Netflixで話題沸騰中の『匿名の恋人たち』。小栗旬、ハン・ヒョジュ、赤西仁中村ゆりという豪華キャストが織りなすのは、触れられない男と視線を合わせられない女の、もどかしくも美しいラブストーリーだ。
平成の恋愛ドラマを彷彿とさせる“胸キュン”と、令和の映像美が融合した本作に多くの視聴者が「癒された」「一気見した」と熱狂しているが、その魅力をドラマコラムニストの小林久乃氏が深堀りする。

【写真】小栗旬とハン・ヒョジュが見つめ合うシーンほか場面カット【6点】

◆ハン・ヒョジュの美しさはすごいぞ

小栗旬、ハン・ヒョジュ、赤西仁、中村ゆりらが出演する『匿名の恋人たち』(Netflix)が好評だ。私も流行に乗るかのように全8話を吸い込まれるように一気見をして、視聴後に(ああ、終わってしまった……)と脱力。で、リマインドをした。平成期のドラマに青春を捧げた身分としては、どこか懐かしさを感じられる作品だった。

『匿名の恋人たち』は、ロマンティックコメディだ。

主人公は製菓メーカー御曹司・藤原壮亮(小栗)。深刻すぎる潔癖症で自分以外の人間に触れられない。触れたらすぐに消毒、着替えをしないといられず、日常生活にかなりの影響が出ている。ちなみにイケメン、独身、天然で優しい。壮亮の経営するチョコレートサロンで働く、天才パティシエのイ・ハナ(ハン・ヒョジュ)は視線恐怖症を患っていて、亡くなった母親以外と視線を合わせられない。が、なぜか壮亮だけは視線を合わせられる。
この二人、互いにビジネスだけの関係で「恋愛に発展はない」と言い張るけれど、二人を含むジャズバーのオーナー・高田寛(赤西仁)やカウンセラーのアイリーン(中村ゆり)、4人の周りにはショコラのような、何やら甘い雰囲気や、恋の予感が漂っている。さて誰と誰がくっつくの……? と探るのが醍醐味のドラマなのだ。

さてどんなラブコメかと見始めて、序盤から目を奪われたのはハン・ヒョジュのプリミティブさだった。年齢を調べてみると、38歳。どう見てもマイナス10歳のビジュアルだ。ハナの役柄を反映して、劇中では黒髪でシンプルなコーディネートが主流。それでも可愛らしく、嫌味のない品がある。ハン本人が一年近く日本に滞在して、会話ができるようになった(なんと『ロンバケ』を見て勉強したらしい)と本人が話す、少しだけ辿々しさが残る日本語の話し方も可愛らしさを一押し。お恥ずかしながら私は韓流ドラマにあまり縁がないので、彼女の俳優としての顔を知らなかった。が、今回の演技を見てもう夢中である。

ハナとしてちょっと垢抜けていない雰囲気を演出していたけれど、劇中でドレスを纏うシーンでは隠しきれない美しさが顔を出す。最近、プロモーションでファッション雑誌にモデルとして登場していた姿も同じく。
そんな姿を見ていてずっと心にある疑問が沸々とよみがえる。それは美の感覚だ。今日日、自分の原型を留めていないような美が若年層の間で定着しつつある。でも若者たちに伝えたい。本当の無駄のない美しさとはハンのような女性を示唆しているのだと。

◆壮亮とハナの微笑ましいシーンの去来するのは?

そんなハンが演じるハナを囲む男性のひとりは壮亮。ふたりの様子はいつもタイミングがいい。恋愛感情に素直にならない雰囲気なのに、ふいにくっつきそうになると邪魔が入る。ハナがトラブルに巻き込まれると、なぜか突然、壮亮が救出に登場する。

「もう俺の前からいなくなったりするな!」

と、つい気持ちが口から溢れてしまったり。他にも壮亮の仕事と、ハナのショコラティエとして出場する大会が重なると……仕事をとっとと切り上げて、ハナの元に駆けつけたい気持ちがシーン全面に漏れてしまう壮亮。

「俺がそばにいるから。
ハナさんの視線の先にはいつでも」

こんなシーンの連打にほっこりしていると、脳内に浮かんでくる作品と役柄がある。まずは『花より男子』(TBS系・2005年)の花沢類。ヒロイン・牧野つくし(井上真央)の窮地にはナイトのように現れて、つくしを癒す。ハナはさしずめ、つくしといったところだ。他にも『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系・2012年)の日向徹の天然ぶりと壮亮には通ずる雰囲気を感じる。そう、『匿名の恋人たち』は洗練された最新の映像美と、平成ドラマのファンタジックさを備えた癒しなのだ。

昨今の純国産ドラマはラブストーリーでさえも、伏線ブームが粛々と続いていて、視聴疲れする時もある。もちろんそういった作品が面白い時もある。ただ本作にはそんな考察は必要がなく、ただ最近溜まった疲労が抜けていく感覚だった。カップルのその先が知りたいので、続編、望む。

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