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夏帆は“恋人ファースト”だった山岸鮎美を、竹内は亭主関白で昭和的な思考を持つ海老原勝男を演じる。2人が「料理」をきっかけに、それぞれの固定観念や価値観を見つめ直す姿が描かれている。
第1話では、勝男が繰り出すモラハラ的な言動がSNSで大きな話題となり、放送直後からトレンド入り。その後の回では、根がまじめで素直な勝男が料理を通じて変化していく姿に多くの視聴者が共感を寄せた。
竹内の“怪演”はネットニュースでも大きく取り上げられ、初回放送は無料配信の総再生数で600万回を突破。TBSの火曜ドラマとしては歴代1位、さらに同局の大ヒット作『VIVANT』に並ぶ勢いを見せている。
この秋ドラマでは、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』で竹内が演じる“価値観の古いダメ男”とは違うタイプの“ダメ男”も注目されている。『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)で北村有起哉が演じる主人公・小倉渉だ。
同作は『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)をヒットさせたばかりの岡田惠和脚本によるホームコメディー。レトロなマンションを舞台に、3つの家族の人間模様を描いている。視聴率こそ伸び悩むものの、熟年夫婦の離婚をテーマにした軽妙な会話劇として、ドラマファンの間では高く評価されている。
北村が演じる渉は、仕事は家庭もそつなくこなしてきた普通のサラリーマン。妻・あん(仲間由紀恵)と子ども2人に囲まれ、幸せな生活を送っていたが、ある日突然、妻から離婚を宣言される。
あんは、19年前に渉と交わした「子どもが二十歳になったら離婚する」という約束を実行すると宣言。渉は、その言葉をすっかり忘れており右往左往する。
一家の大黒柱としてまじめに働いてきた渉は、2人の子どもとの関係も良好。しかし、渉のちょっとした言動に、あんが眉をひそめる場面が第1話で描かれた。また過去の回想シーンにより、子育てに行き詰まるあんから「子どもが二十歳になったら離婚する」という提案をされていたが、本気にしていなかったことがわかる。
渉は、出産を機に退職して家族を支えてきたあんの葛藤を理解していなかった可能性が高い。悪気はないものの、もっとも近くにいた妻の気持ちを理解できなかった“ダメ”な部分がのぞく。
しかし、ドラマは渉をただの“ダメ男”として描いてはいない。10月23日放送の第3話では、離婚を切り出された渉が、悩み抜いた末にあんに号泣しながら「離婚しよう!」と伝えるのだ。真剣にあんを愛し、家族を大事にしてきたからこその葛藤が見られ、彼が“憎めないダメ男”であることを印象づけた。
勝男も渉も、パートナーの気持ちを後回しにしてきた“ダメ男”でありながら、素直で憎めないキャラとして魅力的に描かれているように思う。
奇しくも同じ秋ドラマで“憎めないダメ男”を主人公に据えた『じゃあ、あんたが作ってみろよ』と『小さい頃は、神様がいて』。多様化が進む現代社会で、ドラマの主人公像もまた一筋縄ではいかなくなっている。勝男と渉にどんな結末が待っているのか。異色の主人公の行く末を見届けたい。
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