27歳の俳優・鳴海唯が今年注目を集めている。NHK連続テレビ小説『あんぱん』でヒロイン・のぶの同僚の小田琴子を演じ、連続ドラマや映画への出演も続く。
そして9月29日から全世界へ配信が始まったABEMAオリジナルドラマ『MISS KING / ミス・キング』では、のんが演じる主人公・国見飛鳥のライバル女流棋士の早見由奈役で出演している。19歳で上京して俳優業に打ち込んできた苦労人の彼女に、作品への抱負や、ブレイクするまでの日々の思い出、そして素顔を聞いた。(前後編の後編)

【写真】数々のドラマで存在感を放つ俳優・鳴海唯【12点】

◆「お芝居ができない悔しさが、今の自分を作った」

――インタビューの前半で、早見由奈について「あえて周りから求められるアイドル棋士像をやっている」と解釈されていました。そしてどんな人でも人前では仮面をかぶっている、と考えていらっしゃいましたが、ではプライべートの鳴海さんは?

鳴海 いやー、ちょっとお見せできないですね(笑)。普段は怠けもので面倒くさがりなので、一日中何もしないで、携帯でネットサーフィンしていて気づいたら夜になっていて、なんて日もあります。それで何もしなかった自分に自己嫌悪する、みたいな(笑)。人前に出る時も、自分を飾ろうとすると疲れてしまうので仮面をかぶっている意識はないんですが、無意識にスイッチを切り替えています。

――映画『ちはやふる -結び-』のエキストラ出演がきっかけで大学を中退して8年前に上京。養成所で芝居を学んで今、多数のドラマに出演と、波乱の人生を送ってきたかと思いますが、当時の思い出は?

鳴海 今こそお芝居だけで生活できるようになりましたが、昔はやっぱりアルバイトもしながら生計を立てていました。それに上京してほどなくコロナが流行り始めたので、そもそもお芝居をする機会がない、という状況にもなってしまって。そういう時期にお芝居ができない悔しさが原点になったかなと思います。

――アルバイトはどんな経験をしましたか。


鳴海 色々しましたね。コールセンターや宅配便、イタリアンレストランも経験しましたし、面白くてよく覚えているのはハウスクリーニングの助手のバイトです。

――面白かったというのは?

鳴海 豪邸に行けるんです(笑)。大きい家に住まれてる方って掃除を業者に頼むんですね。普通に生活していたら絶対行けないようなお家に入れて、その生活空間を垣間見れるので世の中の勉強になりました。

――そんな生活で、困ったことはなかったでしょうか。

鳴海 これもあるあるですが、上京してすぐの頃はもやしと豆腐でしのいでいました(笑)。スーパーで一番安いものを探したりもして。家賃が払えなくなる、ということは幸いにもなかったですけど、常にギリギリの状態でした。

――今回の早見由奈への深い考察など、真剣にお芝居に向き合ってきたと思います。俳優としてのご自身の個性を挙げるなら?

鳴海 難しいですが、ブレないで役と向き合うことですね。今まで芯のある、強い意志を持ったキャラクターを任せていただくことが多くて。
まずそのキャラクターの「核」になる部分はどこだろう、ということを見つける作業から始めるんです。そして、その核さえ見つければ、どんなシーンでも一貫性を持ってお芝居で伝えられるかな、と思っています。

――ではこれから挑戦してみたい役柄はありますか?

鳴海 もっとがっつり、職業を担う役も経験してみたいですね。医者や弁護士など。今回女流棋士という、将棋も勉強して専門的な知識が必要な役柄をやってみて、そのプロセスも楽しかったんです。最近まで大学生など、等身大の若者の役をいただく機会も多かったので、この『MISS KING / ミス・キング』が新境地になりました。

――将棋に由奈の性格など、多角的に役と向き合えたのが糧になったと。

鳴海 そうですね。私たちの身近にいるような役だったら、ナチュラルなお芝居で「自然にそこにいる」ことを大事にしてきました。でも「あんぱん」に出演した時も高知弁を覚えて、今回も将棋を勉強したりとお芝居へのタスクが増えると、役と向き合う時間も増えます。それも楽しいんだなと気づいたので、もっとお芝居を突き詰める機会をいただきたいです。早見由奈として新しい表情もたくさん切り取っていただいたので、ぜひ楽しんでください。


(プロフィール)
鳴海唯 なるみ・ゆい 1998年5月16日生まれ、兵庫県出身。2017年に映画『ちはやふる -結び-』(2018年公開)のエキストラ出演がきっかけで俳優を志して上京。2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』でテレビドラマ初出演。以後も映画、ドラマを中心に幅広く出演している。2025年は、NHK連続テレビ小説『あんぱん』、日本テレビ系ドラマ『ちはやふる-めぐり-』。テレ東系ドラマ『シナントロープ』などに出演しているほか、主演映画『アフター・ザ・フェイク』が10月3日から公開中。『MISS KING / ミス・キング』は毎週月曜日夜8時よりABEMAで全話無料配信、Netflixで世界同時配信。

【前編】鳴海唯、ABEMA『MISS KING / ミス・キング』で女流棋士役に挑戦「まずルールを覚えるところから始めました」
編集部おすすめ