見取り図・盛山の書籍『しばけるもんならしばきたい』(幻冬舎)が10月4日に発売された。2020年5月から約5年にわたって「小説幻冬」で連載していたエッセイをまとめた盛山初の著書で、活躍の場を広げてきた盛山の歴史を知ることができる。
また、撮り下ろしのグラビア8ページにはサッカーをする様子や敬愛するブラックマヨネーズ吉田・吉田敬のエッセイを読む様子なども収められている。今回は、著書発売に先立って盛山にインタビューを実施。後編では自己分析に加え、どっぷり浸かっているサッカーの話を聞く。(前後編の後編)

【写真】初の著書が発売された見取り図・盛山の撮り下ろしカット【9点】

――盛山さんの内面についてもお伺いします。NSCに入った当初は「勘違いしていた」という話もありましたが、芸人になって性格に変化はありましたか。

盛山 始めたときはほんまに勘違いしていて、俺がめっちゃおもろいと思っていたんです。でも、今はいい意味で勘違いが解けてきて、年々自信をなくしていますね(笑)。自信家ではないんで、日々考えます。

――番組に出て反省されたり…ということでしょうか。

盛山 それもあります。でも、その時期ももう抜けたかもしれないです。落ち込みすぎてキリがないんで。
自己採点が厳しくて、70点でも落ち込むみたいな。若いときは1時間ずっとスベっていたのに、「90点くらいやな」と思ったり自己採点が甘かった。若いときに勘違いをしていたのが、だんだんシビアになってきた感覚です。

――冷静にご自分を見るようになったんですね。

盛山 はい、“向き不向き”がわかってきましたね。できることとできないことがあるんで、できないことはそこまで力入れなくてもいいのかなと。仕事はありがたくやらせいただきますが、申し訳ないときもあるので、楽しくできたらいいですね。自分の機嫌を取りながらという感じですね。

――「芸人をやっていてよかった」という瞬間はありますか。

盛山 同期と出会えたのはよかったです。NSCって「お笑い力が高められる」とかではなく、1年間40万円支払って同期を作りに行く、という感じでした(笑)。あとは、芸人はどんな場面でも面白いんで、めっちゃ嫌なことがあっても笑いにしてくれる。
それは助かりましたね。

――「陽キャラ」盛山さんらしい感覚です。

盛山 ほんまごめんなさいね、ルフィみたいで(笑)。でも「陽キャ」は、人に言われて気づきました。お笑い好きな人って、どのベテランにつくか、どのグループに属するのかめっちゃ分けたがるなと思って、最初はそれにビックリしました。こう思うのが陽キャなのかもしれないですけどね。だから、僕は「1軍」と「2軍」という見方はしないようにしています。僕も、陽キャだとしても1軍とか2軍ではなく、ただの明るいやつです(笑)。

――ただ、エッセイを拝読すると、異性に関しては自己肯定感が低いですよね。

盛山 エッセイにも書いたのですが、小学校の頃に忘れられない出来事があって。汗だくでクラスのマドンナと廊下でぶつかって、僕の汗がついて泣かれたんです。クラスでも問題になって、女子が集まって「盛山、謝りーや!」と言われて。
それがほんまに衝撃で、俺ってめっちゃキモイんやと。苦手意識はそこからかもしれないです。

――笑わせる立場でありながらも、女子に対しては苦手意識があったんですね。

盛山 めっちゃありました。高校のときなんて女子は俺で笑ってくれたことあるんかな(笑)。だから、ずっと男とつるんでいました。

――それから払拭された瞬間はあるんですか。

盛山 正直、苦手なもんは苦手ですね。自信がないから、いまだに「キモイって思われるかも」「息クサイかも」って思っちゃう。でも、もう結婚したから一生苦手でいいわと(笑)。

――ダイエット企画でボディメイクもされましたが…。

盛山 痩せたのに「私たちの盛山を返せ」とか言われて。
自己肯定感なんて上がんないですよ(笑)。「こんなに非難轟々なん?」と。トレーニングしたら自己肯定感上がるって聞いてましたけど、話ちゃいますやん!ってなりました。

――エッセイの中に何度も登場するのが盛山さんの楽しみであるサッカーです。その情熱はどこから来ているのでしょう。

盛山 ずっと草サッカーをやっていて、もはや草サッカー部ですよね。サッカー選手ってわかりやすくかっこよくないですか?寝る前とか、自分はハーランド(マンチェスター・シティ所属のFW)になったような想像をして興奮してます。

