コスプレイヤー、歌舞伎町・コンカフェ「Bisquedoll(ビスクドール)」のオーナーとして活動する輪湖チロル。表舞台で活躍する現在の姿からは想像がつかないが、幼少期は長野県の山奥で過ごし、自給自足に近い生活をしていたそうだ。
自ら「田舎」と語る地域から、どのようにして人気コスプレイヤーに至ったのだろうか。幼少期のことからコスプレに出会うまで、上京当時のことなどを振り返ってもらった。(前後編の前編)

【写真】経営者としても活躍している人気コスプレイヤー・輪湖チロル【6点】

――ご出身は長野県とのことですが、実家がりんご園を営まれているそうですね。

チロル はい。祖母と母がりんごジュースを手作りしていて、それを今私がプロデュースしているコンカフェ『Bisquedoll(ビスクドール)』でも1本1万円で販売しています。特別なパッケージには、祖母が描いてくれた小さい頃の私の似顔絵を使っているんですよ。

――実家の恵みが今の活動に繋がっていると。

チロル ありがたいことに、お店でもすごく人気で、すぐ売り切れちゃいます。実家がかなり山の中にあって、りんご園のほかにもヤギやニワトリを飼ったり、お米や野菜も自給自足に近い暮らしをしていました。

――とても自然に囲まれた生活だったんですね。

チロル 長野生まれではなく、小学校3年生までは東京に住んでいたので全く違う生活でしたが、東京にいた頃はあまり裕福ではなかったので、長野に引っ越してからのほうが楽しい思い出が多いです。犬と遊んだり、自然の中を駆け回ったりしていました。


――「輪湖」という苗字は珍しいですが、長野とは関係があるんでしょうか。

チロル はい。「輪湖」という苗字は、長野にある一つの地域に集まっているんです。そこにいる人たちの苗字は全員が輪湖で、私の家は輪湖の中でも力を持っている方で、本家的な感じでした。輪湖の人たちだけのお祭りもありましたね。

――ドラマのようなお話です。

チロル そうですね。地域によっては離婚したらいけないっていうルールがあるくらい、思想の強いおばあちゃんもいました。そういうしきたりがあるくらいの田舎に住んでいましたね。

――そんな中、コスプレやグラビアにはいつ頃から興味を持たれたんですか?

チロル 中学に上がってからアニメや漫画にハマって、憧れを持つようになりました。それで、中学校に通いながらメイド喫茶でバイトを始めたんです。

――長野にメイド喫茶があったんですね。


チロル 松本市にある数少ないメイド喫茶で働いていたんですが、経営がちょっとずさんで(笑)、お給料が出ないこともありました。でも、かわいい服を着て接客できるだけで楽しくて、お金をもらわなくても働きたいって思っていました。

――コスプレを本格的にはじめるようになったのはいつからでしょうか。

チロル 高校生では漫研(漫画研究会)に所属していたんですが、自作の漫画を即売会で売る機会があって、そこで「コスプレしてると本が売れる」って気づいたんです。それで本格的にコスプレを始めました。

――大学で美術の先生を目指すために上京したと伺いました。しかし、そこから思わぬ方向へ進んだとか。

チロル 上京してすぐ「高収入バイト」で検索して見つけたのが、実はキャバクラの求人だったんです(笑)。未成年だったのでお酒は飲めませんでしたが、メイド喫茶と同じ感覚で楽しく働けていました。しかも、入店から3ヶ月目で売れちゃって。気づいたら月に300~400万円売り上げるようになっていました。

――その収入が活動の幅を広げる資金源になったんですね。


チロル そうです。コスプレの衣装代やイベント費を気にせず活動できたのが大きかったです。コスプレ活動も、最初は好きな作品のコスプレをしていたんですけど、途中で「谷間を出していれば伸びる」って気づいて。それからは数字を伸ばす方向にシフトしました。

――そのような形で、コスプレからグラビア活動に移られたと。

チロル 当時は「グラビアレイヤー」がまだネガティブに捉えられてたんですけど、私はあえて飛び込んで。結果的にそれが数字にも繋がりました。今では「コスプレ」と「グラビア」は完全に切り分けて考えています。

――大学卒業後は一度就職されたそうですが、すぐに辞めたと伺いました。

チロル 湘南美容外科に就職したんですが、当時は撮影会で1回40万円稼げていたので、月20万円の給料じゃ割に合わなくなってしまって……。インフルエンザで1週間休んだのをきっかけに退職しました(笑)。

――フリーランスになってからも順調でしたか?

チロル 最初は順調だったんですが、大手撮影会が突然ギャラを未払いのまま飛んでしまって……私だけでも100万円以上未払いになりました。
けど、そういう経験もあって、今の活動スタンスに繋がっています。

――それは大変な経験でしたね。そのような経験を経ながらも活動を続け「ミス・アクション2025」でグランプリを受賞されました。念願だったそうですね。

チロル 本当に夢でした。初めてコンビニに並ぶような雑誌に出られて、写真集とDVDの撮影も控えています。

――コスプレイヤーとしてのひとつの夢が叶ったわけですが、今後のモチベーションはいかがですか?

チロル これまで、ずっと目の前のことに真剣に取り組んできたんですけど、そうしていたらいろいろなことがいつの間にか叶えられていました。なので、今は新しい目標を探している最中です。

▽輪湖チロル
1996年6月19日生まれ、長野県出身。2016年頃よりコスプレイヤーとして活動を開始。SNSを中心に撮影会や即売会、コンセプトカフェのキャスト、ファンイベントなど多方面で精力的に活躍。2022年12月には、自身がオーナーとして歌舞伎町にコンカフェ「Bisquedoll」をオープン。
2024年には「ミス・アクション2025」でグランプリを受賞し、今後のさらなる飛躍が期待される注目されている。

【後編】「売上500万円でも給料は数十万」輪湖チロルが理不尽を糧に掴んだ“歌舞伎町コンカフェオーナー”の夢
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