ABEMAオリジナルドラマ『MISS KING / ミス・キング』(Netflixで世界同時配信)で、初の女性棋士を目指す国見飛鳥で主演したのん。実の父の天才棋士・結城彰一(中村獅童)に捨てられ、どん底から将棋で人生を取り戻していく物語で、ダークヒーローとして鮮烈な印象を残した。
初めてダークな役を演じた感想や、役作りで一貫して大切にしている「pain」という概念、2025年を過ごしての思いを語った。(前後編の前編)

【写真】『MISS KING / ミス・キング』で主演を務めた俳優・のん【9点】

――国見飛鳥は、のんさんご自身「こんなに不幸な役は初めて」というほどの暗い過去を抱えていましたが、この物語のどういった部分に面白さを感じ、惹かれましたか?

のん 勝負の世界で戦う主人公の役柄にあまり経験がなかったので、初めてそういった役ができることに惹かれました。しかも最初の設定では性格がギャルな子で(笑)、そこから今の設定になったので、第一印象から面白かったですね。将棋に触れるのも初めてで、初の女性棋士が誕生するのかどうか、というテーマに挑めるのも、この作品ならではなので、とにかく新境地のお芝居ができることに期待しました。

――飛鳥の父への復讐だけでなく、将棋への才能やリアルな将棋界の様子が描かれていましたね。

のん 復讐といってもただ暗いだけじゃなくて、見ていてスカッとするところがいいですね。私は結構ハッピーエンドが好きなので、暗い気持ちになって終わる物語じゃなくて、飛鳥がどん底から立ち上がって、前に突き進んで、最終的に勝ち上がっていくっていうストーリーは、やっていても見ていても気持ちよかったです。

――では、演じてみて感じた飛鳥の好きなところは?

のん 復讐のために将棋を始めたはずが、気づけばどんどんのめり込んでいくところに惹かれました。もともと才能はあったとはいえ、他のことは全部おろそかになるくらい、将棋のことしか考えられなくなっちゃうところは人間くさくて面白いなと思います。

――ちなみに、のんさんがのめりこんでしまうものといえば?

のん やっぱり、仕事ですかね(笑)。今年もいっぱい経験させていただきました。

――飛鳥だけでなく、父の結城彰一や飛鳥とタッグを組む藤堂成梧など、将棋界の人たちの情念が濃く描かれたドラマですね。


のん 藤木(直人)さんの藤堂さんとか、倉科(カナ)さんの礼子さんとか、皆個性が強いですね。他にも将棋を鍛えていく飛鳥の周りには情にあつい仲間もいて、ライバルですら同志に見えてきたり……将棋に生きる人たちの業のようなものが見えてくるのも素敵でした。

――特に好きなキャラクターはいますか?

のん うーん……どのキャラクターも面白そうですが……藤堂さんですね。破天荒なんだけど、飛鳥に対しても優しい時は優しくて。そもそもお父さんを殺そうとした飛鳥に手を差し伸べてくれた人なので、人を思いやれるあたたかさがあるんだなって。飛鳥の仲間になってくれたこと自体が、藤堂さんの人柄の象徴だなと思います。

――ダークヒーローの役でもありますが、以前、この作品のインタビュー動画で「pain」を大切にしている、と話されていました。

のん これは本来、見る人には直接関係ない部分だから、あまり言わないようにしているんですが……私の役作りにとって、すごく大事な考え方なんです。

――「pain」とは、どういう概念でしょうか。

のん 一般的に言われる、物理的あるいは精神的にも“痛み”に値するようなもの、という意味ではななくて。誰もが持っている、その人の行動や言動の、根本的な理由に関わってくる核のようなものです。例えば、「ここに触れられたら、こうなってしまう」というような、その人を動かしているコンプレックスみたいなものですね。
これを最初に設定することで、「こういうpainを持ってる人だから、こんな行動になるんだ」っていうのを、自分の中で深く読み解いていけます。

――それは、この作品に限らずどんな役でも考えていくものでしょうか。

のん そうですね。シリアスで、辛い物語だからあるものでもなくて。すごく明るくて、ポジティブで、エネルギッシュな役を演じる時にも、必ずその人の中にpainはあるものだと考えて構築していきます。

――では、のんさんが考える、国見飛鳥にとっての「pain」とは?

のん それをぜひ、皆さんで想像してほしいです(笑)。この物語は、飛鳥がなぜ復讐を誓うのか、その根源を探っていく物語でもあります。皆さんにも、「飛鳥のpainって何だろう?」って想像しながら見ていただけると、もっと面白く感じてもらえると思います。

のん 1993年生まれ、兵庫県出身。
2016 年公開の劇場アニメ『この世界の片隅に』で主人公すずの声を演じ、第38回ヨコハマ映画祭審査員特別賞を受賞。2022 年2月に自身が脚本、監督、主演の映画作品『Ribbon』が公開。同年主演映画『さかなのこ』で、 第 46 回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。
2025年はNetflixドラマ『新幹線大爆破』、DMM TVドラマ『幸せカナコの殺し屋生活』、映画『早乙女カナコの場合は』『アフター・ザ・フェイク』『てっぺんの向こうにあなたがいる』などに出演し、3rdフルアルバム『Renarrate』を9月にリリースした。

【後編】のん、『MISS KING / ミス・キング』撮影現場で身につけた表現の進化「自然と泣けるようになりました」
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