――ゴルフなど他のスポーツと比べて、サッカーはなかなかハードな趣味ですよね。

盛山 この2年で骨3回折って、肉離れもしてケガばっかりしています。選手やったら引退してもおかしくない(笑)。でも、それを凌駕するぐらい楽しいんですよ。ゴルフのような生涯スポーツと違って、サッカーは限界がある。
サッカーなかったらどうなっていたかわかんない。そこらへん裸で外走り回っていたかも(笑)。

――まさに生きがいになってますね。

盛山 今もずっと仲間とLINEでやり取りして、次いつできるかなと。これだけやっていると、生で観戦するのも楽しくなる。テレビだと「このスペース空いてるのになんで出さんねん」とか言うじゃないですか。でもスタンドの低い席とか、ピッチレベルになると、テレビと全然違って見えないですから。しかも、選手同士がぶつかったときの音が聞こえて格闘技のようで、すごいフィジカルなスポーツやなと感じられる。もう大人やのに自分がワールドカップでゴール決めるシーンとか妄想するし、どんな気持ちになるんやろう!!って。

――エッセイにも書かれていますが、ヨドコウ桜スタジアムで行われたエキシビジョンマッチでのイベントで実際にPKも決めました。

盛山 いやあ、脳汁ドバドバ出ました。M-1決まったときよりも出ましたね(笑)。
ほんまに震えるんですよ。僕はゲストとしてピッチに立っただけですけど、これがワールドカップやったらどんな気持ちなんやろと。しかも選手は芸人よりわかりやすく叩かれる仕事ですし、精神の強さどうなっているんやろとも思いますね。

――盛山さんにサッカーの印象もだいぶついてきましたね。

盛山 DAZNで番組もやらせてもらっていますし、認知されてきたのかスタジアムで子供にも寄って来てもらえるようになりました。僕も勘違いして、まるで代表OBのように「頑張ってプロになってね」とか言って。やばいやつかもしれん(笑)。

◆執筆は「めちゃめちゃ辛かった」

――改めて書籍の話をお伺いします。最初にオファーを受けたときの率直な感想はいかがでしたか。

盛山 やったことないんで楽しみでした。エッセイを読んだことも書いたこともないんで未知の世界でしたね。しかも最初は小説みたいなのを書こうとしていましたから。ずっと勘違いしていました。

――執筆の中での苦労はありましたか。

盛山 めちゃめちゃ辛かったかも。最初の何カ月かは楽しく書かせてもらっていたんですけど、だんだんエッセイってなんや?と思い始めて。テレビで話したエピソードはちゃうよな…とか思いながら、「エッセイならでは」を考えて…。それで他の芸人さんのエッセイを読んだら余計わからなくなってきて。他の仕事していてもエッセイのことがずっと頭にあるんですよ。『ラヴィット!』(TBS系)出てるときも、題材どうしようとか、メモっとこかなとか…いい辛さでしたけどヘビーでした。

――『しばけるもんならしばきたい』は、「なにかに怒る」が主題ですが、ちなみに今、しばきたいものはありますか?

盛山 えーっ、なんやろな…。いっぱいあるな。ちょうど昨日か今日くらいあったんよな…。そうだ。スーパーの売り場で子供が棚の豆腐をツンツンして、何個か穴も開いてるんですよ。でも親は軽く注意するだけでそのまま行ってしまって。しばいたろか!と。どうでしょう(笑)。

――まだ出てきそうですね(笑)。

盛山 最近、台風で乗っていた新幹線が止まって、5時間缶詰になったんです。そこでむっちゃ車掌さんにキレてるおじさんがいて。その時は「しょうがなくないですか」って、ちょっとだけ言いに行きました。みんな我慢してるし、ムカつくじゃないですか。ただ、帽子をものすごく深くかぶって言いましたが(笑)。

――盛山さんの「正義感」も垣間見えますね。では最後に『しばけるもんならしばきたい』は、どのように届いたら嬉しいでしょうか。

盛山 お渡ししている芸人にも言っているんですけど、ぜひ1冊、自宅のトイレに置いてください。入るたびに1章ずつ読んでほしいですね。小分けにして気軽に読んでもらえたら嬉しいです。

【前編】「地獄の下積みも青春やった」見取り図・盛山が語る“勘違いから始まった芸人人生”
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