今期、女性同士の共同生活を描いた作品が2作放送されている。『終活シェアハウス』(NHK BSP4K・BS)は60年来の幼なじみである4人のシニア女性を中心に描かれるあたたかみのある作品で、『シャドウワーク』(WOWOW)はDVを受けた女性が暮らすシェルターを舞台としたヒューマンミステリーだ。
“女の敵は女” “女の園は人間関係が難しい”と語られることも多いが、女性だけのコミュニティはうまくいくのだろうか...。

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◆個人が生きにくいときにこそ、女性同士の連帯が生まれる
少し前に、ミドル層以上と思われる女性が“ミニスカート姿で階段を登る女の子の後ろについて、男性の視線からさりげなく守ってあげる”とXに投稿していた。こうした優しさは相手に気付かれにくいが、利害関係を抜きにして、若い女の子たちに注がれる愛情もあるようだ。

歴史を振り返れば、女性(妻)は男性(夫)に属すとされ、一個人としての権利を得るまでに多くの年月を要した。こうした中で、女性は互いに支え合い、アクションを起こしてきた。女性同士で団結して選挙権を求めた話、女子教育の重要性を唱えた女性の話を聞いたことがある人は多いだろう。

社会の周縁に置かれがちであったからこそ、女性同士で慰め合い、励まし合い、助け合うことは多かった。同性に対して嫉妬したり腹立たしく思う人がいる一方で、同性だからこそ注げる優しさや信頼もある。

大きな問題を抱えていなくても、同性との会話が楽しいと感じる女性、同性の友人こそが一生モノと考えている女性は少なくないように思う。多くの女性が同性からしか得られない安心感のようなものを無意識のうちに感じ取っているのかもしれない。

◆『終活シェアハウス』に描かれる仲良し4人組の絆
“亀のようにおっとりゆったり”と暮らすという想いが込められた「カメ・ハウス」には歌子(竹下景子)、厚子(室井滋)、瑞恵(戸田恵子)、恒子(市毛良枝)が一緒に住んでいる。学生時代に“1人になったら一緒に暮らそう”と約束し、何十年もの時を経てその約束を現実のものにしたのだ。


4人での暮らしは楽しいものの、社会で生きる中で年齢を重ねても苦労は減るどころか、若い頃は予想もしなかった心の傷が増えるばかりだ。

例えば、瑞恵はソーシャルダンススクールで出会った男性に誘われ、期待に胸をふくらませていたら、若い女性講師との仲介役になってほしいと頼まれただけだった。心の傷を癒すために登録したマッチングアプリでは、ケビンと名乗る男から詐欺に遭うところだった。

また、厚子は教師として長らく働いていたが、年齢を理由に住まい探しに苦戦し、“年齢を重ねれば、信用が下がる”と呟いていた。

どの年齢にとっても生きることは大変だが、人生のベテランになれば困難は皮肉なことに、より一層増大するのだ。

そうした中で、救いとなるのが同性の友人の存在だ。瑞恵の失恋の悲しみを少し和らげたのは歌子の“好きなものを作ってあげる”、恒子の“掃除当番代わってあげる”といったさりげない優しさであった。

また、お互いの苦労を分かり合っているからこそ、相手を優先できることもある。厚子が恋をした元編集者の豪(石坂浩二)は歌子の長年のビジネスパートナーだ。歌子も豪に恋心に似た感情を抱いていていたが、恋愛とは無縁の人生を送ってきた厚子を豪に託すことを決めていた。

現代では、単身高齢者が大きな社会問題となっているが、単身者=生涯未婚ではない。老親との同居を頑(かたく)なに拒む人は多いし、判断力が劣った親を邪険にする人もいる。
誰もがある程度の年齢になれば、お一人様になるのだと改めて思う。そうした中で、社会をサバイバルするには同性の友人は大切だ。

『シャドウワーク』にはDV被害者である昭江(寺島しのぶ)と路子(石田ひかり)が運営するシェルターで暮らす女性の日常と、その近くで起きた不審な溺死事件をめぐる捜査が描かれている。

シェアハウスには紀子(多部未華子)、洋子(上原実矩)、奈美(トリンドル玲奈)、雅代(須藤理彩)が暮らしている。彼女たちは料理や掃除などの家事に加え、あることを“持ちまわり”で務めており、朝と夜はみんな揃って食事をするルールを守っている。

生活に必要なことは平等に分担しているが、トラウマなどを理由にできないことは“お互い様”の精神で免除してもらえる。

それぞれが心に深い傷を抱えているからこそ相手を大切に思い、共同生活がうまくいっているといえそうだ。

しかし、本作は女性の共同生活のほのぼのした物語ではなく、サスペンスミステリーだ。DVの傷を負った女性の遺体がシェルターから遠くない場所で見つかった。この事件現場に居合わせた刑事・薫(桜井ユキ)は自身もDV被害者であるが、事件を自殺と片付けた上層部に抗い、真相解明に奮闘する。自分のため、被害に遭った女性のために...。

実は、この事件の裏には昭江と路子を中心にシェルターで暮らす女性たちが持ちまわりで行う“シャドウワーク”があった。
彼女たちは他のシェルターと協力し合い、それぞれの加害者である夫を殺し合うという驚くべき方法を取っていたのだ。夫を仲間に殺めてもらった人は身の危険がなくなるため、シェルターを出られる。彼女たちの行為は決して許されるものではないが、DV被害から逃れ、これからの人生を生きるための数少ない方法なのだろう。

薫はシェルターの恐ろしき“シャドウワーク”を薄々察しているようだ。自身もDV被害者であり、彼女たちの苦しみを理解しているが、刑事としてどう立ちまわるのだろうか。

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