またも、NHKの「ドラマ10」から傑作が生まれるかもしれない。これまで、数多くの名作ドラマを放送してきた「ドラマ10」は、NHK総合で午後10時台に放送される連続ドラマ枠だ。
現在は『テミスの不確かな法廷』を放送中で、松山ケンイチが主演を務めている。直島翔の同名小説を原作とし、人気ドラマ『宙わたる教室』の制作チームが手掛ける新感覚の法廷ヒューマンドラマだ。

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『テミスの不確かな法廷』は、任官7年目の特例判事補・安堂清春を主人公とする物語。安堂は一見穏やかそうに見えるが、幼少期に衝動性や落ち着きのなさからASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断された裁判官である。この特性からくる「こだわり」によって、事件の裏側にある誰も気づかなかった矛盾をあぶり出し、解決へと導く姿が描かれている。

少し変わった設定のリーガルミステリードラマだが、安堂は自身がASD・ADHDと診断されていることを同僚に隠しながら裁判官として職務を遂行している。そのため、特性を知らない周囲の人たちは行動に戸惑い、衝突する場面もある。

例えば第1話では、裁判中に安堂が職権で弁護人を即刻解任するという前代未聞の騒動を起こす。弁護人と被告人の間に信頼関係がないことを察知しての行動だが、通常は裁判官が法廷で弁護人を解任することは考えにくい。しかし、空気を読むことが苦手で衝動的な行動を取りがちな安堂は、掟破りの決断を下してしまう。

さらに、気になったことにはとことん没頭する特性から、部屋着のまま事件現場を調査し、不審者として怪しまれてしまう。こういった裁判官として規格外の行動が、他の法廷ドラマにはない魅力となり、作品をおもしろくしている。


そして、NHKらしく共演者が豪華なのも見どころだ。ヒロインの小野崎乃亜は、担当したある事件をきっかけに、東京の大手法律事務所を辞めドラマの舞台となる前橋にやってきた弁護士。起訴有罪率99.9%とされる刑事裁判において、検察に弁護士が勝てるはずがないと自信を失った小野崎を、鳴海唯が丁寧に演じている。

小野崎は、第1話で安堂に近づき、その特性を利⽤して裁判に有利な突破口を探ろうとする、少々こずるい役だ。しかし、事件を通じて安堂の苦悩や孤独に触れ、弁護士としての信念を徐々に取り戻していく。第2話は小野崎が中心のストーリーだが、真実に迫るほど担当する被告人に不利な事実が浮かび上がるという苦しい選択を迫られる。葛藤の末、彼女は安堂の影響も受けながら、最終的には真相解明を優先する決断を下す。

鳴海は弁護士役に初挑戦ながら、人が人を裁くことに悩み揺れる若手弁護士を説得力ある演技で見せている。裁判官と弁護士という立場を超え、安堂と小野崎はバディとしての活躍も見せはじめた。この組み合わせも、いままでの法廷ドラマになかったおもしろさを生み出しそうだ。

さらに、作品には恒松祐里、市川実日子、遠藤憲一、和久井映見といった演技派俳優が集結。今後は注目の女優・伊東蒼や、齋藤飛鳥がゲストとして登場予定で、物語を引き立てそうだ。


脚本の完成度の高さも『テミスの不確かな法廷』の魅力だ。ネタバレになるので詳細は明かさないが、第2話までに描かれた事件はいずれも奥深い真相を秘めており、リーガルミステリーとしての見ごたえも十分。今後は、より複雑な人間模様が絡み合う難事件が登場する予定で、視聴者をどんどん惹きつけていくだろう。

今回も良質な作品を送り出している「ドラマ10」。新たな法廷ドラマに挑む『テミスの不確かな法廷』も、ぜひチェックしてほしい。

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