松嶋菜々子が主演を務める『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』(テレビ朝日系)がスタートした。本作は職員の情報収集力と調査スキルを誇る東京国税局・資料調査課を舞台にした物語で、松嶋が演じる米田正子を中心に個性的なキャラクターが揃う。
第1話の内容を振り返りつつ、ドラマの魅力に深く迫ってみたい。

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人の気持ちを踏みにじって儲けたお金の上に成り立つ幸せは許されない
人間誰しも手元に残るお金が多いほど嬉しいものだ。悪どい方法で儲け、さらには納税の義務から必死に逃れようとする人も少なくない。

そうした中で、悪徳脱税者に立ち向かうのが、複雑国税事案処理室(通称・ザッコク)に所属する国税調査官・米田正子率いるメンバーだ。彼らは頭脳を尽くし、潜入し、変装し、体を張って悪徳脱税者に挑む。

第1話で、米子らが立ち向かったのは“年金ビーナス”と称えられている紅林葉子(アンミカ)だ。葉子はセミナーなどで「一緒に豊かな人生を歩みましょうね!」といった甘い言葉をかけ、参加者の心の隙間に入り込む。自分を盲目的に信じた人をパーティーに誘い出し、不正な手段で利益を得ていた。

葉子のターゲットはお金をコツコツ貯めてきたものの、満たされない思いを抱える高齢者だ。例えば、ある女性は働きながら、口やかましい夫の世話を疑問も持たずにしてきた。また、息子とは関係性が希薄で、嫁との相性も悪いようだ。自身の人生を「なんて彩りのない人生だったんだなって」としんみり口にする姿は切なかった。


夫が亡くなり、息子が独立して手を離れた今、自分の人生を生き直そうと踏み出した彼女にとって、葉子は希望の象徴だ。一方、葉子にとっては“みすぼらしいおばさん”にすぎず、多額のお金を絞り取れそうな金ヅルでしかないのだ。

一生懸命働き、堅実に暮らしてきた人のお金を奪う行為は人生を踏みにじることと変わらない。また、人の孤独に付け込む犯罪は、特に悪質だと個人的に思っている。

だからこそ、正子率いるザッコクメンバーが葉子の大きな収入源である秘密のパーティーに潜入し、彼女の正体を暴いた瞬間はじつに痛快であった。

ザッコクの個性豊かなメンバーから目が離せない
ザッコクのメンバーは“米”田正子、“飯”島作久子(大地真央)、古町“豊”作(高橋克実)、“俵”優香(長濱ねる)、笹野“耕”一(佐野勇斗)と、それぞれの名前に米に関連する漢字が使われている。

ザッコクを率いる正子は正義感が強く不正に厳しい一方で、温かみのある人柄の持ち主だ。メンバー顔合わせのシーンでは自分で炊いたごはんを振る舞おうとする姿も印象的だった。また、正子は松嶋が演じているからこそ、優秀で正義感の強いクールなキャリアウーマンでありながら、上品で、愛らしさも兼ね備えた魅力的な人物になったと思う。

かつて“ガサ入れの魔女”と恐れられた作久子は、初回から大活躍を見せ、葉子がパーティーでお金を隠した場所を鋭い洞察力で見抜いた。普段の作久子は落ち着いた雰囲気をまとっているが、ガサ入れでは鋭敏な観察眼を発揮する。この役を演じる大地は高貴で上品な雰囲気もまた独自の魅力だが、“ガサ入れの魔女”と呼ばれた時代の回想シーンでは、見る者の心を射止めるほど煌びやかな存在感を放っていた。


豊作は穏やかな雰囲気が特長で、場を和ませてくれる存在だ。第1話では、着ぐるみを着たりプールに飛び込んだりと、体を張った演技とコミカルな表現が印象的だった。この役を演じる高橋といえば、昨年はNHK大河『べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~』で、蔦屋重三郎(横浜流星)の育ての親であり、硬派な男である駿河屋市右衛門を演じていたが、本作では一転して穏やかな表情やコミカルな演技を見せている。高橋の演技の幅広さに脱帽である。

さらに、ザッコクは20代若手メンバーも魅力的で、個性にあふれている。

優香はイマドキの若者らしく、プライベート重視で、上司にも物怖じせず意見を言う。第1話の定時退社や休日出勤拒否のシーンが印象的で、長濱のふんわりとした魅力と自然な演技が役にぴったりだ。

一方、耕一は東大卒のキャリアだが、変装がすぐにバレたりと不器用なところもありそうだ。とはいえ、葉子のパーティーでは遠隔から的確なアドバイスを送り、聡明さを見せていた。この役を演じる佐野は、松嶋と『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)で2016年に共演している。謎多き高校生を繊細に演じていたが、その後もキャリアを着々と築いてきた。昨年放送の『ひとりでしにたい』(NHK)では都庁に在籍するエリート役を好演していたが、今回も少し冷めた性格の若きインテリという似た役どころだ。


独自の魅力と個性的なキャストが揃った本作は、前クールの『緊急取調室』(テレビ朝日系)のキントリメンバー同様、多くのファンから愛されるチームになるだろう。キントリに続いて、ザッコクの活躍も楽しみだ。

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