【写真】冒頭キスシーンでスタートした『ばけばけ』第1回【5枚】
第113作目の連続テレビ小説『ばけばけ』は、松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語だ。
記念すべき初回放送の冒頭では、ヘブン(トミー・バストウ)が、トキ(高石あかり)のおでこにキスをする場面が登場。朝ドラの1話でキスシーンというのはかなり挑戦的だが、その狙いや効果はなんだったのだろうか。
台本では<手の甲にキスをする>と書かれていたが、演出の村橋氏は「現場の判断でおでこにしました」と話す。実は冒頭の二人は、既に夫婦として長年連れ添っているという設定。「それでもずっと新鮮な関係が続いた夫婦だったということを伝えたかった」と言い、「(キスをされて)高石さんが本気で照れていますよね。手の甲だったらああいう芝居にはなっていなかったと思います」と、初々しい夫婦像を“おでこキス”によって演出したのだという。
制作統括の橋爪氏も「『ばけばけ』は、大きく見るとラブストーリーだと思うんです。1話の冒頭にキスシーンを入れることで『これから2人のラブストーリーが始まります』と示せたかなと。怪談がただ怖い話とか面白い話というだけではなくて、2人の愛の言葉みたいに聞こえると嬉しいなと思っています」と、キスシーンに託した思いを語った。
そんなトキとヘブンのキスシーンを「朝よ!夜だけど!夜だけど朝なのよ!」とメタ視点で見守っていたのが、阿佐ヶ谷姉妹が演じる蛇(渡辺江里子)と蛙(木村美穂)だ。
橋爪氏は蛇と蛙について、「『ばけばけ』はコメディタッチではあるんですが、時代特有の辛いことや大変なことがたくさん起こっています。そこを明るく、ちょっと応援してくれるような、スパイスになる存在があったらいいなと考えました」と話す。
物語のモデルとなった小泉八雲さん・セツさんの家の庭には、実際に蛇と蛙が住んでおり、二人とも大変可愛がっていたのだとか。「モデルのお二人に縁のある蛇と蛙が、ドラマを見守ってくれると嬉しいなと思って選びました」と、“見守り役”へのこだわりを明かしてくれた。
第1話はその後、オープニング映像を挟んで、トキの子ども時代が映し出される。オープニングには、ポスター撮影を担当した川島小鳥氏が撮影した写真が採用されており、ハンバート ハンバートが歌う主題歌「笑ったり転んだり」と共に、二人の生活が垣間見える構成になっている。
橋爪氏は、オープニングを写真構成にした理由について「ハンバート ハンバートさんが、とてもドラマに寄り添った曲を書いてくださって。ドラマと一緒に聞くことで、より曲の良さが出ると思いました。なので、曲がゆっくり聴けるようなオープニングにしたいなと思い、静止画を使うことにしました」と話す。
オープニングに使われている写真は、松江市内の5.6ヶ所を巡りながら1日かけて撮影されたもの。「トキとヘブンが結婚したあとの日常、松江を散歩している1日」をコンセプトに、「二人だったらきっとここを通ったよね」「ここを通ってる時はこんな格好でこんな話をしただろうね」と、想像を巡らせながら撮影が行われたのだという。
さらに「撮影のときは、高石さんとトミーさんと小鳥さんだけに入ってもらって、スタッフは見えないところに隠れていました」と裏話も。限りなく自然なシチュエーションで撮影されたからこそ、二人のナチュラルな表情が引き出されたオープニング映像に仕上がった。
そして、トキの子ども時代を演じたのは、本作が初の朝ドラ出演となる福地美晴。応募総数674人の中から、オーディションで選ばれた逸材だ。橋爪氏は福地について「10歳でここまで台本が読めるんだと驚きました。台本を表現する力もありましたし、完成されたお芝居かつ可愛らしさも持っているなと思います」とその演技力を絶賛。
村橋氏も「高石さんはセリフがないところでも自由に芝居をする方なので、そこにつながるような子がいいなと思っていました。福地さんはセリフをしっかり覚えてきたうえで、それに捕らわれず大人たちの芝居にちゃんと反応して演技を返していたのが印象的でした」と起用に至った理由を明かしてくれた。
2025年度後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は、9月29日(月)よりスタート。第1回放送は「NHKオンデマンド」「NHKプラス」(10月1日からは「NHK ONE(新NHKプラス)」)にて繰り返し視聴できる。
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