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令和の今、「モラ男」という言葉がたびたび注目を集めている。モラ男の“モラ”は“モラルハラスメント”の略で、相手を支配しようとしたり、見下した態度を取ったりする男性を指す言葉である。だが、今作で竹内が演じる勝男は、近年ドラマに描かれてきた典型的なモラ男とは、少し様相が異なるのだ。
最近、印象的だったモラ男といえば、6月期ドラマ『夫よ、死んでくれないか』(テレビ東京)で塚本高史が演じた榊哲也、そして7月期ドラマ『愛の、がっこう。』(フジテレビ)で酒匂芳が演じた小川誠治。どちらも高圧的な態度で妻を委縮させ、相手の意見を聞こうともしない。まさに誰が見ても分かる、典型的なモラ男であった。
一方で勝男は、一見誠実で爽やかな「モテ男」である。大学時代にミスターキャンパスで優勝し、大手企業に就職。学歴も人望も申し分なく、長年付き合っている恋人までいる。外から見れば理想の男性像に違いない。
勝男のモラハラ性は、家庭という閉じられた空間でこそ発揮される。「料理は女性の仕事だ」という固定観念、アドバイスに見せかけた文句、彼女に「女の子らしさ」を求める横暴さ。夏帆演じる恋人・鮎美は、帰宅した勝男を玄関で出迎え、スリッパを出し、脱いだ上着を受け取る。一昔前なら「良い奥さん」とされた光景も、令和の今となってはどこか異様に映る。
彼は束縛も暴力も暴言もしないが、その穏やかさの裏に無自覚な支配欲が潜んでいるのだ。恐ろしいことに、そういった“隠れモラ男”は意外と身近にいるのである。
プロポーズに失敗し、鮎美に振られたことをきっかけに、勝男はこれまで女性の仕事だと思い込んでいた料理に挑戦する。彼女が自分に与えてくれていた「当たり前」が、決して当たり前ではなかったと気づいた勝男は、自分を変えるために行動を起こしたのだ。「失って初めてありがたさに気づく」とはまさにこのことだが、長年染みついた価値観のクセは、そう簡単に変わらないだろう。
勝男には、まだ気づけていないことがたくさんある。手作りのめんつゆはすぐに傷むし、人参は一袋買うと一人暮らしでは使いきれない。
これまでドラマで描かれてきたモラ男の結末は、法で裁かれたり、妻に縁を切られて破滅したり、あるいはギリギリのところで改心したりとさまざまだ。では、令和のモラ男・勝男はどんなラストを迎えるのか。そして、モラ男を本当の意味で変えるものとは一体何なのか。その答えを、最後まで見届けたい。
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