「COMICリュウWEB」(徳間書店)にて連載中の『奴奴奴奴!』は、地球上を女性が支配し全ての男は奴隷になっているという近未来を描いたSFディストピア漫画。コミックシーモア青年マンガ先行ランキングでは1位を獲得、COMICリュウWEBでも70万PVを突破するなど大きな反響を呼んでいる。

2月13日にコミックス1・2巻が同時発売されることを記念して、作者・鈴丸れいじの独占インタビューを掲載。前編ではなぜ本作で【女性支配の世界】が描かれることになったのか、その経緯に迫る。(前・中・後編の前編)

【画像】『奴奴奴奴!』コミックス1・2巻の表紙&作品紹介【12点】

――『奴奴奴奴!』、このインタビュー時点では10話まで公開されていますが、毎回「どうなるんだろう?」というフックばかりで、次が気になっております。

鈴丸 ありがとうございます。今まさに絶賛11話をどうしようか考えている最中です(笑)。

――どういう契機で本作は生まれたのでしょうか?

鈴丸 僕は漫画を描き始めてからずっと、いわゆる“ディストピアもの”、人類全体が管理された世界を描いた重厚なSF作品をいつか描いてみたいとは考えていて。色々と案を温めていたのですが、なかなか表に出す機会がなかったんです。
そこで、今とは別の編集部とやり取りする中で、「骨太の読みごたえがある作品が欲しい」と力説されたので、これは良い機会だ!と、頭の中にあったディストピアもの――『奴奴奴奴!』の原型になる話を本格的に描き始めたんですね。その第一号目ネームの編集データを見ると「2018年5月5日」とありますね。

――約7年前に原型があったんですね!

鈴丸 そうなんです。ちなみに、現在連載中の『奴奴奴奴!』は第10稿目ぐらいですね(笑)。先ほどの続きですが、描いた原稿をブラッシュアップして編集会議に出したところ、「連載しましょう」とまで進みました。
ただ、この世界では「いよいよ連載」から急にポシャることは多々ありまして。ご多分に漏れず、この話は見事うやむやになりました(苦笑)。
この時点で別の編集部に持ち込んだり、続きを描くモチベーションが下がってしまい、しばらく放置していたんです。とはいえ、これはめちゃくちゃ面白い作品になる自信があったので、機会があればどっかで出してやろうとは考えていたんです。そうしたら現編集部に拾っていただけて……いやあ、ありがたいです(笑)。

――自信作がこうして陽の目を見て、実際、話題になるのはうれしいことですね。

鈴丸 本当にそうですね。実は連載するにあたり、『奴奴奴奴!』とは別の作品も提出していたんです。そっちの方がメジャー感もあったので通りやすいだろうと思っていたら、担当編集者さんが『絶対にこっちでいきましょう!』と、熱意をもってねじ込んでくれたんです。もう担当には足を向けて寝られません(笑)。

男という存在の“価値”が奪われた世界を描いた理由

――『奴奴奴奴!』は、女性たちが男性を管理下に置いて支配している近未来が舞台です。こうした世界観や設定はどこから生まれたのでしょうか?

鈴丸 『奴奴奴奴!』を描き始める前、ちょうど2010年代って……言葉を選ばせてもらいますが、人種間、男女間、社会格差など様々な問題が取りざたされ、今まで以上に人と人との関係の分断がエスカレートした区切りの年だったと思うんです。

そうした人と人との分断が今以上に広がり、人間が自分たちの持つ力の加減を間違っていったら、この世界はどうなるんだろう? という不安がまず背景にありました。

――作品中の男たちは、ある原因で生殖能力を失っています。しかも人工精子を使った「デザインベイビー」の技術が発達していて、男は不要どころか淘汰されるべき存在として描かれています。

鈴丸 これは僕の生まれ育った環境の話なのですが、僕は父・母・姉の4人家族で。ただ父が懸命に家族を養うような人ではなく、母が頑張って働きに出て、普段は姉に面倒を見てもらうような環境だったんです。
姉にはずっと世話をしてもらい、母には「漫画家になる!」と伝えたとき、「なら、途中で投げ出さず、やり遂げてみせなさい」と背中を押しもらえました。母の言葉や姉の協力がなければ、こうして漫画家として生活する人生はあり得なかったと思います。
僕は人として成長していく中で母や姉の逞しさ、特に「命を繋ぐ」という面で女性の“強さ”をすごく実感したんです。

――命を繋ぐ?

鈴丸 はい。姉が結婚し子どもを出産した際、「私、役目の一つを果した」と言ったんですよね。その一言が僕の中でずっと象徴的なものとしてあるんです。女性は「命を繋ぐ」という意識が強く働く生き物なんだなと。

それと同時に男が抱く“強さ”って……なんか即物的なものばかりだなとも思うようになったんです。例えば、体を強くするとか、金を稼ごう!のように、自分を誇示すること=“力”という方向に行きがちな気がして。

――マチズモ的なものは分かりやすいゆえに、簡単に流れて行く人はいますよね。

鈴丸 言い方は悪いかもしれないですが、男がそうした“力を誇示する要因の一つに、「自らの身体で子どもを産めない」という事実が、大きく働いてるんじゃないかな? と考えたんですよ。
男と女、それぞれに素晴らしい点がある。ただ、「命を繋ぐ」という点から見たとき、男が物理的に生きた精子を生成できない体になり、その代わりに人工的な精子が発明されたとします。自らの身体で子どもを産めない男という存在は、その価値を奪われるのでは?……と浮かんだ瞬間、『奴奴奴奴!』の世界の設定が生まれました。

『奴奴奴奴!』(鈴丸れいじ 著)は、COMICリュウWEB(徳間書店)、コミックシーモアで現在連載中。単行本1巻、2巻が2月13日(金)に全国書店にて同時発売となる。

<COMICS 発売情報>
Amazon(紙コミックス):https://amzn.asia/d/0cvF9PvM
コミックシーモア(電子書籍):https://www.cmoa.jp/title/331468/

【あわせて読む】現役看護師が漫画に託した現場の声 のまりが語る精神科訪問看護と“きょうだい児”の見えない苦しみ
編集部おすすめ