ドラマで描かれる独身女性は時代とともに変化している。本稿では、独身女性のイメージの変遷をたどりながら、現代において独身女性役がハマる俳優について考える。


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◆2000年代初頭は独身女性役を天海祐希が一手に担ってきた
2000年代初頭は独身女性=キャリアウーマンというイメージが少なからずあった。例えば、当時話題となった酒井順子の著書『負け犬の遠吠え』(2006)では、30歳以上の女性が「負け犬」とされているが、よい仕事に恵まれ、プライベートも楽しむ未婚女性の余裕と自虐がただよっている。

一方、ドラマにおいては、2009年に放送された『おひとりさま』(TBS系)で有名女子高の教師をしながら、おひとりさまライフを満喫する秋山里美(観月ありさ)も特筆すべき存在であるが、天海祐希が働く独身女性のパブリックイメージ形成に主だって貢献してきた。

2004年放送の『離婚弁護士』(フジテレビ系)、2008年放送の『Around40~注文の多いオンナたち~』(TBS系)、2009年・2011年放送の『BOSS』(フジテレビ系)、2012年放送の『結婚しない』(フジテレビ系)などで、天海は独身キャリアウーマンのヒロインを演じた。いずれのヒロインも高年収で、おしゃれなマンションに住み、人付き合いも良好で、頼れる異性もいる。

それでも、これらの作品のヒロインは、独身であるゆえに周囲から心無い言葉を投げられることも少なくない。

特に、当時における独身女性の立場を考える上で『Around40~注文の多いオンナたち~』は重要だ。天海演じる主人公・緒方聡子は精神科医として患者に慕われ、経済力もあるものの、未婚ゆえに肩身の狭さを感じるシーンが多い。特に、同窓会では参加者のうち独身は聡子だけで、専業主婦の友人に「もう40だもん。人から見ると結婚も出産もあきらめた可哀想な女っていうふうに見えるんじゃない?」と言い放たれたシーンは印象的であった。

ちなみに、天海祐希は1967年生まれで、『負け犬の遠吠え』の著者・酒井順子と同世代だ。仕事で能力を発揮し、自立して生きる女性が増え始めた世代でもある。
一方で、未婚女性に対する風当たりは冷たかった。

なお、当時においても独身女性の大半がキャリアウーマンだったわけではなく、経済的な不安を抱えながら一人で暮らす女性や、親元で暮らす女性もいた。彼女たちの存在はドラマや本では見落とされがちであったが、最近になってこうした女性たちをモデルにした作品が制作されるようになった。

◆現代における独身女性役には“憧れ”よりも“共感”が求められている
近年、作品における独身女性の描かれ方は多様化している。例えば、2025年放送の『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合など)の麦巻さとこ(桜井ユキ)は病気を抱えながら団地で一人暮らしをしているし、2024年放送の『団地のふたり』(NHK総合など)の太田野枝(小泉今日子)と桜井奈津子(小林聡美)は50代で定職に就いておらず、ささやかなことを楽しみに暮らしている。

独身女性は独身女性のキャラ設定に手厳しい。例えば、『ソロ活女子のススメ』シリーズ(テレビ東京・BSテレ東)の五月女恵(江口のりこ)について“非正規雇用なのに旅行や食事にお金かけられるのは不思議” “正社員の誘いがあるし、優秀な人だと思う”といった声があった。また、特定の作品を指しているわけではないが、“20代・30代のヒロインはどうしてあんなに立派なマンションに住めるの?不自然”という素朴な疑問を見かけたこともある。

この背景には、独身女性の多くが作品に“共感”を求めていることがあると思う。30代後半になると未婚率は2割台にまで下がり、未婚者は既婚者よりも経済力が乏しいというデータもある。そうした現実の中で、自分と響き合う人物像を求めているのかもしれない。

こうしたことを踏まえ、筆者が独身女性役を演じてほしいと思う俳優は吉高由里子だ。
ゆるっとした雰囲気やナチュラルな魅力が、人生を悩みながらもマイペースに生きる独身女性像に重なる。特に、推し活をしながら、今を懸命に生きる独身女性の役などはハマリ役になりそうだ。

『しあわせは食べて寝て待て』でヒロインを演じた桜井ユキの独身女性役も、また見たい。彼女の奥ゆかしさや内に秘めた芯の強さが、現代の独身女性の姿と重なると思う。また、高い共感力とナチュラルな演技で多くの視聴者に演技で感動を与えてきた志田未来の独身女性役も見てみたい。

昨年12月に高杉真宙との結婚を発表した波瑠だが、『フェイクマミー』(TBS系)で好演した、多様性からこぼれ落ちた独身女性・花村薫の姿は記憶に新しい。“波瑠に独身女性の役をこれからも演じてほしい”という声がSNSで多く上がっている。

今後、高齢の単身女性が増加し、それにともなう社会不安の増大は避けがたく、独身の高齢女性をヒロインにした作品も一層求められる。

女性の社会進出にともなう自立した女性のイメージ形成に一役買ってきた天海だが、現在も同世代の俳優の中で主演のオファーが圧倒的に多い。“憧れよりも共感”を目指した役づくりが今後は求められるだろう。

あわせて、小泉今日子も独身女性役の候補に挙がるはずだ。現在は歌手や俳優だけでなく、社会活動にも力を注いでいる。
他者にあたたかな眼差しを向ける小泉の演技を見たい。

少ない年金で一人で暮らす高齢者、9060問題(90歳の親が60歳の子どもを支援して困窮する)は深刻だが、今後はこれらがテーマの作品も観られるかもしれない。

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