って応援してくれました。そのおかげでツアーの客席は、純烈のファンじゃない人たちまでいっぱいいたんですよ。「ワイドショーの謝罪会見を見てきた」「あなたたちは何も悪いことはやってないんだし、10年以上に渡って応援してくれているファンもいるんだから、2年連続で紅白に出ないと嘘だよ」ってエールを送ってくれる方々がたくさん来てくれたんです。不思議なもんで、紅白で純烈は有名になるんですけど、あれだけ1週間以上ワイドショーでスキャンダルを報じてくれると、めちゃくちゃ知名度が上がるんです。だから紅白で純烈を知った人より、スキャンダルで知った人のほうが多いぐらいでした。

――すぐにスキャンダルのほとぼりも冷めたんですか。

酒井 最初は「ご心配をおかけしてすみませんでした」って言いながらコンサートをやっていたんですけど、夏ぐらいには「そんなんいらんねん」って空気感で。芸能界の皆さんも、みんなが応援してくれる状況になって、これはリーダーとしても謝ったらあかんな、もう十分謝ったなと思ったんです。そこからは「2年連続で紅白に出られるように頑張ります」と頭を切り替えました。そしたら、ほんまに2年連続で紅白が決まって。芸能界は足の引っ張り合いというイメージもあるかもしれませんが、僕の中では情に溢れる芸能界だなということを感じました。2年連続紅白出場が決まった後、メンバーに言ったのは、「みんなに助けてもらっての2年連続だから、俺らも誰かを助けるまでやめられへんぞ」って檄を飛ばしました。
それが2022年にダチョウ俱楽部とコラボした紅白に発動するのよ。つくづく芸能界は持ちつ持たれつの世界ですね。

『純烈ドキュメンタリー 死ぬまで推すのか』
2025年9月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか、1週間限定上映中

「純烈」酒井一圭 白川裕二郎 後上翔太
岩永洋昭 林田達也 小田井涼平 スーパー・ササダンゴ・マシン 小池竹見

ナレーション:今林久弥 プロデューサー:高根順次 監督:岩淵弘樹
配給:NAKACHIKA PICTURES 企画:三角フィルムズ

公式サイト:https://junretsu-film2025.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/junretsufilm2025/
公式X:https://x.com/junretsu2025

【前編】純烈リーダー酒井一圭が明かす敗者復活の物語「みんな俳優業を続けても廃業するだけだった」
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