【写真】木村文乃主演、木曜劇場『愛の、がっこう。』 撮影カット【4点】
愛実とカヲルの行方に心が奪われつつも、社会的な問題にも目を向けさせてくれる本作のプロデューサーを務める栗原彩乃氏に、制作するうえでの思いについて話を聞いた。
学がないためにホストしか働き口がなかったカヲル、ホストにしか自身の本心を出せなかった女子高生・夏希(早坂美海)など、本作ではホストやホストクラブに居場所を求めた若者の姿が描かれている。ただ、ホスト関連の問題も少なくない昨今、ホストという職業を扱ううえで意識した点を聞くと、「主人公をはじめ、基本的に登場人物はホストクラブに否定的です。また、『THE JOKER』もトラブルなどを受けて“閉店”を選択するなど、作品全体が放つ印象として『ホストクラブは良いもの』とはならないように気を付けました。その一方で、世の中にはカヲルのように、特性や家庭環境の影響により、生きていくためにホストという職を選ぶ人もいます。『カヲルにはホストという仕事が必要だった』ということは示しつつ、ホストクラブを肯定的に描かないように注意しました」と明かした。
ホストを取り扱うことに対する視聴者の反応については「放送前は否定的な声は少なくなかったです」という。しかし放送を重ねる中で、視聴者の反応に変化があったようで、「本作が『教師とホスト、すれ違うことすらないはずの2人が出会い、分断や偏見を愛の力で乗り越えようと懸命に生きる姿を描く恋愛ドラマしてな恋は声も増え、図が視聴者の方にに届いているうでてうれしかたです安心しました」
◆テレビは脚色する
「発達性ディスレクシア」も丁寧に描かなければいけない題材ではあるが、どのように描いていっているのか。
「本作には発達性ディスレクシアの第一人者と言われている筑波大学元教授の宇野彰さんに監修として参加してもらっています。また、宇野さんから紹介してもらった当事者の方々から話を聞かせていただくと、発達性ディスレクシアの症状は人によって千差万別。カヲルの症状もいろいろある中の1つでしかないことを知りました。『ディスレクシアならこうなる』ということはないため、当事者を傷つける、また偏見につながる表現にはならないように気を付けました」
また、発達性ディスレクシアを描く際には、宇野氏からの“念押し”もあったと口にする。
「宇野さんからは『テレビは脚色するので、気をつけてほしい』ということは口を酸っぱくして言われました。過去にディスレクシアを取り上げたテレビ番組では、“ディスレクシア=実際には有り得ないぐらい乱れた字を書く”みたいな描き方だったことがあったそうです。ディスレクシアが“記号的に”ならないように、それでいて視聴者に伝わるようにバランス調整は意識しました」
◆クセの強い登場人物ばかりなワケ
描き方で言えば登場人物の言動も気になるところ。愛実はストーカー行為で警察沙汰になった過去があり、愛実の父親・誠治(酒向芳)はモラハラ的な言動を繰り返している。クセが強く、視聴者からの共感を得られにくそうな登場人物が多い理由として「脚本を務める井上由美子さんは登場人物を多面的に描くことに長けていらっしゃいます。井上さんが生み出す人物は良いところも悪いところも包み隠さずに出せる人間臭いキャラばかりなので、そこは大切にしたかったんです」と答える。
「また、昨今のドラマのニーズとしては品行方正で、悪いやつに喝を入れてくれるような正義のヒーローが求められている印象です。もちろん、そういった作品を見てスカッとなる気持ちはわかりますが、正しさを押し付けられるような息苦しさを感じる自分もいました。
ただ、“聖人君子ではないけど愛されない登場人物”になるリスクもある。とりわけ愛実に対する異常な執着を見せている川原洋二(中島歩)はかなり嫌われそうだ。とはいえ、中島の演技力もあり、まさに聖人君子ではないけど愛すべき登場人物になっている。中島の演技については「絶妙にコミカルで、そこが憎めなさを生み出している」と振り返る。「川原も1、2話だけ見ていたらムカついて仕方がないキャラだと思います。でも人には初対面では計り知れない一面があるし、時を経て成長もするし、長く一緒にいると情が沸いてくる。深く付き合えばそこまで嫌な奴ではないかもと思えることがある。キャラクターの変遷を楽しめるのは連ドラの醍醐味だと思います」と語った。
また、中島と言えばNHK連続テレビ小説『あんぱん』(総合・月曜~土曜8時ほか)で主人公・のぶ(今田美桜)の夫役・若松次郎を演じており、洋二とのギャップに驚いた視聴者は少なくない。そのことについて中島は「短い期間にいろいろな役をやらせてもらい、いろいろな面を見られたのは役者冥利に尽きる」と口にしていたそうだ。
最後にいよいよ最終回を迎える本作ではあるが、どのように見届けてほしいのか。
「『愛は格差を超えられるのか?』ということをテーマにやってきたので、その問いに対する制作側の1つのアンサーを描いています。
単なる恋愛ドラマにとどまらず、社会問題をはじめ、人間が持つ面倒臭さ、もとい愛らしさに光を当ててきた『愛の、がっこう。』。聖人君主ではないけど愛すべき登場人物がどのような結末を迎えるのか楽しみにしたい。
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