小泉今日子の勢いが止まらない。今春は『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)でヒロイン・吉野千明を演じ、同世代を中心に多くの視聴者の共感を呼んだ。
そして現在、M&Oplaysがプロデュースする舞台『私を探さないで』に元教師の作家・大城ユイ子役で出演している。さらに、年明けにはホールツアー『KK60 ~コイズミ記念館~』の開催が決定している。今回は、“キョンキョン”こと小泉今日子のあまり知られていない昨今の活動にふれながら、今なお多くの人たちを魅了し続ける理由に迫る。

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舞台人としての小泉今日子
現在、小泉は岩松了が作・演出する舞台『私を探さないで』に出演している。演劇ファンの間で岩松作品の難解さはよく知られているが、筆者自身、一度観ただけでは消化しきれなかった。とはいえ、この作品から感じるものは少なくなく、特に、三沢晶(河合優実)が同性の担任・大城ユイ子(小泉)に抱く甘く切ない想いに、ほろ苦い気持ちになった。小泉は舞台上で圧倒的な存在感を放ちながらも、ユイ子の複雑な胸の内を繊細に表現し、長台詞を早口、かつテンポよくこなす姿が圧巻であった。自分の過去を見ているような懐かしさを感じつつも、どことなく重々しい雰囲気がただよう本作だが、カーテンコールのときの小泉の晴れやかな笑顔にほっとした。

筆者は小泉について、舞台を大切にし、舞台に立つ役者に対するリスペクトを忘れない人だと思っている。小劇場を好み、自ら足を運んで交流を深めるだけでなく、スポットが当たる機会になかなか恵まれない俳優にチャンスを与えることがある。また過去には、自身がプロデュースした舞台で、観客が帰った後に段ボールを運ぶなど後片付けに徹する姿が目撃されている。

1982年3月21日にシングル「私の16才」でアイドル歌手としてデビューした小泉は、華々しいスター街道を歩んできたともいえる。
10代の頃から大きなステージの中心でスポットライトを浴びてきたが、名声や社会的地位といった表層的なもの、あるいは劇場やホールの規模などに惑わされることなく、自分にとって価値あるものを見抜いている。エンターテイナーとして、おもしろいものをとことん追求し、さまざまなものからインスピレーションを受け、独自のスタイルに昇華させるのが小泉だ。

小泉今日子と猫
小泉は“猫愛好家”としても知られ、猫と過ごすおだやかな時間を大切にしている。

小泉の数ある曲の中で、筆者が特に好きな曲の一つが、小泉自身が作詞を手掛けた2002年発売の『For My Life』だ。子猫を拾ったことをきっかけに両親とケンカになり、一人と一匹暮らしを始めた年頃の女性の日々を綴ったアップテンポの曲である。

2021年には、上田ケンジと音楽ユニット「黒猫同盟」を結成。自身も黒猫と暮らす上田が作詞した「にゃんこの哲学」は、猫好きであれば笑顔で頷いてしまう歌詞だ。

また小泉は、2024年に自身のツアー“BALLAD CLASSICS”で使用した円形ステージの木材を添加物未使用の猫砂に加工し、限定商品として発売。猫はもちろん、地球にも優しいこの商品は発売後すぐにソールドアウトとなった。

小泉は自身の猫に愛情だけでなく、強い責任感も持つ。一人暮らしの小泉には猫シッターをしてくれる友人もいるという。さらに、自分に何かあった場合に備えて、猫が人慣れできるようにさまざまな人に会わせたり、引き取り候補の人に慣れさせたりするなど、万全の準備をしているそうだ。


小泉の笑顔に心がほっこりあたたまる
小泉は同世代と伴走して共に年齢を重ね、下の世代には優しく、猫に対しても責任感と愛情を注ぐ。

ステージ上でキラキラした衣装をまといキュートに歌う姿も、ドラマで人望の厚いヒロインを演じる姿も、難解な舞台に挑む姿も素晴らしいけれど、小泉の生き方や考え方が何よりもクールだ。

筆者自身、年齢を重ねていく中で一つの世界で長く生きることのむずかしさ、周囲に世話を焼く大変さ、自分の思いをストレートに話すことの困難さを知るにつれ、小泉の内面性にも惹かれるようになった。

小泉自身も語っているように、初めから好きな仕事ばかり選んできたわけではない。今でこそ会社を設立し、社会貢献や若手の育成、舞台の裏方、猫にまつわる活動など、自身が興味を持つ仕事に取り組んでいるが、アイドル時代は空き時間に本を読むことで周囲と壁をつくり、自分の世界に籠(こも)ることもあったという。

好きなことをするには責任が伴い、お金や人脈も必要となるが、それらを積み重ねてきたからこそ、今の小泉があるのだろう。筆者自身も、今が踏ん張りどきなのかと、彼女の生き方に励まされる。

小泉が時折見せる笑顔はあたたかく、優しく、人柄のよさがあふれている。そんな笑顔をみせられる人間になりたいものだ。

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