Netflixで配信中の恋愛リアリティーショー『ラヴ上等』が、視聴者の輪を広げている。参加者は元暴走族総長、少年院出身者、元ヤクザなど、いずれも強烈なバックグラウンドを持つヤンキーたち。
企画・プロデュースを手がけるのは、自身も“元ヤン”を公言するMEGUMIだ。恋愛をテーマにしながらも、画面に映し出されるのは甘い駆け引きより、剥き出しの感情と生き様。気づけばこれは“恋リア”ではなく、濃密な人間ドキュメントとして視聴者を引き込んでいく魅力を、コラムニストの小林久乃氏が解説する。

【写真】ヤンキーたちの恋愛リアリティーショー『ラヴ上等』の場面カット【7点】

◆ヤンキー文化、世界へ

最近、周囲の中年男女界隈で「見た?」と話題になり、SNSに視聴報告がバンバン上がっている番組がある。それが『ラヴ上等』(Netflix)だ。

ネットニュースでかなり取り上げられているので、知っている人も多いと思うが、『ラヴ上等』はヤンキーの男女11人による恋愛リアリティーショーだ。約14日間、山奥の学校『羅武上等学園』で、共同生活を送り、恋愛対象を探していくのが、大まかな内容。自らも「元ヤン」だと言っていたタレントのMEGUMIが、企画・プロデュースを担ったのも話題をさらった理由のひとつ。動画配信サービスで多くの恋リアが配信されているが、参加者全員がヤンキー…といったパターンは、世界初ではないだろうか。

普段、私はドラマや映画三昧の日々で恋リアはほぼ見ない。まあ、もう中年だし恋愛云々は卒業したも同然。ただ新年に開催された『Next on Netflix 2025』にて、登壇したMEGUMIから「ヤンキーの恋愛リアリティーショーをやる」と聞くや否や、「絶対に面白いはず」と感度が全開になった。
平成期に青春を過ごした漫画『ホットロード』世代にとって、ヤンキーは憧れだ。ちなみに私、度胸もなく、本ばかり読んでいた暗い学生時代だったので、ヤンキーロードは通っていない。それでも期待は膨らむ。

そして今冬、満を辞して始まった『ラヴ上等』は2025年を締めくくるにふさわしい魅力を放っていた。書きたいことはたくさんあるけれど、いくつかを。まず参加者が元暴走族総長、元ヤクザ、少年院出身…と、かなりハードなプロフィールを持っている。体をタトゥーや刺青で覆っているメンバーも多い。ヤンキーといえば「オキシドールで髪の毛をブリーチしている」といった感覚でいるのは、自分がアップデートできていないと反省をした。

そんな彼らの恋愛模様を中継、解説をするMC陣もいい。MEGUMIによる冷静なツッコミに加えて、ラッパー・AK-69による的確な解説が光る。「背後を取られないようにしていますね」など、まるで参加メンバーの代弁者のようだ。彼らの言動について全く予測がつかない視聴者にとって、AK-69の発言に何度も納得させられた。
対するように、恋リアをほとんど見ないと自称する芸人の永野もMC席に着座。彼は逆に視聴者代表のようなジャブを打つ。「(ケンカをしても)気持ちいいくらい引きずらないっすね」と、初めて触れる世界について話しているのが楽しい。この3人のおかげで、番組がかなりわかりやすくなっている。

あとは…こんな時代に男女がどうの書くのは古臭いかもしれないが「男は可愛くて、女は怖い」だ。例えば男性メンバーのつーちゃんとミルク。初回で顔を合わせた瞬間に、セキュリティスタッフが制止に入るほどのケンカをしたのに、その後はすぐにマブダチになるあたりがなんとも可愛い。AK-69の解説によると「仲良くなりたい奴とは一旦、ケンカする」らしい。

が、女性メンバーのケンカは挨拶とはならない。エピソード4でダンサーのあもが登場する際、たまたま水をかけられたBabyがブチ切れ。氷の入ったレモンサワーをあもに引っかけて、頬に傷をつけてしまう一幕があった。この時のBabyの冷淡な表情を見ていると、もし現場にいたら震え上がったと思う。
視聴者で本当に良かった。怖い、女は怖い。全エピソードを観たけれど、個人的なハイライトはこのシーンだった。

…と、見どころが間欠泉のように噴き上がってくる『ラヴ上等』。観ていると、作品が“恋リア”だとつい忘れる。参加メンバーが話すエピソードがあまりにも刺激的かつ、非日常的すぎて、主題がどうでも良くなってくる。そう、『ラヴ上等』は人間ドキュメント。観た後には誰かと面白さを共有したくなるはず。

Netflixリアリティシリーズ「ラヴ上等」シーズン1 独占配信中、シーズン2強行制作決定

https://www.netflix.com/ラヴ上等

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