「おなごが生きていくには、身を売るか男と一緒になるしかないんだけんね」――NHK連続テレビ小説『ばけばけ』に登場する、遊女・なみ(さとうほなみ)のセリフである。果たして、本当にそうなのだろうか。
トキ(髙石あかり)やなみ、そしてサワ(円井わん)が下した結婚にまつわる決断を、未婚アラサーの私は他人事とは思えなかった。

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もちろん『ばけばけ』の時代と、令和を生きる私たちとでは、女性たちを取り巻く状況はまるで違う。それでもなお、このドラマで描かれる女性たちの姿が胸に刺さるのは、心のどこかで「結婚は幸せになるための分岐点だ」と思っているからなのかもしれない。

♦トキの“玉の輿婚”は幸せなのか?

父・司之介(岡部たかし)のうさぎビジネスが失敗し、返済に200年かかるほどの大借金を抱えた松野家。トキは小学校を中退し馬車馬のように働くが、生活は苦しくなる一方だった。そこでトキは「婿様をもらいましょうか」と自ら提案。借金返済のために、結婚という“手段”を選んだ。

しかし、夫・銀二郎(寛一郎)との結婚生活は長くは続かず、二人は離婚。バツイチとなったトキは、家族を養うために、異人であるヘブン(トミー・バストウ)の女中になることを決意する。雇い主だったヘブンと、後に結婚することになるのだから、人生は本当に何が起きるか分からない。

だが裕福な生活と引き換えに、トキは常に市民の注目を浴びる存在となった。好意的な視線ばかりならまだしも、“借金返済のために結婚した”とラシャメン疑惑を向けられ、嫌がらせを受けるようになる。
それは決して、手放しで「幸せ」と言い切れる生活ではないだろう。

♦なみの幸せになる覚悟

一方、遊女のなみもトキと同じく借金を抱えていた。彼女にとって結婚は、ロマンや憧れではなく、生き延びるための現実的な選択肢の一つ。遊郭を出られるなら、ラシャメンでも身請けでも構わない。そう覚悟を決めていたなみは、ある常連客から「結婚しよう」と告白される。

夢にまで見た話のはずだが、なみは「怖い」と返答を先送りにしてしまった。未知の世界に踏み出すことへの恐怖を感じつつ、最終的には遊郭を出て結婚する道を選ぶ。「幸せ!」と笑う彼女の表情は、幸せになる覚悟ができた人の顔に見えた。

♦サワの「結婚しない」選択

トキの親友・サワは、体の弱い母親と二人暮らし。小学生のころから「教師になる」と決め、自分が家計を支えるのだと必死に勉強を続けてきた。そこには「男性の手は借りない」という強い意志もあったように思う。

しかし、勉強を教えてくれていた庄田(濱正悟)から、突然「わしと夫婦になろう。
おサワさんちの借金返して、長屋を出よう」と告げられる。

サワの心境はとてつもなく複雑だったに違いない。告白された嬉しさと同時に、教師になる夢を諦めることへの恐れ、応援してくれていたはずの庄田の言葉への戸惑い、YESと言えない自分へのふがいなさ……。いくつもの感情が絡み合い、サワは結婚しない道を選んだ。

正直、サワに対して「素直にプロポーズを受ければよかったのに」と思ってしまう部分もあった。だが、トキの前で号泣する姿を見て、それは彼女自身が考え抜いた、最善の選択だったのだと気づかされた。

♦自分の選択を“正解”にするために

三人の選択を見て思ったのは、結婚は人生を劇的に変えるスイッチではなく、いくつもある選択肢の一つに過ぎない、ということだ。結婚してもしなくても、そこには別の困難がある。それでも覚悟を持って自分の歩む道を選べたなら、その道を「幸せだった」と思える日が来るのかもしれない。

トキもなみもサワも、自分で選択し、その結果を引き受けて生きている。私自身の答えはまだ出せていないが、少なくとも「自分で選んだ」と胸を張って言える人生でありたいと思う。

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