TBS日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』が話題を集めている。“男のロマン枠”として知られる日曜21時の時間帯だが、今回は少し様子が違う。
主演・妻夫木聡、共演に佐藤浩市黒木瞳小泉孝太郎という鉄板布陣に加え、物語の軸となるのは――「馬」。競走馬をめぐる熱き人間ドラマが、意外にも女性たちの共感を呼び、SNSでは「泣ける」「馬の気持ちになった」との声が相次いでいる。そんな女性ウケの理由を、ドラマコラムニストの小林久乃氏が分析する。

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日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)がなんだか面白い。

毎週日曜21時スタートのドラマ放送枠といえば、通常は“お父さんたちを元気づける作品”のイメージが大きい。今回も男のロマンを追う物語が主題なので、方向性は変わらないけれど、私を含めてミドルエイジの女性たちの間でも人気だ。各所で「ロイヤルファミリー見ている?」と話題にあがる。その理由の背景は11月2日(日)の放送から、いよいよ登場と言われている目黒蓮だけではなく、“馬”にもあるのでは? とにらんでいる。

◆日曜劇場にざわつく女性たち

『ザ・ロイヤルファミリー』は競争馬をめぐる、男たちの熱い思いが、バッチバチに飛び交う物語だ。

“時は2011年。税理士だった栗須栄治(妻夫木聡)は、ある出来事がきっかけで仕事にやりがいが見いだせなくなり、日々迷っていた。とある日、仕事で出会った人材派遣会社・ロイヤルファミリー社の競馬事業部の山王耕造(佐藤浩市)の競争馬に対する熱意を知り、転職を決意する。
ただ競馬事業部は社の幹部である耕造の妻・京子(黒木瞳)や、息子の優太郎(小泉孝太郎)から敵視されている事業。黒字を出すためには勝たなければならない。必死で競走馬を探す栗須と耕造。出会ったのは栄治の元恋人・野崎加奈子(松本若菜)が父親と育成しているロイヤルホープ。耕造が一億円を投じた馬は果たして勝つのか━━。”

豪華なキャストで色の濃いキャラクターが多く揃うのが、日曜劇場。メガバンクが舞台の堺雅人主演『半沢直樹』(2013年)、ロケット打ち上げを目指す下町工場の社長を阿部寛が演じた『下町ロケット』(2018年)などヒット作が次々に生まれている。“仕事”“理想”“情熱”だけではなく、ドロドロとした人間関係も交差。常に高視聴率を走り続けるT B Sの看板番組と呼んでも過言ではない。

ちなみにT B Sには火曜22時放送の男女のラブストーリーをメインに描く、女性ターゲット層のドラマが放送されている。現在は夏帆・竹内涼真主演の『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が好評だ。私も一応女性なので、この『火10』枠のファン。
日曜劇場はドラマオタクの矜持として試聴している。ところが『ザ・ロイヤルファミリー』は前述したように、女性層がざわついている。放送中、S N Sでハッシュタグを追いかけてみると女性からのポストが圧倒的に多かった。ふむ。

◆馬と妻夫木の気持ちに寄り添いながら

なぜ『ザ・ロイヤルファミリー』は他の日曜劇場作品と一線を画して、女性層にもファンがいるのか。まずは“馬”がその理由の一つ。記憶の限りだとこの放送枠で動物をメインにしたドラマはなかった。主人公がペットを飼っているとか、登場人物が動物に関する仕事をしている……といったシチュエーションはあったけれど“馬”はない。しかもセレブ御用達のスポーツ、乗馬ではなく、競馬。イメージでは競馬新聞を片手にしたおじさんたちの血湧き肉躍る、賭け事だ。日曜、14時から『ザ・ノンフィクション』を嗜んだ後に15時から始まる、DAIGOの司会の『みんなのK E I B A』(ともにフジテレビ系)だ。

このイメージを覆すように『ザ・ロイヤルファミリー』に登場する競走馬は、毛並みからして高貴そのもの。
ただ勝たなければ、売れなければ競走馬として扱ってもらえない厳しい世界。あんなつぶらな瞳の可愛らしい動物なのに……。つい馬に感情が湧いてしまう。私の友人(50歳)はこんな感想を言っていた。

「あのドラマで馬を見てると、自分もあんなふうに社長から働けって言われているみたいでさ。馬の気持ちになって泣けてくるんだよね」

馬の気持ちになるとは新しい視点だった。確かにこれまで日曜劇場のテーマだった足袋、ゲーム、司法etcには人的感情は湧きづらい。そしてもう一つの理由といえば、妻夫木演じる“栗須”の成長。これは私もよく理解できる。

「仕事のやり甲斐はそんなに簡単に生まれないけど、現状維持ではなくて、やっぱり動かないと何も変わらないし。栗須の気持ちが分かるな~」

そう言っていたのは飲み仲間女性(40歳)。演じる妻夫木もどこか頼りない、よく泣く役がよく似合っていて、彼女たちの気持ちを盛り上げている。
もし女優が演じていたら感情移入ができていたのか疑問だ。

「初めて父の言う、人の役に立てました。人から感謝される仕事ができました」

第一話で栗須が言っていたセリフをいまだに覚えている。誰だって誰かの役に立って、感謝を直接受ける仕事がしたい。彼は視聴者の代弁者だ。

時代と言われればそれまでだけど、今後も年齢、性別といったカテゴライズがますます曖昧になっていくのかもしれない。女性たちが『ザ・ロイヤルファミリー』へまるで東京競馬場のお父さんたちのように、夢中になっているのも通常運転なのかもしれない。今後、日曜劇場の新しいイメージが開拓されていくのだろうか。

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