ラブコメの新しい視聴方法が見つかった。いま、ドラマ『パンダより恋が苦手な私たち(以下『パン恋』略)』(日本テレビ系)を楽しんでいる。


【写真】生田斗真&上白石萌歌のW主演ドラマ『パン恋』場面カット【4点】

『パン恋』は生田斗真、上白石萌歌のW主演によるラブコメだ。生活情報誌編集者の柴田一葉(上白石萌歌)は、仕事に恋愛に悩む25歳。憧れていたモデルの灰沢アリア(シシド・カフカ)による恋愛コラムの担当となり、内容をさらに深めるために動物の求愛行動を研究する椎堂司(生田斗真)のアドバイスを取り込んでいる。二人の意見を取り入れたコラムは読者に好評、ただその裏で一葉には椎堂に対する恋愛感情が芽生えていた…というのが、あらすじ。私にとっては冒頭文を書いているだけで、ドラマの情景が浮かんできて、ニヤついてしまう物語だ。

薹の立った女が若者の喜ぶラブコメに食いつくなんて、やや気恥ずかしさが漂う。ただこのドラマのおかげで新しい楽しみ方を知った。

例えば一葉。元カレと結婚できると思い込んでいたら、別れを切り出されてしまう。それなのに「金がない」と元カノの家に居候を申し込まれて、断りきれず、現在同居中。周囲からは「なぜ」と突っ込まれている。確かにおかしな縮図だ。
このシーンを見ながら(あ~、わかるよ。妙な情がわいているから追い出せないんだよねえ。でもねえ、コイツを追い出さないとなし崩し的に復縁しちゃうよ!)と、突っ込んで楽しむ。ちなみに一葉の結婚願望にも(まだ、そんなアンコンシャスバイアスが令和に…)と、まぜ返した。

一葉の先輩・紺野幸子(宮澤エマ)が実は同期の男性が好きだったけれど「関係性を壊したくない」と、恋する気持ちを隠す。はい、このシーンを見ながら(大丈夫よ~、あと10年したら関係なんてぶっ壊してでも、自分の気持ちを貫きたいと思うから!)と口を入れる。“テレビに向かって盛大な独り言と中年女性”の光景を、冷笑する人もいるだろうが、大いに言ってくれ、と思う。20~30代はこんなラブコメに自分を重ねて陶酔していた時期もあった。でも今はこんなスタイルもあったのかと思いながら、心から満喫している。と、そんな『パン恋』に興じつつ、もう一点、気になったのが椎堂役の生田斗真だ。

◆生田斗真の偏屈ぶりが物語のアクセントに

椎堂は変わり者だ。いつも寝癖がついた独特のヘアスタイルに、鼻につく話し方に、オーバーリアクションの仕草。
動物の求愛行動以外には興味がない。そんな椎堂を見ていると、演じている生田斗真がここ最近の出演作品で“普通の役”が少ないのでは? と浮かんだ。ドラマを四六時中、見ているオタクの見解だ。

記憶の限りでドラマ出演作を振り返ろう。『俺の話は⻑い』(日本テレビ系・2019年)の岸辺満は偏屈で、それらしいウンチクばかりを並べるニート役。当時、小学校低学年だった姪っ子が「満がおもしろいじゃん」と、人生で初めてドラマにハマったと話してきたことも思い出す。毎週、笑わせてもらった。『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系・2021年)の吉丸圭佑役は、ヒモ、売れない脚本家なのに一丁前の口ぶりのトリプルコンボ。『元彼の遺言状』(フジテレビ系・2021年)の森川栄治/富治役は、タイトル回収にもあたる“元彼”役なのに、妙な遺言を残して亡くなるインパクトを残していた。男性視聴者に人気だった『警部補ダイマジン』(テレビ朝日系・2023年)の台場陣役では、有能な刑事なのに希望していない部署に飛ばされていた。クセ強だった。

書いていて面白くなってきた。
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系・2025年)のトロ役は、面倒なチンピラ。ドラマ終盤の登場にも関わらず「あ、生田斗真!」とわかるインパクトだった。同年放送『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺』(NHK総合)の一橋治済は、大河ドラマに必要な本当に嫌味ったらしい人物。落雷に撃たれるという、変わった最期のシーンも役柄をよく掴んでいたと思う。そして2026年の『パン恋』椎堂役も変わった人物ではあるけれど、物語に必要なアクセントに見える。

ここまで並ぶと今後の作品以降も、期待が膨らむし、対するような“普通のおじさん”の役が生田に巡ってくるのも楽しみ。そしてへそ曲がり、ひねくれ者といった役を自然に演じられるのは確かなキャリアがあってこそ、ということだけは加えておきたい。彼は日本の逸材だ。

中年女性の新しいラブコメ視聴スタイルに、生田斗真がなぜ気難しい役ばかりを演じているのかと、ネタぎゅう詰めの原稿になってしまった。ああ、そうか。だから『パン恋』はそそられるのか。

原作:瀬那和章『パンダより恋が苦手な私たち』(講談社文庫)

(文/コラムニスト・小林久乃)

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