【写真】3年ぶりにアニメ映画で主演を務めた原菜乃華の撮り下ろしカット【4点】
『不思議の国でアリスと -Dive in Wonderland-』は、原にとって、2022年に19歳で挑んだ『すずめの戸締まり』以来、3年ぶりのアニメ映画での主演。就職活動中で人生に迷っていた大学生の安曇野りせ(原)が、亡き祖母が遺した招待状に導かれて“不思議の国”に入り込んでしまう。「不思議の国のアリス」さながらのこの空間で、りせとアリス(マイカ・ピュ)が奇妙な冒険を繰り広げるというストーリーだ。
――まずは、今作のオファーを受けた時の気持ちを教えてください。
原 シンプルに、驚きでした。『すずめの戸締まり』の時に、プロの声優さんのすごさやアフレコの難しさを体感して、「きっともう声のお仕事はないかもしれないな」って思っていたんです。だから嬉しかったですし、同時に「大丈夫なのかな」っていう大きな不安もありました。
ただ『すずめの戸締まり』でお世話になった音響監督の山田陽さんと今回もご一緒することができて。「私にできるでしょうか?」と色々相談したら、山田さんが本当にさらっと「いや、原さんは大丈夫でしょう」って言ってくださって。私の良いところも悪いところも全部見てくださっている方なのですごく安心できて、いい意味で肩の力が抜けたのを覚えています。
――『不思議の国のアリス』や、安曇野りせへの印象はいかがですか。
原 (主役が)「アリスじゃないんだ」でまたびっくりでした(笑)。
――りせとしては、ラップで気持ち吐露するシーンもあります。
原 りせは流されやすい子で、自分に自信がなくて、SNSに囲まれながら生活しているからこそ、いつの間にか自分の本当の気持ちがわからなくなってしまう――私の周りの友達からも就活のリアルな話も聞くので、りせのことは若い人にはいっぱい共感してもらえると思います。彼女のセリフに「みんなと同じようにやってるのに、うまくいかないんだよね」というものがあって、すごく共感しました。
――原さん自身も、芝居などで「うまくいかない」という経験は多かったのでしょうか。
原 「困難を克服してきた」「乗り越えられた」という感覚もないんですよね。オーディションに落ちたり、お芝居が上手くいかなかった時も、りせのように「もうわかんない!どうしよう!」ともがきながら生きてきたと思います。基本的にネガティブです(苦笑)。
――ネガティブというと、以前のインタビューで「自分の声が嫌いだった」と話されていました。
原 小さい頃から、自分の声が特徴的ですぐにわかってしまう子でした。「なんか人と違うのかもしれない」って、ずっとコンプレックスで、邪魔だなって思うことすらありましたね。でも、『すずめの戸締まり』の時に新海誠監督が私の声をすごく褒めてくださって、それがきっかけで、「特徴があるってことは個性なんだ」とポジティブに思えるようになりました。アニメもたくさん見て発声を勉強して、お芝居の現場に活かしてみたら「この声、悪くないかも」と思えてきて。ようやく自分の声を好きになれた気がします。
――するとこの作品でも、りせとしての芝居を楽しめたと。
原 そうですね。私の声は少し高い声で早口で話す癖があるので若く思われるのですが、基本的に自由にやりつつ、山田さんから「『すずめの戸締まり』とは違う原さんの声が聞きたいです」とお話があって、大人の女性っぽくゆっくり低い声で演じてみました。りせが身体を激しく動かすシーンでは話すスピードや息づかいも速くしてみたり、3年前の経験を活かせたと思います。
――声優と俳優、それぞれの現場を経験して気づいたことはありますか?
原 私、アフレコの空間が好きなんだなって気づきました。子役の頃から現場ではカメラに囲まれて、たくさんの人がいるのが当たり前で、それはいい意味で緊張感を与えてくれていたんですが、アフレコではマイクの前に私1人だけです。目の前には台本とモニターとマイクしかなくて、指示もイヤホンで聞きます。
――陶芸のよう、というのは?
原 集中していると、自分で自分のお芝居の細かな違いにも気づけます。「今、さっきと若干ニュアンス違ったかも」とかも気づいて、ブースの中でもああでもない、こうでもないと試してみるのが、陶芸でお皿を作っているかのようでした。こんな風にりせの声やキャラクターを大切に作りこめて、何より大好きなアニメの現場に久しぶりに携われたことが幸せです。技術もまだまだですが、これからも声優をさせていただけるのであれば、精一杯準備して臨みたいなと思ってます。
――そしてアニメ好きな原さんとしても、この作品の見どころをお聞きします。
原 篠原俊哉監督が描くアリスのワンダーランドの世界がとにかくかわいくて、魅力的で、大迫力です。おなじみの白ウサギがタイパを気にしていたり、VRゴーグルをつけたキャラクターがいたりと、現代的なアレンジもすごく面白いんですよ。子どもから大人まで、観る人の心に寄り添ってくれるような、温かい作品です。りせを通して、皆さんも一緒にワンダーランドの世界に飛び込んでいただけたら嬉しいです。
▽原菜乃華 はら・なのか
2003年8月26日、東京都生まれ。子役で芸能界入りし、2017年に『はらはらなのか。
【後編】子役から大河・朝ドラへ、原菜乃華が明かす役者を続ける理由「ネガティブだからこそ頑張れる」