どの世界にも“ジンクス”というものがある。現在、開催中の東京女子プロレスのタッグトーナメントには「タッグ王者組はなぜか優勝できない」という呪いが第1回大会から続いてきたが、そんな前例を覆すべく現・タッグ王者組の『OberEats』(オーバーイーツ)が2.14後楽園での決勝戦への進出を決めた。
しかし「それでも、やっぱり不利だ」と指摘するのが元・週刊プロレス記者の小島和宏氏。その理由を綴るとともに、王者組に直撃取材を敢行すると……。

【写真】2.14後楽園での決勝戦への進出を決めた王者組&急造チーム【3点】

3月29日、両国国技館でのビッグマッチに向けて、盛りあがりを見せている東京女子プロレスのリング。現在、毎年恒例のタッグの祭典『第6回“ふたりはプリンセス”Max Heartトーナメント』が開催中。2・14後楽園大会では決勝戦が行われるのだが、その決勝戦では早くも「ふたつの異変」が生じている。

ひとつは「ダークホースの決勝進出」。今年は日ごろからタッグを組んでいる定番チームのエントリーがほとんどで、実力も拮抗しているため、どのチームが優勝してもおかしくない、と言われてきた。ところが蓋を開けてみると、決勝まで勝ち抜いてきたのは、急造チームの瑞希&高見汐珠だった。このチームが発表されたときに高見汐珠は「えっ、なんで?と思った」と正直に語り、瑞希も「パートナーがいない同士」と評した。どう考えても浮上は難しい、と思われていた。

しかし、そのイレギュラーさが短期決戦でギラッと光った。普段、組んでいないから闘いの「型」ができあがっていない。
これが対戦相手にとってはなにをどうやってくるのかが予測しにくくなった。瑞希は長きに渡ってタッグ戦線の頂点に立ってきた、いわばタッグのスペシャリスト。彼女が立てる戦略はひと筋縄ではいかないのだが、ただでさえ想像の斜め上の攻撃を仕掛けてくる高見汐珠の突破力がそこに絡んでくるのだから、たしかに攻略が難しいチームではある。

瑞希はタッグで輝かしい戦歴を残しているが、このタッグトーナメントだけは縁がなく、優勝がゼロ回どころか、決勝進出も今回がはじめて。まさに千載一遇のチャンスが巡ってきたわけで、積極的に優勝を狙ってくるはず。そういった背景を考えると、このチームが有利、と思えるのだが、もうひとつ、彼女たちが優勢に立てる圧倒的なデータが存在する。

それは「過去の大会で現役のタッグ王者が優勝したことは一度もない」という記録。そして「ふたつの異変」のもうひとつが「現役タッグ王者の決勝進出」なのである。

現在、東京女子プロレスのタッグチャンピオンは上福ゆき&上原わかなのOberEats。昨年秋に戴冠して以来、順調に防衛を重ねてきているが、まだ「完成形」のチームとは言い難い。防衛するたびに完成度が高くなっていく、現在進行形のチームはその成長物語が魅力でもある一方、そこがどうしても脆さにつながってしまう。

上福ゆきに怒鳴られることを覚悟して「現役王者が優勝したケースが0件というデータを含めて、正直、瑞希&高見汐珠のほうが有利ではないか?」と聴いてみると「さすがに年齢iPhoneのガキに負けたら一生の恥だし。
そもそも、ウチらはここ1年ぐらいほぼタッグで稼働しているんだから、即席チームよりは強いだろ?」とそっけなく優勝宣言。データなど信じるだけ無駄、とでもいわんばかりのスタンスには痺れてしまう。

一方、パートナーの上原わかなは冷静に現状を分析していた。



「たしかにベルトを持っているチームは優勝できない、というジンクスは聞いていますけど、だったらOberEatsがそれを覆しますよ! 上福さんとだったら優勝できる、と信じていますし。

瑞希さんと汐珠ちゃんのタッグはできて間もないので、どんな風にぶつかってくるのかは読みにくいんですけど、ふたりとも倒しても倒しても起き上がってくる“ゾンビタイプ”じゃないですか? だから、しっかりと体力を温存しておいて、ここぞというところでしっかりと仕留めたい。試合がもつれたらチーム力がものをいうと思いますし、チーム力では確実に私たちのほうが高いという自負はあるので、上福さんとうまく連携して倒したいです」

準決勝から決勝まで、2週間ほど時間が空いたため、対策を立てる余裕ができたのは大きなポイント。ここまでの対戦チームが瑞希たちの予測不能なペースに飲まれて敗退していったのとは話が違う。予測不能であることを、しっかりと予測できていることは大きなポイントとなってきそうだ。

そういう部分はすべて上原わかなにおまかせして、上福ゆきは早くも“優勝後”に思いを馳せている。

「私もわかなも発信力があるじゃない? だったら、その発信力を駆使して、ウチらが優勝したら、派手でステキで容姿端麗な海外の女たちと、世界が注目する爆イケ対決がしたいかな」

東京女子プロレスでは海外での試合にも力を入れており、今年も3月にテキサス・ツアー、そして4月には初のカナダ・バンクーバーでの大会がすでに決まっている。もちろん3.29両国大会でもタイトルマッチが組まれるだろうから、まさに世界を股にかけてのチャンピオンロードが待ち構えている。

タレントしてテレビ出演も多い上原わかなは、ベルトがあるかないかでプロレスを知らない視聴者に対して与えるインパクトが桁違いであることを肌で感じてきた。
だからこそ、今のふたりにとってタッグのベルトは必要不可欠なもの、なのだ。

ただ、ベルトがかかっていないトーナメントで歴代王者たちが足元をすくわれてきたのは、まぎれもない事実。考えれば考えるほど、どちらが勝つのか読めない決勝戦。バレンタインデーに甘い栄冠を味わえるのはどっちだ?

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