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そんな夜ドラの新作『ひらやすみ』も、独特の雰囲気と温かみのある世界観で人気を集めている。原作は真造圭伍氏の同名マンガ。主演の岡山天音をはじめ、森七菜、吉岡里帆、吉村界人らが出演し、演技派の若手俳優が揃った。何気ない日常の風景を丁寧に描き、見た後にほっとする感覚をのこす作品だ。
岡山が演じる主人公・生田ヒロトは、29歳で定職なし恋人なしのフリーター。お気楽な性格で、将来への不安を感じることなく毎日を楽しむ自由人だ。そんなヒロトは、仲良くしていた近所の「ばーちゃん」こと和田はなえから、一戸建ての平屋を譲り受けることになる。その平屋で、山形県から上京してきた18歳のいとこ・小林なつみ(森七菜)と2人暮らしを始めるところから物語が展開していく。
まず、このドラマの最大の魅力は、岡山と森がみせる表現力の高さだ。名バイプレイヤーとして多彩な役をこなしてきた岡山は、独特な設定のヒロトを見事に体現している。ヒロトはどこか抜けているお気楽な自由人だが、岡山が自然体で演じることで親しみやすいキャラクターに仕上がった。
一方、なつみを演じる森の演技も素晴らしい。美大進学のために上京したが、自意識過剰な性格が災いしてなかなか友達を作れない--そんな思春期特有の不安定さを、森が豊かな表情とコミカルな動きで表現している。岡山と森のやり取りをみるだけでも、『ひらやすみ』は十分な魅力がある。
さらに第5話以降は、吉岡が演じる不動産会社勤務の立花よもぎが本格的に登場。よもぎは、職場のエースとして働く一方で、心に少しだけ余裕のない女性だ。ヒロトとひょんなことで顔見知りになり、性格の違いからよもぎがイライラする場面も多く描かれる予定。強気なようで繊細さも併せ持つよもぎを、吉岡は丁寧に演じており、今後の物語の鍵を握る存在となりそうだ。岡山、森との化学反応にも注目したい。
出演者のレベルの高さに加え、ストーリーも見ごたえがある。基本的にはヒロトの変わり映えしない日常に、なつみやよもぎ、親友・野口ヒデキ(吉村界人)が関わることでストーリーが展開する作品だ。大事件も不倫もない穏やかな日常劇ながら、登場人物の魅力で飽きさせない。
ヒロトは周囲の人にいろいろと巻き込まれることが多いのだが、すべてをまったりとした雰囲気に変えてしまう存在。クセのあるなつみ、よもぎ、ヒデキと交わることで、ヒロトの癒し系キャラが一層際立ち、起伏が少ないながらもストーリーをおもしろくしている。
ナレーションを務める小林聡美の声も落ち着きがあり、一日の終わりに見るにはピッタリ。静かな癒しと小さな笑いが詰まった『ひらやすみ』は夜ドラの良作として支持を広げそうだ。今後の展開にも期待したい。
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